上 下
75 / 77
7章 反社会政府編 〜決戦〜

75話 終演

しおりを挟む
綺麗に消滅していくヒバナ。本当に終わったのだと俺は膝から力が抜けて立てなくなる。隣にいたレオンは咄嗟に手を伸ばして支えてくれた。


「先生、大丈夫かしら?」

「すまない…力が全く入らないし、体が痛い」

「そんな姿で走るからよ。移動はカムラにでも任せましょう」


反社会政府の屋根に座り込んだ俺はボーッと空を見る。黒煙は既に無くなっていて、曇り空が広がっていた。


「「「先生!!」」」

「あっ」


下から声が聞こえたと思ったら特刀束縛の縄が屋根に絡みついて生徒達が登って来る。戦ったAクラスの生徒達全員が俺に駆け寄って来た。


「お前達…」

「先生ぇ!」

「うわっ、ヒマワリ!?そんな勢いよく来たら…」

「こらこらダメですわよ」

「むぐぅ」


リンガネに抱き抱えられたヒマワリは屋根に足を付けたと同時に俺の元へ走る。しかし激突する前にレオンが間に入って止めてくれた。

一度立ち止まったヒマワリは深呼吸をしてから俺に抱きつく。小さな体がすっぽりと俺の中に収まった。


「ヒマワリ族が先生のことを知らせてくれたんだ。あの黒煙の中を走ってちょうど本拠地から出てきた俺達と合流して助けられた。奇跡が重なったとしか言えないな」

「そうそう!それに作戦は委員長が考えたんだぜ!一方的戦うよりも策を立てたほうがいいってな」

「ああ。流石アサガイ委員長だ。俺の作戦よりも遥かに勝てる確率は高いし考える時間も早い」

「そ、そんな!自信があったわけじゃないんです。皆さんの力が合わさった結果なので」

「……照れてる」

「本当アサガイちゃんは相変わらずっすね。もっとリンガネさんみたいにドヤ顔すれば良いのに」

「あ?カナト。どういうことだよ」


いつものAクラスの雰囲気に俺は安心して口角を上げた。姿を見れば傷ひとつない奴なんて居ない。何処かしら怪我をして制服もボロボロだ。それでもAクラスは笑っていた。


「とりあえず、シンリン先生。状況を報告します」

「ああ、聞こう」


するとアサガイは真面目な顔をして俺に向き合う。簡易施設で寝て、ここに来た途端に黒煙の中に閉じ込められていたので全く反社会政府討伐の結果を知らない。ヒマワリを離してレオンに背中を支えてもらいながらアサガイを見た。


「反社会政府の本拠地にいた崇拝者や関係者は1人残らず確保しました。育成されたカゲルも保管されていたカゲルも隅々まで確認して全討伐出来たと通達されています。ただアカデミー側の負傷者や死亡者が大勢いて完全勝利とは言えません。その、リコン学長も……」

「知ってる。あの人は最後、学長として生徒を守ったんだ。尊敬に値する」

「はい」

「……帰るぞ。俺はお前達に話したいことがあるんだ。バカにしても構わない。信じてもらわなくても良い。ただ聞いて欲しい」

「わかりました。皆さん、帰りましょう」


俺がそう言えばアサガイは頷いて帰還の指示を出す。ある生徒は特刀を収納してまたある生徒は動けない奴を背負った。

Aクラスの生徒が1人も失われなかったのは本当に奇跡なのだろう。頭の中で響いてた声は洗脳が解けた今でも完全に聞こえなくなっていて、今はただ反社会政府本拠地を行き来する車の音だけが耳に入っていた。

考えることは沢山ある。しかし今は目の前に映るかけがえのない生徒達だけを見ていたかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

クラス転移で俺だけ勇者じゃないのだが!?~召喚した配下で国を建国~

かめ
ファンタジー
高校で授業を受けていた俺は、クラスメイト達と共に異世界のエルガレフト神国の神殿へと召喚された。 どうやら、俺とクラスメイトは魔王を倒すために異世界より召喚されたようだ。 だか、俺はクラスメイト達の中で、唯一勇者の称号がなかった。 俺を逆恨みするクラスのリーダー的存在である海堂の誘導もあり、俺はわずかな金銭を渡されて犯罪者として神殿より追放されてしまう。 だが、実は俺を異世界に救世主として招くために創世神が手引きを行った召喚であり、他のクラスメイト達は偶発的に巻き込まれてしまっただけの”おまけ”だったのだ。 真の勇者として神聖召喚魔術『 ホーリーサモン 』に目覚めた俺は、規格外の魔物や人物を次々に召喚し、世界を救うために強大な国を築いていく。 短編バージョン(1話2000字ほど)もありますので、1話が長いよー!って人はそちらで見ると良いかと思われます! 基本的にはなろうメインで連載しています!こっちは気が向いたらなのでもし良ければ、メインの方にも足を運んで頂けると喜びます! 左斜め下らへんにあるかめの登録コンテンツのところからとべます! Twitter始めました〜良かったらフォローお願いします! https://twitter.com/kame_narou/status/1187022015540031489?s=19

保健室の先生に召使にされた僕はお悩み解決を通して学校中の女子たちと仲良くなっていた

結城 刹那
恋愛
 最上 文也(もがみ ふみや)は睡眠に難を抱えていた。  高校の入学式。文也は眠気に勝てず保健室で休むことになる。  保健室に来たが誰もいなかったため、無断でベッドを使わせてもらった。寝転がっている最中、保健室の先生である四宮 悠(しのみや ゆう)がやって来た。彼女は誰もいないと分かると人知れずエロゲを始めたのだった。  文也は美女である四宮先生の秘密を知った。本来なら秘密を知って卑猥なことをする展開だが、それが仇となって彼女の召使にされることとなる。

強さがすべての魔法学園の最下位クズ貴族に転生した俺、死にたくないからゲーム知識でランキング1位を目指したら、なぜか最強ハーレムの主となった!

こはるんるん
ファンタジー
気づいたら大好きなゲームで俺の大嫌いだったキャラ、ヴァイスに転生してしまっていた。 ヴァイスは伯爵家の跡取り息子だったが、太りやすくなる外れスキル【超重量】を授かったせいで腐り果て、全ヒロインから嫌われるセクハラ野郎と化した。 最終的には魔族に闇堕ちして、勇者に成敗されるのだ。 だが、俺は知っていた。 魔族と化したヴァイスが、作中最強クラスのキャラだったことを。 外れスキル【超重量】の真の力を。 俺は思う。 【超重量】を使って勇者の王女救出イベントを奪えば、殺されなくて済むんじゃないか? 俺は悪行をやめてゲーム知識を駆使して、強さがすべての魔法学園で1位を目指す。

〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。

藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。 学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。 入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。 その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。 ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

処理中です...