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第二章

第20話:実力と脅迫

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 私の目の前には、腕自慢の貴族と騎士と護衛がへたり込んでいます。
 私は身体強化の魔術を使っていますので、息一つ乱していません。
 およそ百人が死屍累々の状態になっています。
 ほとんどがそれなりの実力者でしたが、中には何故挑んできたのかと思いたくなるような無様なモノもいました。
 自分の実力が全く理解できていない馬鹿なのか、恥をかいてでもいいから私に印象付けたいのか、悪目立ちでしかないのですがね。

「敵です、敵が攻め込んできました!」

 慌てた従僕が会場中に広がる大声で叫んでしまいました。
 夜襲だと貴族夫人や貴族令嬢が慌てふためいて騒いでいます。
 いえ、女ばかりか、某伯爵家の傍流のように、男のくせに腰を抜かす者もいます。
 なさけない限りですが、それが一般的な貴族のようです。
 胆力がないだけでなく、軍略の才能もありません。
 今この状況で夜襲をかけてくるような愚者なら、確実に勝てるというのに。

「騒ぐのは止めなさい、見苦しい。
 どれほどの大軍が攻め込んで来ようとも、兄上と私で撃退してみせます。
 そもそも、この夜襲は私達を脅かすためだけの偽装です。
 矢を射かけてこちらの様子を見て、隙がなければ脅かしの声をあげるだけです。
 敵に乗ずる隙を与えるなど、愚かにもほどがあります」

 私が厳しく言い放つと、ほとんどの者が騒ぐのを止めました。
 自分達の行いを恥じた者もいれば、私が声に加えた鎮静魔術の効果で正気を取り戻した者もいます。
 問題は、貴族令嬢や貴族夫人が落ち着いたにもかかわらず、未だに悲鳴を上げている根性なしの貴族をどうするかですが……

「いい加減お黙りなさい!」

 自分達が悪いのにも関わらず、恥をかかされたとへそを曲げる貴族が多いので、本来ならこんな場所で叱責するのは悪手なのですが……
 私は臆病な馬鹿が大嫌いなのですよね、思わず頬を張ってしまいました。
 まあ、いいです、離反するならしてかまいません。
 領地に帰って食糧生産に力を注げば、兄上と私だけでもモンタギュー王国軍とドランク王国軍を同時に撃退することができるでしょう。

「さて、皆様にはモンタギュー王国とドランク王国の両方に、私達の結束を知らしめてもらわなければいけません。
 家の紋章を刺繍した旗印を掲げで、城壁に整列していただきます。
 でも何も心配いりませんよ、敵の矢石は魔術で防いで見せますから。
 ここにモンタギュー王国軍が現れたという事は、私の領地にはドランク王国軍が攻め寄せてきているはずですが、全て撃退してみせます」
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