義足の王様は姫になる？

本編

時は過ぎていく。

あれから、退院してリハビリを行ってある程度普通に歩ける様になったが断端の痛みや義足が無い時の幻肢痛は治らなかった。

これに関しては和らぐまで薬を飲んでいくのと器具を使うくらいしか出来ないのでゆっくり付き合っていくことにした。

断端の痛みについては毎度確認が必要らしいので義足を取り外したり色々大変だけど、だいぶ慣れてきた。


あの日から、相良は来てない。
でも、後悔もしてない。

これ以上居られると許してしまいそうだし、性懲りなく好きになりそうだったから。

あの人の優しさに甘えそうになっていたから。


これで良かった。

学校にも行けるようになり、最初は戸惑ったし階段がしんどかったりしたがクラスの皆が助けてくれた。

「武尊、大丈夫？肩貸すか？」
「大丈夫、甘え過ぎると後がしんどいし。さんきゅ、隼人」

そう言えば進歩と言えば親友との呼び方が変わったくらいかな。
親友なのに苗字呼びは嫌だ！という松平の提案により名前で呼び合うことにした。

笠井コーチは辞めたらしく、隼人は卒業後プロになる為にトレーニングは続けてるらしい

「…聞きたくなかったよな…ごめん」
「親友の頑張りは俺も聞きたい。お前の活躍を見て将来自慢するんだ。俺の親友だーって。アイツの相棒は俺だってなぁ。いいだろ？」

そういうと、辛そうな笑顔をしていた松平はサッカーの事を話すようになってくれた。

気を使われる方がしんどい事もあるんだぜ。
松平の言うことがわかった気がする。

「俺、今度からちゃんと相談するわ」

「当たり前だ。俺の親友はお前だけだしお前もそうだろが。今度黙ってたらその無駄に良い面おたふく風邪みたいにしちゃるぜ」

ニカッと笑う松平は、そう言いながらドヤ顔というものをしていた。可愛くねぇけど。

コーチや、相良さんならまだしも…


ん？俺、何考えてんだろ…どっちも振られたような相手なのに。


考えると悲しくなってきた。
笠井コーチも相良さんも今はもう会えないし。

サッカー無くした俺は…本当に何もねぇな…

勉強でも…するか。

後3ヶ月くらいだから受験するかは悩むけど、しないよりはマシだろう。

それから数ヶ月して、桜沢は都内でそこそこ有名な大学に合格する事になった。