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第一章

20話

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 エマは私の側にいたがりましたが、拷問をするのに、妻を側に置くわけにはいかないので、実家の父母に会ってくるように言いました。
 最初は遠慮していましたが、援軍の大将代理として、バーブランド子爵家を慰労して欲しいと言うと、逡巡していました。

 宿っているかもしれない子供の為にも、騎乗や馬車はよくないと言うと、素直に実家で休むと言ってくれました。
 矢張り母性と言うのは強いモノです。
 私よりも、宿っているかどうかも確かではない、子を優先するのですから。

 最初王太子と側近貴族は、私の事を悪しざまに罵っていましたが、拷問官に爪を剥がされると大人しくなりました。
 二枚目の爪を剥がしたら、国王の弑逆を認めました。
 三枚目の爪を剥がしたら、全軍将兵の前でその凶行を認めました。

 四枚目の爪を剥がさないでも、今回の弑逆に賛同した貴族士族名をペラペラと話しました
 よほど痛かったのでしょう。
 でも痛いからと言って、味方してくれた家臣の名を言うのは情けない。

 側近貴族はもっと情けなくて、父を大公に推薦するから許して欲しいと言うのです。
 別にこいつらに推薦されなくても、大公になる心算なら、父は宣言するでしょう。
 大公どころか、王位ですら宣言するでしょう。
 卑怯下劣な貴族の推薦など無用なのです。

 ですから、王太子と同じだけ爪を剥いであげました。
 眼を潰したり、耳や鼻を削いだりすることも考えたのですが、それでは王太子と側近貴族の顔を確認出来なくなります。
 領民に王太子と側近貴族を捕虜にしたことを周知しなければいけません。

 王都に晒すまで生かしておかないといけません。
 ただ今度は、逃がす心算がありません。
 私達の目を盗んで逃げられるとは思いませんが、万が一と言う事もあります。
 そこで足首と膝の関節を砕きました。

 ぎゃあぎゃあと泣き喚いていましたが、今まで彼らがやってきた悪行を考えれば、大したことではありません。 
 出来るだけ痛むように、でも死なないように、王太子と側近貴族を、ガタガタと揺れる罪人用の馬車で運ぶ事にしました。

「レアラ様。
 私を置いて行けると思わないでくださいね」

「でもエマ。
 御腹に子が宿っていたら、危険なんだよ」

「大丈夫でございます。
 特別製の馬車を仕立ててもらいました。
 魔獣の腱と毛皮をふんだんに使ったクッションは、全く揺れることがありません」

「やれやれ。
 でもね、王太子と側近貴族を拷問する姿は、胎教に悪いと思うのだよ」

「その時は、眼を閉じて耳を塞ぎまます。
 普通の戦いならば、ジェダ辺境伯家の子供にはいい胎教になると思います」

「そこまで言うのなら仕方ないね。
 一緒に王都まで攻め上るかい」

「はい!」
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