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最終章 教師となった皇子とAクラスの生徒達
77話 誇り高き指導者へ
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「そうだな。狙われているというなら迂闊に行動は出来ない。これは俺達だけでなく他の先生族にも共有すべきだ」
「でも共有者は絞った方がオススメですわ。今回の件でAクラスと他クラスの溝が浅くなったものの、先生がカゲルに関わっているとなればまた変な目を向けられるはず」
「先生大丈夫だよ!ヒマワリ達が守ってあげる!」
「お前達…」
Aクラスの生徒達が全員思うことは同じようで決意をしたような目で俺を見た。誰も目を逸らさずに心に火を灯している。そんな生徒達に囲まれた俺の頬には涙が流れた。
「シンリン先生!?」
「何で泣いているの!?もしかしてお腹すいちゃった!?」
「誰だ!先生泣かせ奴!」
「……最初に言ったのはカナト」
「えっ?でも皆さんも続けて同じようなこと言ったっすよね?」
「ハハッ、なら俺達全員が先生族を泣かせてしまったな」
「これで涙を拭いてくれ」
「あらハルサキ。準備がいいこと」
俺はハルサキから手渡された布で涙を拭く。自然と流れる涙は止まることなく、どれだけ自分が怖がっていたのかを物語っていた。
もし生徒達に拒絶されてしまったらどうしよう。その前に信じてもらえずに流されてしまうかもしれない。そんな不安が知らず知らずのうちに積もっていたようだ。しかし無用な心配だった。
こいつらが仲間を拒絶することなんてあり得ないし、真剣に話せばちゃんと聞いてくれる。一瞬でもそのことを忘れてしまった俺が恥ずかしい。
「ありがとう。お前達」
まだ少し滲む視界でAクラスの生徒達を見れば笑っている。過去に誰も守れなかった俺がこんなに幸せな空間にいて良いのだろうか。
最初は嫌われようとするために動いていたのにいつの間にか生徒達のために戦いたいと思うようになった。こいつらを知れば知るほどもっと一緒に居たくなる。こんな気持ちは初めてだ。
俺は車椅子に座ったまま再度頭を下げる。今から言うのは偽りのない誓いだ。
「これからも、Aクラスの指導者としてよろしく頼む」
その瞬間、生徒達は椅子から立ち上がって俺の近くにくる。抱きつく生徒も居れば優しい目をして頷く生徒も居て、教室内は幸福感に満ち溢れた。
その中心に立っているのは紛れもなく俺で涙腺が刺激される。本当はこんなに泣くことはないのに。それを誤魔化すように俺は上を向いて生徒達に声をかける。
「俺は腹が減った。一緒に行くやつはいるか?」
「はいはーい!ヒマワリ行く!」
「私もお供します」
「あたし、ハンバーグ食べたい!」
「やはり俺はカレーだな」
「たまには別の料理チャレンジしたらどうっすか?」
「何気にワタクシは全員で食べるのは初めてですわね」
「そういえばレオン族とヒマワリ族は歓迎会に参加できてなかったな。ならば今日は祝勝会といこう」
「……スペシャルガーリックライス肉を添えて。マヨネーズトッピング」
食堂にみんなで行くことが決まればすぐさま行動に移す。すると突然、誰が俺の車椅子を押すかで話し合いが始まった。
「あたしがやる!」
「先程私がやったので責任を持って押します!委員長なので!」
「いや、俺が押そう」
「ヒマワリやってみたい!」
「えー僕もシンリンさん押したいんすけど」
「あらワタクシも会話に混ぜてくださいまし」
「……やる」
「ならばジャンケンで決めるしかないな。買ったやつが先生族の車椅子を押して食堂に連れて行く権利が得られる」
「「「受けて立つ!!」」」
「お、おい……」
車椅子ごときで燃え上がる生徒達に俺の顔は段々引き攣っていく。しかし止めるつもりはなかった。1秒後、生徒達がジャンケンの手を出す。勝ったのは…………。
