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第一章
第2話:追跡者
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「では、どちら様もごきげんよう」
わたくしは、さっさと不浄な場所から遠ざかる事にしました。
もうこの国には何の未練もありません。
正室の座を手に入れるために、母上様に毒をもった後妻のゾーイも。
ゾーイと手を組んで自分の正妻を殺した実の父も。
この手で殺してやりたい、復讐したい気持ちがないわけではありませんが、何時までわたくしに神のご加護が続くか分かりません。
ご加護のあるうちに、この国から遠ざからないといけないのです。
「やあ、この国を出て行くのかい、だったら僕も連れて行ってくれよ」
「チェンワルフ王子、どうしてここにおられるのですか。
クウィチェルム王子とは敵対されているのではありませんか。
護衛の騎士はいないのですか、いないのなら危険過ぎます」
わたくしとの婚約を破棄したクウィチェルム王子は第一王子ですが、常日頃の素行がよくないので、佞臣奸臣悪臣しか側にはいません。
この国にはもう僅かしか残っていませんが、良識のある善良な貴族や騎士は、クウィチェルム第一王子ではなく、チェンワルフ第二王子に期待しています。
良識のある善良な貴族や騎士は、チェンワルフ第二王子がクウィチェルム第一王子に謀殺されないように、常に安全な場所に匿っていたはずなのです。
「心配してくれるのかい、それはうれしいね。
オリビアがウィチェルムに婚約破棄されるという報告があってね。
ダグラス女伯爵家の当主は本来オリビアのはずなのだけれど、クウィチェルムは度し難い馬鹿だから、追放するかもしれないと心配になったのだよ」
「ふっふっふっふっ、よく兄君の事を理解されていますね。
チェンワルフ王子が申された通り、婚約破棄のだけでなく追放にもされましたわ」
「本当にそんな愚かな事をやったのかい、クウィチェルムは。
最悪の場合を想定していたのだけれど、その通りになるとはおもっていなかった。
でも、それなら、危険を冒して出てきた甲斐があったよ」
「あら、たかだか伯爵令嬢に何を心配されているのですか。
しかもその伯爵令嬢は、婚約者の王子に嫌われて追放されるような者ですよ。
家でも冷遇され、食事さえ与えられない、嫌われ者なのですよ」
「……申し訳ないオリビア、この通りだ、王家を、いや、僕を許して欲しい。
まだまだ力がなくて、オリビアがそこまで追い込まれているのを知らなかった。
これからは絶対にそのような惨めな思いはさせないから、この国を見捨てないでくれ、お願いだ、オリビア、いや、ダグラス女伯爵」
表向きクウィチェルム王子の婚約者という体裁になっていましたから、チェンワルフ王子と仲良くする機会などありませんでした。
どうしても出席させなければいけない公式行事だけ、腐れ外道の父親に見張られながら連れていかれたくらいです。
そんなわたくしに、ここまで下手にでると言う事は、ダグラス女伯爵家が創設された理由を知っているのでしょうか。
ですが、知っていても関係ありませんね、こんな国など滅べばいいのです。
わたくしは、さっさと不浄な場所から遠ざかる事にしました。
もうこの国には何の未練もありません。
正室の座を手に入れるために、母上様に毒をもった後妻のゾーイも。
ゾーイと手を組んで自分の正妻を殺した実の父も。
この手で殺してやりたい、復讐したい気持ちがないわけではありませんが、何時までわたくしに神のご加護が続くか分かりません。
ご加護のあるうちに、この国から遠ざからないといけないのです。
「やあ、この国を出て行くのかい、だったら僕も連れて行ってくれよ」
「チェンワルフ王子、どうしてここにおられるのですか。
クウィチェルム王子とは敵対されているのではありませんか。
護衛の騎士はいないのですか、いないのなら危険過ぎます」
わたくしとの婚約を破棄したクウィチェルム王子は第一王子ですが、常日頃の素行がよくないので、佞臣奸臣悪臣しか側にはいません。
この国にはもう僅かしか残っていませんが、良識のある善良な貴族や騎士は、クウィチェルム第一王子ではなく、チェンワルフ第二王子に期待しています。
良識のある善良な貴族や騎士は、チェンワルフ第二王子がクウィチェルム第一王子に謀殺されないように、常に安全な場所に匿っていたはずなのです。
「心配してくれるのかい、それはうれしいね。
オリビアがウィチェルムに婚約破棄されるという報告があってね。
ダグラス女伯爵家の当主は本来オリビアのはずなのだけれど、クウィチェルムは度し難い馬鹿だから、追放するかもしれないと心配になったのだよ」
「ふっふっふっふっ、よく兄君の事を理解されていますね。
チェンワルフ王子が申された通り、婚約破棄のだけでなく追放にもされましたわ」
「本当にそんな愚かな事をやったのかい、クウィチェルムは。
最悪の場合を想定していたのだけれど、その通りになるとはおもっていなかった。
でも、それなら、危険を冒して出てきた甲斐があったよ」
「あら、たかだか伯爵令嬢に何を心配されているのですか。
しかもその伯爵令嬢は、婚約者の王子に嫌われて追放されるような者ですよ。
家でも冷遇され、食事さえ与えられない、嫌われ者なのですよ」
「……申し訳ないオリビア、この通りだ、王家を、いや、僕を許して欲しい。
まだまだ力がなくて、オリビアがそこまで追い込まれているのを知らなかった。
これからは絶対にそのような惨めな思いはさせないから、この国を見捨てないでくれ、お願いだ、オリビア、いや、ダグラス女伯爵」
表向きクウィチェルム王子の婚約者という体裁になっていましたから、チェンワルフ王子と仲良くする機会などありませんでした。
どうしても出席させなければいけない公式行事だけ、腐れ外道の父親に見張られながら連れていかれたくらいです。
そんなわたくしに、ここまで下手にでると言う事は、ダグラス女伯爵家が創設された理由を知っているのでしょうか。
ですが、知っていても関係ありませんね、こんな国など滅べばいいのです。
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