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2話
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「おのれ、バスティアン伯爵!
私の事を愚か者と侮っているのか?!
不敬罪で殺してくれるぞ!」
「殿下こそ、私を侮っておられるのですか?
私を、国が亡ぶのを見過ごすような、不忠者だと思っているのですか?
王家と王国と民を護るためならば、守護神様を蔑ろにする愚か者を、見て見ぬ振りをして殺さず、阿諛追従で目先の利益を追うような不忠者だと思っているのですか?
それこそ、私を侮っていますよ」
本気で怒っておられますね。
王太子の返事しだいで、この場で殺す決意を固めたようです。
それだけに、先ほどの厳しい諌言とは違って、静かに話されています。
これは、この場で、父上と母上の敵が討たれるのでしょうか?
できる事なら、この手で敵を討ちたかったのですが。
「ヒィィィィ!」
ああ、情けない王太子です。
バスティアン伯爵の静かな決意と迫力と殺気に恐怖して、腰が抜けたようです。
ああ、聖女候補のマリー嬢も腰を抜かしてしまいました。
ああ、ああ、ああ、床に黄色い液体が広がっています。
これは二人そろって一生陰で笑われる大恥ですね。
「情けなく腰を抜かし失禁している場合ではありませんぞ。
これは国が亡びるかどうかの一大事ですぞ。
直ぐに返答していただきましょう」
「待て、バスティアン伯爵!
そなたの話はすべて噂であろう。
証拠があるわけではあるまい。
証拠もなしに王太子と聖女候補を殺す事、国王として許さん。
だがバスティアン伯爵の聞いたという噂も無視できん。
至急調べさせるから、今は待て。
そう睨むな、バスティアン伯爵。
余は王じゃ。
法に則って国を治めなければならん。
亡国の危機なのは分かっているから、厳しく調べさせる。
王太子とマリー嬢は塔に軟禁して、証拠を隠滅できないようにする。
ダベルノワ伯爵家は今直ぐ近衛騎士団に捜査させる。
おい、直ぐに捜査の騎士を送り込め。
王太子とマリー嬢を塔に閉じ込めろ」
「は!」
ラウール国王が、王太子を殺そうとするバスティアン伯爵を止めました。
ひとりっ子の王太子を溺愛しているラウール国王は、なにがあっても王太子を助けたいのでしょうが、それでは国が滅んでしまいます。
でも、めぼしい王族が生き残っていないファンスタン王家は、どれほど愚かな王太子であろうと、殺せないという事情もあるのでしょう。
表向き生き残っている王族は、我がフェアリー公爵家だけです。
守護神様との契約を続けることができるのは、ラウール国王、アルセーヌ王太子、私、祖父のテオフラス、祖母のアンリエナだけです。
しかも私は先祖返りで、ファンスタン王家よりも古いフェアリー家の血が濃く表れていて、守護神様とは契約できません。
そう言う意味でも、父母を暗殺したダベルノワ伯爵の罪は重いのです。
ですが、この程度の事は、ダベルノワ伯爵も分かっていたはずです。
ダベルノワ伯爵は、ファンスタン王国を滅ぼしたいのでしょうか?
私の事を愚か者と侮っているのか?!
不敬罪で殺してくれるぞ!」
「殿下こそ、私を侮っておられるのですか?
私を、国が亡ぶのを見過ごすような、不忠者だと思っているのですか?
王家と王国と民を護るためならば、守護神様を蔑ろにする愚か者を、見て見ぬ振りをして殺さず、阿諛追従で目先の利益を追うような不忠者だと思っているのですか?
それこそ、私を侮っていますよ」
本気で怒っておられますね。
王太子の返事しだいで、この場で殺す決意を固めたようです。
それだけに、先ほどの厳しい諌言とは違って、静かに話されています。
これは、この場で、父上と母上の敵が討たれるのでしょうか?
できる事なら、この手で敵を討ちたかったのですが。
「ヒィィィィ!」
ああ、情けない王太子です。
バスティアン伯爵の静かな決意と迫力と殺気に恐怖して、腰が抜けたようです。
ああ、聖女候補のマリー嬢も腰を抜かしてしまいました。
ああ、ああ、ああ、床に黄色い液体が広がっています。
これは二人そろって一生陰で笑われる大恥ですね。
「情けなく腰を抜かし失禁している場合ではありませんぞ。
これは国が亡びるかどうかの一大事ですぞ。
直ぐに返答していただきましょう」
「待て、バスティアン伯爵!
そなたの話はすべて噂であろう。
証拠があるわけではあるまい。
証拠もなしに王太子と聖女候補を殺す事、国王として許さん。
だがバスティアン伯爵の聞いたという噂も無視できん。
至急調べさせるから、今は待て。
そう睨むな、バスティアン伯爵。
余は王じゃ。
法に則って国を治めなければならん。
亡国の危機なのは分かっているから、厳しく調べさせる。
王太子とマリー嬢は塔に軟禁して、証拠を隠滅できないようにする。
ダベルノワ伯爵家は今直ぐ近衛騎士団に捜査させる。
おい、直ぐに捜査の騎士を送り込め。
王太子とマリー嬢を塔に閉じ込めろ」
「は!」
ラウール国王が、王太子を殺そうとするバスティアン伯爵を止めました。
ひとりっ子の王太子を溺愛しているラウール国王は、なにがあっても王太子を助けたいのでしょうが、それでは国が滅んでしまいます。
でも、めぼしい王族が生き残っていないファンスタン王家は、どれほど愚かな王太子であろうと、殺せないという事情もあるのでしょう。
表向き生き残っている王族は、我がフェアリー公爵家だけです。
守護神様との契約を続けることができるのは、ラウール国王、アルセーヌ王太子、私、祖父のテオフラス、祖母のアンリエナだけです。
しかも私は先祖返りで、ファンスタン王家よりも古いフェアリー家の血が濃く表れていて、守護神様とは契約できません。
そう言う意味でも、父母を暗殺したダベルノワ伯爵の罪は重いのです。
ですが、この程度の事は、ダベルノワ伯爵も分かっていたはずです。
ダベルノワ伯爵は、ファンスタン王国を滅ぼしたいのでしょうか?
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