ーーーーーー
ここは崩れた廃墟。以前は小学校として使われていたらしい。しかし今はカゲルのせいで誰も寄り付かない場所となってしまった。
そんな小学校の一室で1匹のカゲルは何かを食べている。近くには人間の洋服が散らばっていた。
「美味だ。…それで?回収は?」
「はっ、兄上。ヒバナ兄様の心臓はこちらです」
「ご苦労」
「あいつ喋るだけ喋ってやられてやんの。高いのは自尊心だけで戦闘力はイマイチだね」
「それでも役目は果たした」
「ヒバくんに役目なんてあったの?シンリン兄ちゃん殺すだけじゃなくて?」
食事が終わったカゲルの他に女声をしたカゲルが1匹。そしてだらけるように机に足を伸ばすカゲルが1匹。合計3匹のカゲルは自分の意思を持ち人間の言葉をスラスラと喋っている。
「シンリン様の弱点がわかった」
「弱点、でしょうか?」
「シンリン様はあのガキ達を大層可愛がっている。カムイ王都の民よりも。…我らよりも」
「苛立つなぁ。シンリン兄ちゃんはヒバくんの存在すら知らなかったんだぜ?それなのにあんなガキ達に愛情注いでやがる」
「ごもっともです。ということは、シンリン兄様が愛する子供達を使うのですか?」
「それも作戦の1つに入れてある。しかし今は……」
食事をしていたカゲルは女声のカゲルからヒバナの心臓と呼ばれるものを掴むと3等分に引き裂く。それを他の2匹に投げて自分の分を天へと掲げた。
「鮮度が良いうちに頂こう。これでヒバナも我らと一緒だ」
「これであいつの黒煙が使えるのかぁ」
「ヒバナ兄様の力。確かに受け取りました」
「これを食べたらしばらくは動けないだろう。でも今は時を待て。頂点が砕かれた討伐アカデミーは自由に動くことはできまい」
「シンリン兄ちゃんの死のために」
「私達の存在意義のために」
「カムイ王都の魂よ」
「「「頂きます」」」
ヒバナの心臓を喰らった3匹のカゲルはうめき声を上げる。しかしカゲル達は笑っていた。それは誰かを憎しむような笑顔を見せていた。
「でも共有者は絞った方がオススメですわ。今回の件でAクラスと他クラスの溝が浅くなったものの、先生がカゲルに関わっているとなればまた変な目を向けられるはず」
「先生大丈夫だよ!ヒマワリ達が守ってあげる!」
「お前達…」
Aクラスの生徒達が全員思うことは同じようで決意をしたような目で俺を見た。誰も目を逸らさずに心に火を灯している。そんな生徒達に囲まれた俺の頬には涙が流れた。
「シンリン先生!?」
「何で泣いているの!?もしかしてお腹すいちゃった!?」
「誰だ!先生泣かせ奴!」
「……最初に言ったのはカナト」
「えっ?でも皆さんも続けて同じようなこと言ったっすよね?」
「ハハッ、なら俺達全員が先生族を泣かせてしまったな」
「これで涙を拭いてくれ」
「あらハルサキ。準備がいいこと」
俺はハルサキから手渡された布で涙を拭く。自然と流れる涙は止まることなく、どれだけ自分が怖がっていたのかを物語っていた。
もし生徒達に拒絶されてしまったらどうしよう。その前に信じてもらえずに流されてしまうかもしれない。そんな不安が知らず知らずのうちに積もっていたようだ。しかし無用な心配だった。
こいつらが仲間を拒絶することなんてあり得ないし、真剣に話せばちゃんと聞いてくれる。一瞬でもそのことを忘れてしまった俺が恥ずかしい。
「ありがとう。お前達」
まだ少し滲む視界でAクラスの生徒達を見れば笑っている。過去に誰も守れなかった俺がこんなに幸せな空間にいて良いのだろうか。
最初は嫌われようとするために動いていたのにいつの間にか生徒達のために戦いたいと思うようになった。こいつらを知れば知るほどもっと一緒に居たくなる。こんな気持ちは初めてだ。
俺は車椅子に座ったまま再度頭を下げる。今から言うのは偽りのない誓いだ。
