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第一章

第13話:二番手

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「見つけたぞ、今度こそ確実に殺すんだ」

 ヒューを信じて進んでいましたが、大間違いでした。
 真直ぐ国の外に出る方向に進んでいると思っていたのに、クウィチェルム第一王子の勢力圏に戻るように、進路が曲がっていたのです。
 方向音痴で、ヒュー任せにしていたわたくしが悪いといえば悪いのですが、まさかこれほどの裏切りをヒューがするとは思ってもいませんでした。
 その結果、最初に襲ってきた盗賊団の残党に追いかけられる事になってしまったのですが、何故逃げているのか蛾分かりません。

「ヒュー、いったい何を考えているのですか。
 わたくしを殺したいのですか、助けたいのですか、どっちなのですか」

(申し訳ありませんが、ただの使いでしかない私には分かりません。
 神様からは、オリビア様を殺させないように、護るように命じられていました。
 ですが先日、元の場所に戻るように命じられたのです。
 しかも、オリビア様を殺させない命令は引き続き守るようにとも言われました。
 私はその命令に従うしかないのです)

 本当に神の命令は支離滅裂ですね。
 ですが、わたくしを殺させない事は続いているようですから、少し安心です。
 問題は、神がわたくしに何をさせようとしているかですね。
 クウィチェルム第一王子の勢力圏に戻れという事は、そこでしなかればいけない事があるという事なのでしょう。
 それをやらない限りは、何時までも神の玩具にされてしまいます。
 まずは盗賊団を全滅させる事ですが、わたくしにそのような力はありません。

「ヒュー、チェンワルフ殿下はまだ私達を追いかけて来ているの」

 わたくしだけが声を出して馬に変化した神使のヒューに話しかけるという異常な状況を、わたくしの騎士となったヨハンは黙って受け入れてくれました。
 内心では気持ち悪いとか怖いとか思っているのかもしれませんが、極限状態に置かれた事で、強すぎる歪んだ忠誠を持つことになったヨハンは、余計な事は考えずにわたくしに忠誠を尽くす事だけを考えているようです。

(はい、今も乗用馬達の痕跡を追っています)

「では近くにいるのね、だったらこいつらとかち合わせる事ができるわね」

(不可能ではありませんが、最悪チェンワルフに追いつかれますよ)

「その点はヒューが上手く調整してくれるのでしょ。
 チェンワルフ殿下の強さなら、盗賊団程度なら簡単に壊滅してくれるはずよ。
 グズグズしていたら、乗用馬達が潰れてしまうのではなくて。
 わたくし、一度でも可愛がった動物が、酷い目にあわされるのを見るのは嫌なの。
 乗用馬達を助けるために、わたくしが戦う事になったら、神の命令を護るために、ヒュー自身が戦わなければいけなくなるのではなくて。
 でもヒューは、神から直接戦ってはいけないと言われているのではなくて」

(やれ、やれ、オリビア様には敵いませんね。
 しかたありません、チェンワルフ達と盗賊達を戦わせるように仕向けましょう)
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