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第1章
26話
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「どうだ、やれそうか?」
「大丈夫でございます。
各藩は反射炉に詳しい者を職人と共に送ってくれました。
失敗する事も多いでしょうが、幾つかは成功すると思われます」
徳川慶恕は反射炉の完成のため、蘭国の技術者はもちろん、各藩にいる蘭学に詳しい者を江戸と尾張に集めた。
失敗を恐れず、幾つもの反射炉を試作させた。
それが功を奏したのだろう。
思っていた以上に早く試作反射炉が完成し、金属の精錬が可能となった。
徳川慶恕のこの行動によって、藩を超えた人材の交流が促進された。
剣術などの同門の交友だけでなく、学友の同門が現れた。
それも莫大な人数が現場で意見を戦わせ、競い合って一つの事業を成し遂げるという、この時代では画期的な事だった。
そんな中でも、縁組や色恋、子作りは行われている。
昼と夜の人格、頭と臍から下は別物である。
徳川慶恕も二十代の男盛りだ。
しかも高須松平家三万石の世子ではなく、尾張徳川家の当主なのだ。
体面上も家を継がす意味でも、早く後継者を設ける必要があった。
弟達がいるとは言っても、将軍家から何代も後継者を押し付けられた事に怒りを覚えていた尾張家の下級家臣達は、正室を迎える前から愛妾を勧めていた。
結局は一橋徳川家の第二代当主・徳川治済の十五女・千重姫(一八二一)を、尾張徳川家を継承した直後に正室に迎える事になった。
そして一八四五年、千重姫との間に表向きの長男が生まれた。
表向きの長男というのは、愛妾との間に幕府に届けてしていない子供があるという事だった。
武家にはよくあることなのだが、後々庶長子と正室の長男が家督争いをしないように、愛妾や側室との間にできた子は、元服まで届出しないのだ。
徳川慶恕も、尾張徳川家を継ぐ前、高須松平家の世子時代に作った子供がいた。
流石に尾張徳川家を継ぎ、千重姫を正室に迎えてからは愛妾を近づけていないが、高須松平家時代には十六歳から愛妾を持っていたのだ。
徳川慶恕
正室:千重姫(一八二一)父:一橋徳川家の第二代当主・徳川治済
:亀太郎(一八四五)
愛妾:お杉の方:西石河家(千石)石河正基
:源太郎(一八四一)
:錬次郎(一八四二)
一方浜田藩越智松平家を継いだ秀之助改め松平武成は、田安徳川家の第三代当主・徳川斉匡の十九女・筆姫(一八三〇)と婚約しており、男女の道にも生真面目で、庶子をもうけるような事はなかった。
それが正しいことかどうかは誰にも分からないが、自分が早死にするようなら、弟の誰か、もしくは徳川慶恕の庶子に跡を継がせればいいと考えていた。
「大丈夫でございます。
各藩は反射炉に詳しい者を職人と共に送ってくれました。
失敗する事も多いでしょうが、幾つかは成功すると思われます」
徳川慶恕は反射炉の完成のため、蘭国の技術者はもちろん、各藩にいる蘭学に詳しい者を江戸と尾張に集めた。
失敗を恐れず、幾つもの反射炉を試作させた。
それが功を奏したのだろう。
思っていた以上に早く試作反射炉が完成し、金属の精錬が可能となった。
徳川慶恕のこの行動によって、藩を超えた人材の交流が促進された。
剣術などの同門の交友だけでなく、学友の同門が現れた。
それも莫大な人数が現場で意見を戦わせ、競い合って一つの事業を成し遂げるという、この時代では画期的な事だった。
そんな中でも、縁組や色恋、子作りは行われている。
昼と夜の人格、頭と臍から下は別物である。
徳川慶恕も二十代の男盛りだ。
しかも高須松平家三万石の世子ではなく、尾張徳川家の当主なのだ。
体面上も家を継がす意味でも、早く後継者を設ける必要があった。
弟達がいるとは言っても、将軍家から何代も後継者を押し付けられた事に怒りを覚えていた尾張家の下級家臣達は、正室を迎える前から愛妾を勧めていた。
結局は一橋徳川家の第二代当主・徳川治済の十五女・千重姫(一八二一)を、尾張徳川家を継承した直後に正室に迎える事になった。
そして一八四五年、千重姫との間に表向きの長男が生まれた。
表向きの長男というのは、愛妾との間に幕府に届けてしていない子供があるという事だった。
武家にはよくあることなのだが、後々庶長子と正室の長男が家督争いをしないように、愛妾や側室との間にできた子は、元服まで届出しないのだ。
徳川慶恕も、尾張徳川家を継ぐ前、高須松平家の世子時代に作った子供がいた。
流石に尾張徳川家を継ぎ、千重姫を正室に迎えてからは愛妾を近づけていないが、高須松平家時代には十六歳から愛妾を持っていたのだ。
徳川慶恕
正室:千重姫(一八二一)父:一橋徳川家の第二代当主・徳川治済
:亀太郎(一八四五)
愛妾:お杉の方:西石河家(千石)石河正基
:源太郎(一八四一)
:錬次郎(一八四二)
一方浜田藩越智松平家を継いだ秀之助改め松平武成は、田安徳川家の第三代当主・徳川斉匡の十九女・筆姫(一八三〇)と婚約しており、男女の道にも生真面目で、庶子をもうけるような事はなかった。
それが正しいことかどうかは誰にも分からないが、自分が早死にするようなら、弟の誰か、もしくは徳川慶恕の庶子に跡を継がせればいいと考えていた。
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