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本編
野宮の造営
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1541年6月15日『京・嵯峨野』種子島権中納言時堯・13歳
「若殿、何とか間に合わせる事が出来ると思います」
「斎宮様がご不自由なされる事の無いように、最低限の施設だけは最優先で創りあげてくれ」
「心得ております」
「お仕えする方々の施設は後々でも構わない、ご身辺を警護する種子島家の者はテントで野営させてでも、十二分な手勢をそろえてくれ」
「承りました」
「この図面にある青の部分にはトーチカを築いてくれ」
「トーチカを築くと言う事は、大砲や連発銃を畿内に持ち込まれるのですか?」
「白虎は反対なのか?」
「いえ、若殿は敵に奪われることも考慮の上で決定なされたでしょうから、反対など思いもよりません」
「確かに大砲や連発銃の事を知れば、敵は全力をもって盗み奪おうとするだろう。だが九州から艦隊に搭乗してやって来た、厳しく激しい訓練を終えて一人前の戦士と認められた者たちなら、盗まれる事も奪われることもないだろう」
「はい」
「それに河原者だけではなく、鞍馬の天狗や愛宕の天狗も味方に付いてくれた、何よりも八瀬童子が味方に付いてくれたことが大きい」
「彼らが味方に付いてくれたことで、甲賀や伊賀の忍者も心配はいらないと申されるのですか?」
「ああ、九州から連れて来た種子島忍軍に内部を固めてもらい、外周部の防衛防諜を彼らに任せる」
「その為に全員を召し抱えられたのでですか?」
「そうだ、御上直々にお声を掛けていただいたのだ、余程の不心得者以外は我らを裏切ることはないだろう」
「それでも信頼信用を裏切って、連発銃を盗み奪って逃げた場合はどうなされますか?」
「本人だけでなく裏で策謀していた者も、御上と朝廷を蔑ろにして強訴を行った比叡山延暦寺の僧兵と同じように、手足の骨と急所を粉砕して地獄の苦しみを与えてやるさ」
「左様でございますか、ならば大丈夫でございましょう」
朝廷では占いで斎王の最初の潔斎所(初斎院)を御所内に定めると共に、急ぎ洛外の清浄な地に野宮を造営することになった。今回は戦略的に急ぐ必要があり、翌年8月上旬では無く今年の8月に野宮(ののみや)に入ることになっていた。
賀茂神社の野宮は、紫野に置かれていた斎院御所(紫野院)を再造営することになった。また伊勢神宮の斎宮のための野宮は、古の先例に従い嵯峨野に再造営することになった。本来は賀茂神社野宮は1代で取り壊され、伊勢神宮野宮は1年で取り壊されるものだが、野宮神社・西院野宮神社・斎宮神社・斎明神社の先例もあるため、後に種子島家が城砦として転用できる場所に造営した。
「若殿、何とか間に合わせる事が出来ると思います」
「斎宮様がご不自由なされる事の無いように、最低限の施設だけは最優先で創りあげてくれ」
「心得ております」
「お仕えする方々の施設は後々でも構わない、ご身辺を警護する種子島家の者はテントで野営させてでも、十二分な手勢をそろえてくれ」
「承りました」
「この図面にある青の部分にはトーチカを築いてくれ」
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「白虎は反対なのか?」
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「確かに大砲や連発銃の事を知れば、敵は全力をもって盗み奪おうとするだろう。だが九州から艦隊に搭乗してやって来た、厳しく激しい訓練を終えて一人前の戦士と認められた者たちなら、盗まれる事も奪われることもないだろう」
「はい」
「それに河原者だけではなく、鞍馬の天狗や愛宕の天狗も味方に付いてくれた、何よりも八瀬童子が味方に付いてくれたことが大きい」
「彼らが味方に付いてくれたことで、甲賀や伊賀の忍者も心配はいらないと申されるのですか?」
「ああ、九州から連れて来た種子島忍軍に内部を固めてもらい、外周部の防衛防諜を彼らに任せる」
「その為に全員を召し抱えられたのでですか?」
「そうだ、御上直々にお声を掛けていただいたのだ、余程の不心得者以外は我らを裏切ることはないだろう」
「それでも信頼信用を裏切って、連発銃を盗み奪って逃げた場合はどうなされますか?」
「本人だけでなく裏で策謀していた者も、御上と朝廷を蔑ろにして強訴を行った比叡山延暦寺の僧兵と同じように、手足の骨と急所を粉砕して地獄の苦しみを与えてやるさ」
「左様でございますか、ならば大丈夫でございましょう」
朝廷では占いで斎王の最初の潔斎所(初斎院)を御所内に定めると共に、急ぎ洛外の清浄な地に野宮を造営することになった。今回は戦略的に急ぐ必要があり、翌年8月上旬では無く今年の8月に野宮(ののみや)に入ることになっていた。
賀茂神社の野宮は、紫野に置かれていた斎院御所(紫野院)を再造営することになった。また伊勢神宮の斎宮のための野宮は、古の先例に従い嵯峨野に再造営することになった。本来は賀茂神社野宮は1代で取り壊され、伊勢神宮野宮は1年で取り壊されるものだが、野宮神社・西院野宮神社・斎宮神社・斎明神社の先例もあるため、後に種子島家が城砦として転用できる場所に造営した。
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