魔法武士・種子島時堯

克全

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本編

若狭武田家

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1543年1月10日『京・種子島屋敷』種子島権中納言時堯・15歳

「周玉殿、このままでは若狭武田家を取り潰さなければならなくなりますよ」

潤甫周玉(1504~1549)
父親:武田元信の次男
臨済宗の僧
若くして出家した
1539年:遠敷郡名田荘雲外寺を開山した
1543年:建仁寺第二八二世に迎えられた
    父・武田元信や、兄・武田元光とともに三条西実隆との交流を持った

「権中納言さま、それは余りに酷くは有りませんか?」

「だが今の若狭の状況こそ余りに惨いのではないかな?」

「この戦国の世では仕方のないことでございます」

「そんなことはない! 種子島家領では民が餓える事も凍えることもなく暮らしておる。戦国の世を創り出したのは、足利将軍家と細川管領家が家督争いの内紛を起こし醜く争ったからではないか! そして若狭国は武田家が武田元光殿と武田信孝殿が家督を争い、家臣共が相争ったからではないか!」

若狭武田元光(1494~1551)
父親:武田元信の次男
通称:彦二郎
官途:大膳大夫
1521年:父・武田元信の病没により若狭武田家の家督を相続した。
1517年:安芸武田元繁が毛利元就と戦って討死すると、安芸武田光和の後見役を務めた。
1526年:細川高国の意向を受けて上洛した
1527年:「西七条桂川の戦い」で三好勝長、柳本賢治らと戦うが敗北、
    足利義晴とともに近江国に落延びた
1532年:隠居して家督を継嗣の武田信豊に譲った
1538年:「谷田寺の戦い」では、粟屋元隆が離反したため、これと戦った。

若狭武田信孝(14??~15??)
父親:武田元信の三男
官途:中務少輔
1538年:粟屋元隆の擁立され、甥・武田信豊と若狭武田家の家督を争った。
    遠敷郡の戦いで敗北し朝倉孝景を頼り、越前国に落延びた
1552年:粟屋右馬允とともに若狭国に侵攻を図るが、朝倉義景の支援を受けられず失敗に終わった。

「それは欲にかられた粟屋元隆どもが、信孝を誑かしたのです、武田家が悪いのではありません」

「誑かされるような愚か者なら若隠居させるなり、僧籍に入れるなりすればよい、1国を預かり民百姓の生活、いや、命を預かる責任を何だと思っているのだ!」

「それは・・・・・」

「臨済宗を何の為に学び僧をしている、御上の天下安寧を願う大御心を何と心得ておる!」

「それは・・・・・」

「弟の山県盛信殿・内藤元是殿・春沢永恩殿とも話し合い、若狭武田家の今後について早急に話を纏められよ。この1カ月、私からも三条西実隆殿をはじめとする公家衆からも何度も使者が行っているであろう。これ以上の猶予はないと思われよ」

山県盛信(15??~15??)
父親:武田元信の四男(山県頼冬の養子)
官途:下野守
通称:源三郎
別名:山県秀政
 本境寺の寺役免、妙楽寺への奇進、長源寺の淀書制定、長源寺、谷田寺への安堵状の発給を行った。

内藤元是(15??~15??)
父親:武田元信の五男
官途:伊豆守。

春沢永恩(14??~1592)
父親:武田元信の六男
著書:『春沢和尚録』、『枯木藁』
   臨済宗・京都建仁寺の九峰以成の跡を継いだ
   のち建仁寺,南禅寺の住持となった。
   詩文にすぐれ、策彦周良らと親交を持った。

「分かりました、今日にでも若狭に向かいます」

「軍の都合がつき次第、明日にでも若狭侵攻を行う、一旦侵攻が始まれば武田家は取り潰しの上一族一門悉く対馬に遠島と心得られよ」

「そんな! 今しばしお待ち下さい!」

「もう1カ月待った、これ以上待つことは出来ん!」

 俺は年末年始にかけて、若狭の全城砦の城門・土塁を破壊して周った。俺がこれを行う時は、種子島家の侵攻準備だと、全国津々浦々の守護・国衆・地侍が知っている。だから若狭では蜂の巣をつついたような騒動となっている。

 それでなくとも若狭国の領民は、生きて行くのが困難なくらいの重税を課せられ、若狭武田家の内紛・度重なる外征・国衆同士の争いと度重なる戦いで死傷しているのだ。極楽のような国と言う噂の種子島家が京・山城国を実質的に支配し、瞬く間に大和国・近江国まで併合したのだ。若狭から逃げる事が出来る民は全て逃散してしまっていた。

 いや、民百姓の逃亡は畿内各国・東海にまで及び、各国の守護・国衆の生産力が格段に低下していたのだ!
 
 民百姓の逃亡を防ぐには、奴隷として隔離拘束して強制労働させるか、年貢を低くして種子島家並みの生活を保証するしかなかった。だがそれもまた各国の守護・国衆の国力を著しく低下させる事になった。そのため俺の侵攻目標となった若狭国の国衆・地侍は、あらゆる伝手を使って種子島家と縁を繋ぎ血脈と家名を残そうと足掻いていた。

 そしてそれは若狭武田家も同じで、臨済宗の寺院・公家の三条西実隆との交流を生かして血脈と家名を残そうとしていた。
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