義足の王様は姫になる？

本編

何でも持ってる男

あれから、傷が塞がるまでは動けなかった。

そして毎日、あの男前はやってきた。

「また来た。お土産だ。」

顔にあった低く響く声と共に手渡されたのは松平が持っていて欲しかった最新のゲーム機。


欲しいものを聞かれて、1番困りそうなものを選んだ

高級な服、入りにくそうな店の可愛らしい人形、売り切れ御免のお菓子、パソコン、最新のゲーム機。

全てを難なく持ってきたこの男は金である程度は解決出来ると言っていた。
嬉しいけど、素直に喜べない。

だって…

「俺の欲しいものは、買えないけど。」

「本当にすまない…」

この男前は、相良大和といい有名な株式会社YAMATOの社長である大金持ちらしく、これから先俺に負担になる物はこの男が受け持つのとこれから先俺がプロで稼ぐだろう金額を支払って示談が成立した。


ただ、その金額はエゲツナイもので高校生にはあまりあるどころか一生遊んで暮らせるような金額だった。

こんなに貰えない、と言うと相良は俺の事を全部調べたらしく、プレイもサッカーも全て頭に入れてそこから計算したと言っていた。

「君が王様って言われるのはわかる。期待もされていた。多分俺が居なきゃ君は日本代表の主将にもなれた。」

「そう…だったら良かったけど。」

正直、俺はこの人が嫌いで会いたくない。

人の夢を奪っておいて何でも持ってる。

財力、高身長、人脈、魅力、人柄…何より顔が良い。

自身もそこそこモテる方ではあるが、相良の前では月とスッポン。
まるでシマウマとパンダくらい違うものがあり別の生き物ではなかろうかと思ってしまう。


桜沢は一般的に同性愛者と言われるホモセクシャルでその自覚もあった。

初恋も、今好きなコーチも男だから戸惑いはしたが理解するのは早かった。だからこそ、日に日に魅力的なこの男に絆されてしまいそうで嫌だった。

許してしまいそうで、嫌だった。


俺の全てを奪った人間なのに。

だから帰る時はいつも言っていた

「もう来ないでね。」

その回答はいつも変わらない。

「また明日。」

夢が壊された事や不自由な怒りをぶつけても、また来ると言ってやってくる。

大人の余裕が腹立たしい。

いつか絶対困らせてやる。
それでもアイツは余裕でこなすんだろうけど。