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第一章
第4話:歴史改竄の始まり
しおりを挟む「くそっ!」
今日は、私がトレバー様の部屋に行くのではなく、トレバー様の方から、私の部屋に来た。
まだ昼間だ……。いつもの拷問までは、時間がある。
「ど、どうされたのですか……」
「黙れぇ!」
「っぐぁ!」
何の説明も無く、思いっきり頬を殴られた。
確か、今日は兵との訓練をしていたはず。
何か、うまくいかないことでもあったのだろうか。
気が収まらないらしく、そこから無言で、右頬をさらに三発、左を五発、殴られてしまった。
顔は……。自慢だったのに。
トレバー様に殴られ続けたことで、ぶくぶくに膨れ上がってしまっている。
きっと、元に戻ることなんて、ないのだろう。
「痛いです……」
「ありがとうございます。だろ?」
「ありがとうございます……」
「良い子だ……」
トレバー様に、抱きしめられた。
最近の私は、トレバー様に抱きしめられると、安心感が生まれるようになってしまっている。
今、殴られたばかりのはずの男に、優しく抱きしめられて……、身を委ねているのだ。
そして、頭を撫でられると、さらに気持ちは安らいでいく。
さっき殴られたことなんて、頭から抜けてしまうほどに。
「……僕は強い。そうだろう? リアム」
「はい。その通りです」
「だって、お前をこうして、殴りつけて……。完全に服従させられているじゃないか」
「はい」
「そんな僕が……。あの雑魚い兵たちに、負けるわけがないんだ。そうだろう?」
「その通りです」
……そういうことか。
だから、機嫌が悪かったんだ。
私が悪いんだ。
「ごめんなさい……。私のせいです」
「そうだな……。だけど、気にしなくていい。僕は強いから、きっと――。ガナンド王子にも、負けないさ」
「明日、ですもんね」
「そう。明日だ」
トレバー様が、私から離れてしまった。
消え去った温もりとともに、頬の痛みが戻ってくる。
「夜、絶対に部屋に来てくれ。君の鳴き声を聞かないと……。眠れないから」
「もちろんです」
「……ありがとう。リアム」
……明日、ついに私たちは、王宮で裁かれることになる。
聖女として目覚めたルイーザに……。何もかも見透かされて、国外追放されるんだ。
どうして私、こうなっちゃったの?
これも、私が悪いの?
なんで?
考えられない……。もう眠いよ。
だけど、一人で寝たら、殺される。
死ぬのは怖い……。意識を失う瞬間に、恐怖が襲い掛かって来て。
叫びたくても叫べなくて。
「……ごめんなさい」
誰に対して、謝ったのかな。
誰が私を、助けてくれるんだろう。
吐きそうになりながら、私は唇を噛み、眠気と戦い続けた。
今日は、私がトレバー様の部屋に行くのではなく、トレバー様の方から、私の部屋に来た。
まだ昼間だ……。いつもの拷問までは、時間がある。
「ど、どうされたのですか……」
「黙れぇ!」
「っぐぁ!」
何の説明も無く、思いっきり頬を殴られた。
確か、今日は兵との訓練をしていたはず。
何か、うまくいかないことでもあったのだろうか。
気が収まらないらしく、そこから無言で、右頬をさらに三発、左を五発、殴られてしまった。
顔は……。自慢だったのに。
トレバー様に殴られ続けたことで、ぶくぶくに膨れ上がってしまっている。
きっと、元に戻ることなんて、ないのだろう。
「痛いです……」
「ありがとうございます。だろ?」
「ありがとうございます……」
「良い子だ……」
トレバー様に、抱きしめられた。
最近の私は、トレバー様に抱きしめられると、安心感が生まれるようになってしまっている。
今、殴られたばかりのはずの男に、優しく抱きしめられて……、身を委ねているのだ。
そして、頭を撫でられると、さらに気持ちは安らいでいく。
さっき殴られたことなんて、頭から抜けてしまうほどに。
「……僕は強い。そうだろう? リアム」
「はい。その通りです」
「だって、お前をこうして、殴りつけて……。完全に服従させられているじゃないか」
「はい」
「そんな僕が……。あの雑魚い兵たちに、負けるわけがないんだ。そうだろう?」
「その通りです」
……そういうことか。
だから、機嫌が悪かったんだ。
私が悪いんだ。
「ごめんなさい……。私のせいです」
「そうだな……。だけど、気にしなくていい。僕は強いから、きっと――。ガナンド王子にも、負けないさ」
「明日、ですもんね」
「そう。明日だ」
トレバー様が、私から離れてしまった。
消え去った温もりとともに、頬の痛みが戻ってくる。
「夜、絶対に部屋に来てくれ。君の鳴き声を聞かないと……。眠れないから」
「もちろんです」
「……ありがとう。リアム」
……明日、ついに私たちは、王宮で裁かれることになる。
聖女として目覚めたルイーザに……。何もかも見透かされて、国外追放されるんだ。
どうして私、こうなっちゃったの?
これも、私が悪いの?
なんで?
考えられない……。もう眠いよ。
だけど、一人で寝たら、殺される。
死ぬのは怖い……。意識を失う瞬間に、恐怖が襲い掛かって来て。
叫びたくても叫べなくて。
「……ごめんなさい」
誰に対して、謝ったのかな。
誰が私を、助けてくれるんだろう。
吐きそうになりながら、私は唇を噛み、眠気と戦い続けた。
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