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6章 反社会政府編 〜それぞれの戦い〜
57話 強いクラス 【レオンとカムラ班】
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「わざとぶつけるしかないか…」
カムラはカゲルの連携に違和感を持ち、特刀で斬るのではなくわざと壁にぶつけるという手段を選ぶ。
4体いるうちの2体が線になって重なり合う瞬間。
カムラは自分の体格を活かしたタックルでカゲルにぶつかった。19歳とは思えない体をしているカムラにとって突き飛ばすのは簡単なこと。多少カゲルの硬さに顔を歪ませるが、見事壁へと飛ばす。
「どうだ!?」
「カムラ後ろ!!」
確かに2体とも廊下の壁へとやった。それなのにレオンが出す声の通り、突き飛ばした後ろの1体がカムラの背後に回っていた。
「グッ…!」
「カムラ!」
気を失わせるようにカムラの頭上へカゲルの鉄槌が落ちる。異次元の速さに追いつけなかったカムラの視界は白黒に染まり、やがて意識を手放した。レオンはすぐさまカムラに近寄り守るように抱き抱える。
「血が出てる…」
絶体絶命と言えるだろう。2人でやっとのこと対応出来ていたのに、相棒が気を失って行動不能状態。おまけに打たれた所からは血が出ていて顔に赤を滴らせていた。
「ワタクシが1人で対処できる相手ではない。それにカムラと離れたらこいつらが何するかわからないし……。標的はワタクシのみではないですわ」
瞬時に考えている間もカゲルは様子を伺いながら一歩一歩2人に近づいていく。
「こんな時、ヒマワリなら…先生なら…」
レオンの脳内には自分を救ってくれた人と、頼もしく尊敬する人の顔が思い浮かぶ。するとあの時かけてくれた言葉がと共に不器用な笑顔が彼女の中にこだました。
『お前にも約束しよう。俺はAクラスのために刀を使って守る。あの時レオンが俺に言ってくれた言葉を借りるぞ。何かあったら俺の名前を呼んでくれ』
「っ、シンリン先生…」
その名前を小さく呟いた瞬間、レオンの体は力が抜けたように軽くなる。それと同時に今なら何処へだって走れそうなくらいに心が熱くなった。
不思議な現象だ。彼の名を呼んだだけなのに。まるで波が起こらない湖に1滴の雫が落ちて自分を奮い立たせるようだった。自然と口角が上がってレオンは立ち上がる。
「頼るのよ、連れて行くのよ。あの人がワタクシにそうさせたみたいに」
一回り大きいカムラを軽々と持ち上げたレオンは軽く息を吐くと逃げるようにカゲル達から離れて行く。それを見ればカゲルだって黙っていられない。
全速力で追いかけてきた。しかしレオンのスピードは加速する。カムラを持っているのにも関わらず、地を這う獣のように廊下を走った。
「不思議ね…。風になった気分だわ」
一気に廊下を走り抜けたレオンはすぐさま後方支援の生徒を見つける。先程カムラが飛ばした奴らだ。カゲルを連れてきたレオンを見て大きく目が開いている。なんで連れてきたと言わんばかりに睨みつけていた。
「貴方達に託すわ!そしたらお逃げなさい!!」
受け取ってくれるのを信じたレオンがカムラを投げる。そしてまたカゲル達と向かい合う。
「ここなら狭くないわ。パーティ会場から逃げるのは癪だけど……。自分が不利になる状況で絶対戦わなきゃいけないなんて法律はありませんわ!」
せめて時間を稼いで戦ってくれる人を待つ。それが今すべき事だとレオンは思っていた。自分は脚力しか武器はない。特刀はただのお守り代わりと化している。それでも刀を抜かなければならないのだ。
「ワタクシは先生を助ける刀なのですわ!生き残って、先生を助けに行く!」
地下へと落とされたシンリンは現在どうしているかわからない。でも死ねない理由としては十分だった。
駆け出すレオン。そんな勇ましい姿を目の当たりにしたサポートの生徒の瞳に何かが宿る。「逃げろ」そうあのAクラスの変人には言われた。
「うっ……う…」
他クラスの生徒の腕には血を流すカムラが横たわっている。
