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本編
細川典厩家
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1543年7月8日『摂津国・欠郡中嶋城』種子島権大納言時堯・15歳
俺が三宅城を潰したのに続き、堺に大岩を落として商人たちを追放した事は瞬く間に広まっていた。朝廷と大宰府で行う七夕の節句の為に、2日間空いた事が逆によかったのか調略がサクサクと進んだ。
今摂津国に残っている有力国衆の、協力国衆・直臣・地侍が次々と調略に応じて来た。特に半農半武の地侍は、武勇に自信のある親か子弟が扶持武士として種子島家に仕え、非力な者や心優しい者が自作農になる事で、土地を残しながら武士としての家名と血脈を残す方法を取ってきた。
しかも一時的に土地を離れて身を隠すことで、元々の主人である国衆に無理矢理兵に仕立て上げられ、種子島家との戦いに動員され無いようにしていた。この状態に全ての国衆が苦しむことになったが、全く解決方法がなかった。今の摂津国に攻め込むのは、種子島家に喧嘩を売る事になるので、河内国・和泉国・播磨国の守護も国衆も手出ししないだろうが、兵が集まらない国衆は不安で仕方ないだろう。
「典厩殿、どこに逃げられても追い討ちはせぬが、早急に城を出なければ大岩の下敷きになるぞ」
「この城に残る事を許して頂けないでしょうか?」
「典厩家は将軍家や京兆家の家督争いに関与し、この国に騒乱を撒き散らした、その罪を許す訳にはいかん」
「権大納言さまの配下とし忠誠を誓い働かせていただきます、それでも駄目なのでしょうか?」
「駄目だな、晴元を成敗した以上、残った典厩殿を管領に担いで、畿内に騒乱を撒き散らそうとする者が必ず出てくる。城地を奪い軟禁するか、城地を奪って畿内から追放するしか方法がない。棄て扶持をもらって公家になったり僧になったりは出来まい?」
「それは・・・・・」
「まだ武家としての野心がある眼をしている、三好を頼って阿波に落ちるも他の誰かを頼るも自由だ」
「分かりました、家臣と私財を纏める時間を頂きたい」
「分かった、だが他の国衆の去就が決まるまでだから、それほど時間はないぞ」
「承知しております」
俺は普段他のもっと家格の低い国衆に対しても丁寧な口調を使うのだが、典厩家は国を荒廃させた応仁の乱を引き起こした細川一族の有力分家であり、その後の一連の乱にもかかわり続けた一族のため、ついつい言葉が非難めいたものになってしまう。
それに三好長慶が阿波に去り、細川晴元を処刑した後でこの細川氏綱が摂津国を支配する勢いだった。こいつを摂津国から逃げるように追い出す事が出来れば、他の国衆も一緒に逃げて行くかもしれないのだ。
俺が三宅城を潰したのに続き、堺に大岩を落として商人たちを追放した事は瞬く間に広まっていた。朝廷と大宰府で行う七夕の節句の為に、2日間空いた事が逆によかったのか調略がサクサクと進んだ。
今摂津国に残っている有力国衆の、協力国衆・直臣・地侍が次々と調略に応じて来た。特に半農半武の地侍は、武勇に自信のある親か子弟が扶持武士として種子島家に仕え、非力な者や心優しい者が自作農になる事で、土地を残しながら武士としての家名と血脈を残す方法を取ってきた。
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「典厩殿、どこに逃げられても追い討ちはせぬが、早急に城を出なければ大岩の下敷きになるぞ」
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「それは・・・・・」
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「分かった、だが他の国衆の去就が決まるまでだから、それほど時間はないぞ」
「承知しております」
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それに三好長慶が阿波に去り、細川晴元を処刑した後でこの細川氏綱が摂津国を支配する勢いだった。こいつを摂津国から逃げるように追い出す事が出来れば、他の国衆も一緒に逃げて行くかもしれないのだ。
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