2 / 15
本編
知らない天井
しおりを挟む目が覚めるとそこは知らない天井だった。
意識障害が残ってないか医師に診られたが特に問題ないとの事だった。
そして両親と男の子の家族…それに漫画に出てきそうな男前が目の前にいた。
両親は泣き続けていた。
男の子の両親も、男前も俺の親に謝る混沌としたこの病室はなんなんだろう。
そう思っていた時、男の子がトコトコと歩いてきた
「おにいちゃん、たすけてくれてありがとう!あと、ごめんなさい…ぼくのせいで、」
泣きそうになる男の子は小学生にもなっていないだろう雰囲気だが謝る事やお礼は言いたいと自分で言ってきたらしい。
その気持ちだけで助けたかいはあったかな。
頭を撫でて上げると泣きながら笑っていて可愛い弟みたいで心が落ち着く。
「でも、ぼくのせいで、あんよないないした…」
あんよ…?無い無い?
何かないって事?特に何も変わんない気がする。
そう思った時、右足に激痛が走った。
ガンガンとハンマーで殴られてるような。
ドリルで少しづつ抉られるような痛みに右足を抑えた俺は異変に気がついた。
あるべき場所に足の感触がない。
あるのは布団の柔らかい感触と痛みだけ。
そしてそれを見た俺の両親は、泣き叫び男の子の両親や男前、更には男の子も罵倒し始めた。
恐る恐る布団を捲ると、右太腿の付け根から少し下が何も無かった。
「俺の大事な息子はプロの誘いまで来てたんだぞ!夢を叶えるのにどんだけ死ぬ気で苦労したか、死ぬ程悩んだか知ってるのか!?それをお前らが、お前たちが…!」
その言葉で病室は静寂に包まれた。
桜沢にもわかった。これでは自分のプロになり好きなチームで闘う夢は諦めるしかない。
土下座で謝り続ける男前は加害者側らしく泣きながら謝る男の子の両親と共に居た堪れない感じを出していた。
泣きながら俺に謝るその子を撫でていると父親はこちらを見ていたのか、目が合うと今にも泣きそうな顔をしていた。
そんな顔を見るのは初めてで、戸惑っていると父親は言った。
「武尊…」
今にも死にそうな掠れ声は意識のない間に泣いていたのか目も赤く腫れている。
3日、意識が無かったらしくしょうがない
「俺は大丈夫だぜ?こんなに元気なんだもん。俺、親父達好きだからかっこ悪いとこ見たくない。だから、謝ってそれで終わり。まぁ、治療費とかは欲しいけど。」
普段の調子に乗ってふざけている自分を演じながら笑って誤魔化すと周りは落ち着いたのか、泣くのを辞めてくれた。
「まー、でも落ち着きたいからさ。一旦1人になりたいね。流石の俺もこの状況整理がついてないよ」
俺が笑ってそう言うとみんなは出ていってくれた。
上手く笑えていたのかはちょっと心配。
皆が出ていった後、止めていた涙が零れた。
夢は終わった。その輪郭まで見えていたのに現実は…神様は残酷だった。
足がなくてサッカーなんてできるわけがない。
痛みと目の前の光景が俺の頭に現実を突き付ける
人を助けたいと思っただけなのに、こんな事になってしまった。
昼だったのに、俺は日が暮れても泣いた。
嗚咽と泣き声だけが静寂に響き渡る。
声を我慢するなんて出来るわけない。
高校生の男とは思えない程、不細工に泣き続けた俺は泣き疲れて寝てしまった。
ただその意識を失う少し前に、声が聞こえた。
誰…?わかんないけど、俺は疲れた。
頭を撫でられるような懐かしい感じを噛み締めて眠りについた。
11
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説


王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い


6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話
あめ
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話
基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想
からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定

囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる