侯爵令息は婚約者の王太子を弟に奪われました。

克全

文字の大きさ
上 下
4 / 15
第一章

第4話:マナー

しおりを挟む
「メイガさんよ、あんたにも事情があるんだろうし、見ていれば冒険者するのが初めてなのも分かっている。
 だからマナーについても知らないのだろうが、どこの冒険者ギルドに行っても、そのマナーについては同じなんだよ」

 話しかけてきたのは、この冒険者ギルドのトップチームの一角、ドラゴンファングのリーダー、ロイドだった。
 話しかけてきたのが男で本当によかった。
 今女に話しかけられたら、無意識に攻撃してしまっていたかもしれない。
 だが、マナーがあるとは知らなかった。
 マナーがあるのなら、規則ではなくても守らなければいけないのは確かだ。

「そうか、それは申し訳なかった。
 別にマナー違反をしたいわけではない。
 規則に記載されていなくても、長年かけて培われたマナーは尊重しよう。
 さっき受付嬢が言っていた、屑素材を持ち帰るというのもマナーなのだな?」

 話の内容からいってそうなのだろうとは思ったが、念のために確認した。
 最初に女と話すのが嫌で、規則だけ聞いてマナーの確認をしていなかったという、痛恨の失敗をしているのだ。
 ここはちゃんと確認しなければいけないだろう。

「いや、いや、そうではないんだよ。
 トップパーティーは、若年やロートル、時には孤児や浮浪者に仕事を与え、餓死しないように、狩った獲物を運搬する仕事を与えるのがマナーなのだよ」

 なるほど、規則ではなくマナーという理由が分かった。
 どれだけの実力があって、どんな魔獣を狩れて、どれくらい余力があるなんて、本人以外には分からないからな。
 規則で決めるのではなく、本人やパーティーの余裕によって、施す魔獣の種類と数を自主的に決めればいいのだろう。
 だが、俺の場合は根本的な問題があるのだか、それはどうするのだろう?

「ふむ、マナーを守るのはいいが、根本的な問題はどうするのだ?
 俺が狩るような深くまで、孤児や浮浪者、若年冒険者やロートル冒険者は付いてこれないだろう?
 行き帰りまで護衛しろと言われても同意できんぞ?」

 地位の高い者にはそれに応じた責任がある事は、生まれた時から叩き込まれてきたから、強者が弱者に施す事は理解できるし協力する気もある。
 だが、何から何まで助けてくれというのなら、それは弱者のエゴだろう。
 そんなエゴに付き合う気は断じてない。
 どうしてもそれがマナーだというのなら、別の国のダンジョンに行くまでだ。
 なんなら人間が発見していない未開発のダンジョンを探してもいい。

「いや、いや、そこまでは求めていないよ。
 冒険者にそんな事を求めても、俺も含めて絶対に応じないさ。
 ちゃんとやれる範囲の支援相場が決まっているよ。
 今からその説明をしたいのだが、いいかな?」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

僕はただの平民なのに、やたら敵視されています

カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。 平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。 真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)

ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。 僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。 隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。 僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。 でも、実はこれには訳がある。 知らないのは、アイルだけ………。 さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

婚約破棄と国外追放をされた僕、護衛騎士を思い出しました

カシナシ
BL
「お前はなんてことをしてくれたんだ!もう我慢ならない!アリス・シュヴァルツ公爵令息!お前との婚約を破棄する!」 「は……?」 婚約者だった王太子に追い立てられるように捨てられたアリス。 急いで逃げようとした時に現れたのは、逞しい美丈夫だった。 見覚えはないのだが、どこか知っているような気がしてーー。 単品ざまぁは番外編で。 護衛騎士筋肉攻め × 魔道具好き美人受け

俺の婚約者は悪役令息ですか?

SEKISUI
BL
結婚まで後1年 女性が好きで何とか婚約破棄したい子爵家のウルフロ一レン ウルフローレンをこよなく愛する婚約者 ウルフローレンを好き好ぎて24時間一緒に居たい そんな婚約者に振り回されるウルフローレンは突っ込みが止まらない

処理中です...