「これからも、Aクラスの指導者としてよろしく頼む」
その瞬間、生徒達は椅子から立ち上がって俺の近くにくる。抱きつく生徒も居れば優しい目をして頷く生徒も居て、教室内は幸福感に満ち溢れた。
その中心に立っているのは紛れもなく俺で涙腺が刺激される。本当はこんなに泣くことはないのに。それを誤魔化すように俺は上を向いて生徒達に声をかける。
「俺は腹が減った。一緒に行くやつはいるか?」
「はいはーい!ヒマワリ行く!」
「私もお供します」
「あたし、ハンバーグ食べたい!」
「やはり俺はカレーだな」
「たまには別の料理チャレンジしたらどうっすか?」
「何気にワタクシは全員で食べるのは初めてですわね」
「そういえばレオン族とヒマワリ族は歓迎会に参加できてなかったな。ならば今日は祝勝会といこう」
「……スペシャルガーリックライス肉を添えて。マヨネーズトッピング」
食堂にみんなで行くことが決まればすぐさま行動に移す。すると突然、誰が俺の車椅子を押すかで話し合いが始まった。
「あたしがやる!」
「先程私がやったので責任を持って押します!委員長なので!」
「いや、俺が押そう」
「ヒマワリやってみたい!」
「えー僕もシンリンさん押したいんすけど」
「あらワタクシも会話に混ぜてくださいまし」
「……やる」
「ならばジャンケンで決めるしかないな。買ったやつが先生族の車椅子を押して食堂に連れて行く権利が得られる」
「「「受けて立つ!!」」」
「お、おい……」
車椅子ごときで燃え上がる生徒達に俺の顔は段々引き攣っていく。しかし止めるつもりはなかった。1秒後、生徒達がジャンケンの手を出す。勝ったのは…………。
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ここは崩れた廃墟。以前は小学校として使われていたらしい。しかし今はカゲルのせいで誰も寄り付かない場所となってしまった。
そんな小学校の一室で1匹のカゲルは何かを食べている。近くには人間の洋服が散らばっていた。
「美味だ。…それで?回収は?」
「はっ、兄上。ヒバナ兄様の心臓はこちらです」
「ご苦労」
「あいつ喋るだけ喋ってやられてやんの。高いのは自尊心だけで戦闘力はイマイチだね」
「それでも役目は果たした」
「ヒバくんに役目なんてあったの?シンリン兄ちゃん殺すだけじゃなくて?」
食事が終わったカゲルの他に女声をしたカゲルが1匹。そしてだらけるように机に足を伸ばすカゲルが1匹。合計3匹のカゲルは自分の意思を持ち人間の言葉をスラスラと喋っている。
「シンリン様の弱点がわかった」
「弱点、でしょうか?」
「シンリン様はあのガキ達を大層可愛がっている。カムイ王都の民よりも。…我らよりも」
「苛立つなぁ。シンリン兄ちゃんはヒバくんの存在すら知らなかったんだぜ?それなのにあんなガキ達に愛情注いでやがる」
「ごもっともです。ということは、シンリン兄様が愛する子供達を使うのですか?」
「それも作戦の1つに入れてある。しかし今は……」
食事をしていたカゲルは女声のカゲルからヒバナの心臓と呼ばれるものを掴むと3等分に引き裂く。それを他の2匹に投げて自分の分を天へと掲げた。
「鮮度が良いうちに頂こう。これでヒバナも我らと一緒だ」
「これであいつの黒煙が使えるのかぁ」
「ヒバナ兄様の力。確かに受け取りました」
「これを食べたらしばらくは動けないだろう。でも今は時を待て。頂点が砕かれた討伐アカデミーは自由に動くことはできまい」
「シンリン兄ちゃんの死のために」
「私達の存在意義のために」
「カムイ王都の魂よ」
「「「頂きます」」」
ヒバナの心臓を喰らった3匹のカゲルはうめき声を上げる。しかしカゲル達は笑っていた。それは誰かを憎しむような笑顔を見せていた。
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