23 / 24
第一章
第23話:復讐
しおりを挟む
わたくしはただひたすら馬を駆ってクウィチェルムに近づきました。
近づくほどに邪魔をしようとする者が現れました。
完全鎧を装備した騎士はもちろん、槍を持った兵士もしました。
中には武器を振るってわたくしを殺そうとする者もいました。
ですがまだ護りの奇跡が発動しているようで、わたくしに武器を向けた者は、全員その武器を自分の心臓に向ける事になるのです。
「クウィチェルム、わたくしを無実の罪に落とした復讐に参りました。
その首もらいます、覚悟しなさい」
クウィチェルムも何が起こっているか分からなかったのでしょう。
あるいは恐怖のあまり逃げ出す事もできなかったのかもしれません。
クウィチェルムが騎乗していたら、騎士の誰かが軍馬に鞭を入れて逃がしていたかもしれませんが、この日のクウィチェルムは馬車に乗っていました。
金銀宝石を散りばめた、とても高価な馬車です。
比較的気性の大人しい巨大な輓馬ですが、万が一にもクウィチェルムを乗せたまま暴走しないように、事前に安静の魔術をかけていたのだと思われます。
わたくしとヨハンが騎士や兵士を殺しながら近づいても、全く動じず逃げようとはしませんでした。
それどころか、優しい視線をわたくし達に向けてくれています。
まるでクウィチェルムを早く殺してしまいなさいと言っているかのように。
ドッカーン
まだ効果のある護りの奇跡を利用して、馬車のドアを無理矢理開けました。
ですがこの後使う事を考えて、城門のように破壊しないようにしました。
開けたドアの中には、茫然自失となっているクウィチェルムがいました。
護衛や話し相手がいるかと思いましたが、クウィチェルム一人です。
クウィチェルムが寵愛している女性や子供がいなくてよかったです。
一緒に殺す気は毛頭ありませんが、人殺しの現場を見るのは辛いでしょうから。
ギャアアアアア
わたくしは例え許し難い相手でも嬲る事はありません。
敵であろうと、できるだけ苦痛を与える事なく殺すべきだと思っているのです。
力ある者が、力ない者を嬲るのは美しくないと思っています。
力ある者こそ、力の使い方に誇りを持つべきなのです。
美しく力を使ってこその王侯貴族だと思っているのです。
幼い頃に母上様を殺され、直接教えていただけた事は極僅かですが、その教えを考えると、そうしなければいけないように思うのです。
「マイロード、復讐を果たされた事、お見事でございます。
逃げる者は追いかけない事にして、以前お教えいただいた通り、他国に行って豊かに暮らすための準備をいたします。
馬を集め、死体から武具と衣服をはぎ取り、旅の資金にいたしましょう」
ヨハンはわたくしのやり方を覚えてくれたようですね。
いえ、これはチェンワルフのやり方でしたね。
いつの間にか変な影響を受けてしまっているようです。
近づくほどに邪魔をしようとする者が現れました。
完全鎧を装備した騎士はもちろん、槍を持った兵士もしました。
中には武器を振るってわたくしを殺そうとする者もいました。
ですがまだ護りの奇跡が発動しているようで、わたくしに武器を向けた者は、全員その武器を自分の心臓に向ける事になるのです。
「クウィチェルム、わたくしを無実の罪に落とした復讐に参りました。
その首もらいます、覚悟しなさい」
クウィチェルムも何が起こっているか分からなかったのでしょう。
あるいは恐怖のあまり逃げ出す事もできなかったのかもしれません。
クウィチェルムが騎乗していたら、騎士の誰かが軍馬に鞭を入れて逃がしていたかもしれませんが、この日のクウィチェルムは馬車に乗っていました。
金銀宝石を散りばめた、とても高価な馬車です。
比較的気性の大人しい巨大な輓馬ですが、万が一にもクウィチェルムを乗せたまま暴走しないように、事前に安静の魔術をかけていたのだと思われます。
わたくしとヨハンが騎士や兵士を殺しながら近づいても、全く動じず逃げようとはしませんでした。
それどころか、優しい視線をわたくし達に向けてくれています。
まるでクウィチェルムを早く殺してしまいなさいと言っているかのように。
ドッカーン
まだ効果のある護りの奇跡を利用して、馬車のドアを無理矢理開けました。
ですがこの後使う事を考えて、城門のように破壊しないようにしました。
開けたドアの中には、茫然自失となっているクウィチェルムがいました。
護衛や話し相手がいるかと思いましたが、クウィチェルム一人です。
クウィチェルムが寵愛している女性や子供がいなくてよかったです。
一緒に殺す気は毛頭ありませんが、人殺しの現場を見るのは辛いでしょうから。
ギャアアアアア
わたくしは例え許し難い相手でも嬲る事はありません。
敵であろうと、できるだけ苦痛を与える事なく殺すべきだと思っているのです。
力ある者が、力ない者を嬲るのは美しくないと思っています。
力ある者こそ、力の使い方に誇りを持つべきなのです。
美しく力を使ってこその王侯貴族だと思っているのです。
幼い頃に母上様を殺され、直接教えていただけた事は極僅かですが、その教えを考えると、そうしなければいけないように思うのです。
「マイロード、復讐を果たされた事、お見事でございます。
逃げる者は追いかけない事にして、以前お教えいただいた通り、他国に行って豊かに暮らすための準備をいたします。
馬を集め、死体から武具と衣服をはぎ取り、旅の資金にいたしましょう」
ヨハンはわたくしのやり方を覚えてくれたようですね。
いえ、これはチェンワルフのやり方でしたね。
いつの間にか変な影響を受けてしまっているようです。
0
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

竜王の花嫁は番じゃない。
豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」
シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。
──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

生命(きみ)を手放す
基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。
平凡な容姿の伯爵令嬢。
妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。
なぜこれが王太子の婚約者なのか。
伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。
※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。
にんにん。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。



宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる