妹に悪女の汚名を着せられ、婚約者の第一王子を奪われ、婚約破棄の上に国外追放にされました

克全

文字の大きさ
上 下
21 / 24
第一章

第21話:仇討ち

しおりを挟む
 わたくしは館と呼んでいる内城の城門に命懸けで突撃しました。
 馬が死傷するような事は、本当だったらしたくないのですが、ゾーイとサクスブルフを逃がすわけにはいかないので、可哀想ですが一緒にやってもらいました。
 わたくしには多少の勝算があったからです。

 なんだかんだと言って、本当に死にそうになったらヒューは助けています。
 だからヒューがわたくし達を見殺しにはしないと思っていたのです。
 盲目的に信じたわけではなく、助けてもらえず、ここで城門に突撃して情けない死に方をしてもいいとも思っていたのです。

 神や神使に理由も分からずに利用されるくらいなら、仇討ちが叶わずに無念の死を迎えても構わないと思っていたのです。
 そもそも、神と初代王とダグラス女伯爵が欠点のある条件で契約を結んだから、母上様が謀殺される事になったのです。

 そんな神に利用されるくらいなら死んだ方がましだと思っています。
 それに、急がなければゾーイとサクスブルフが裏門から逃げてしまいます。
 ここは賭けに出なければいけないのです。
 そしてわたくしはその賭けに勝つことができました。
 内城の裏門に続く通路でゾーイとサクスブルフに追いつく事ができました。

「私はなにもしていないわ、ジャスパーよ、ジャスパーが勝手にやったのよ」

 嘘をついて逃げようとしているようですが、絶対に逃がしません。
 元々ジャスパーは下種な最低の人間ですが、母上を殺してダグラス女伯爵家を乗っ取ろうと誘惑したのは、お前だと分かっています。

「お姉様、私は妹よ、実の妹を殺すなんてひどすぎますわ」

 その半分血の繋がった妹であるお前が、ずっとわたくしを虐め抜いたのではありませんか、この外道。
 食事を抜いたのも、たまに与える食事に毒を入れたのも、寒い冬に薪を与えなかったのも、全部あなたが考えた事でしょう。
 今更そんな過ぎた事を口にして罵る気はありませんけれど。

「腐れ外道は醜い言い訳などせずに、さっさと死になさい」

 わたくしは通路の端に追い込んだゾーイとサクスブルフに死の宣言をしました。
 二人を護ろうとしていた騎士や兵士は全て殺しました。
 護る事を諦めて逃げ出した者は追いかける事なく見逃しました。
 騎士や兵士が逃げだしたのもしかたがありません。
 護りの奇跡を得たわたくしたちは、幾ら攻撃されても傷一つかないのです。
 それどころか、攻撃した方が致命傷を受けるのですから。
 それに、騎士や兵士を追いかけて二人を逃すわけにはいかないですから。

「ギャアアアアア」

 私のような細腕でも、完全鎧を装備していない華奢なゾーイを斬る事はできます。
 完全に首を断ち斬ることはできませんが、剣の三分の一くらいはゾーイの首にめり込んでいますから、助からないでしょう。

「いや、いや、いや、許してお姉様、私が悪かったわ。
 死ね、このメス豚、ギャッ」

 表向き恐怖に震えて許しを乞う演技をしていたサクスブルフでしたが、案の定隠し持っていた短剣をわたくしに向けてきました。
 わたくしに向けて剣を振るった者が、自分の心臓を刺し貫いていた事を、全く理解していなかったようです。
 わたくしが手を下すまでもなく、自分で心臓を貫いて即死してしまいました。
 わたくしの手で殺したかったのですが、まあいいでしょう。
 自分の恨みは晴らせませんでしたが、一番大切な母上様の仇討ちはこの手でできたのですから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ

青の雀
恋愛
メープル国には二人の聖女候補がいるが、一人は超デブスな醜女、もう一人は見た目だけの超絶美人 世界旅行を続けていく中で、痩せて見違えるほどの美女に変身します。 デブスは本当の聖女で、美人は偽聖女 小国は栄え、大国は滅びる。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...