「俺らはサポートだ…」
「……でも、でも」
「っ、私やる…!」
「ああ、僕も。あんなの見せられて大人しく下がれない!変わるんだ!僕達も!」
アカデミーの生徒達は何かしらの過去があってこの場所へ来ている。サポート役の生徒達にだって当たり前のようにあったのだ。辛い過去が。
しかしそれは腕の中にいるカムラも、目の前で戦っているレオンも同じ。苦しくて痛いはずなのにAクラスは前を向いていた。『不幸クラス』なんて呼んでいたのが馬鹿馬鹿しくなってくる。
「あいつらは不幸なんかじゃなかった。確かに変わっている部分は多い。それでも、誰よりも強いんだ。Aクラスの生徒は…!」
強いカゲルを討伐する任務や、ややこしい対応をしなければいけない任務。そして現場で前線を走る任務。面倒くさく辛い任務を請け負うのは変人が集まるからだと思っていた。
普通にしていればAクラスに移動しなくて済む。だから大人しくしていろなんて噂が広まったのはいつだっただろうか。
Aクラスに入るやつは変人。そんな概念を今、ここにいるサポート役の生徒達は破り捨てる。
「強い奴が、Aクラスに行けるんだ!」
お互いに目を合わせ頷いた生徒は1人を残して抜刀する。残った生徒がカムラを背負い、入り口に向かって走り出そうとした。
「……水」
「えっ?」
「水、だ…。池の、水…をかけろ…」
「おい!起きたのか!?」
「あの、カゲルには、静電気のような、ものが走っている…。それが、お互いにぶつからない理由だ…」
カムラはカゲルの連携に違和感を持ち、特刀で斬るのではなくわざと壁にぶつけるという手段を選ぶ。
4体いるうちの2体が線になって重なり合う瞬間。
カムラは自分の体格を活かしたタックルでカゲルにぶつかった。19歳とは思えない体をしているカムラにとって突き飛ばすのは簡単なこと。多少カゲルの硬さに顔を歪ませるが、見事壁へと飛ばす。
「どうだ!?」
「カムラ後ろ!!」
確かに2体とも廊下の壁へとやった。それなのにレオンが出す声の通り、突き飛ばした後ろの1体がカムラの背後に回っていた。
「グッ…!」
「カムラ!」
気を失わせるようにカムラの頭上へカゲルの鉄槌が落ちる。異次元の速さに追いつけなかったカムラの視界は白黒に染まり、やがて意識を手放した。レオンはすぐさまカムラに近寄り守るように抱き抱える。
「血が出てる…」
絶体絶命と言えるだろう。2人でやっとのこと対応出来ていたのに、相棒が気を失って行動不能状態。おまけに打たれた所からは血が出ていて顔に赤を滴らせていた。
「ワタクシが1人で対処できる相手ではない。それにカムラと離れたらこいつらが何するかわからないし……。標的はワタクシのみではないですわ」
瞬時に考えている間もカゲルは様子を伺いながら一歩一歩2人に近づいていく。
「こんな時、ヒマワリなら…先生なら…」
レオンの脳内には自分を救ってくれた人と、頼もしく尊敬する人の顔が思い浮かぶ。するとあの時かけてくれた言葉がと共に不器用な笑顔が彼女の中にこだました。
『お前にも約束しよう。俺はAクラスのために刀を使って守る。あの時レオンが俺に言ってくれた言葉を借りるぞ。何かあったら俺の名前を呼んでくれ』
「っ、シンリン先生…」
その名前を小さく呟いた瞬間、レオンの体は力が抜けたように軽くなる。それと同時に今なら何処へだって走れそうなくらいに心が熱くなった。
不思議な現象だ。彼の名を呼んだだけなのに。まるで波が起こらない湖に1滴の雫が落ちて自分を奮い立たせるようだった。自然と口角が上がってレオンは立ち上がる。
「頼るのよ、連れて行くのよ。あの人がワタクシにそうさせたみたいに」
一回り大きいカムラを軽々と持ち上げたレオンは軽く息を吐くと逃げるようにカゲル達から離れて行く。それを見ればカゲルだって黙っていられない。
全速力で追いかけてきた。しかしレオンのスピードは加速する。カムラを持っているのにも関わらず、地を這う獣のように廊下を走った。
「不思議ね…。風になった気分だわ」
一気に廊下を走り抜けたレオンはすぐさま後方支援の生徒を見つける。先程カムラが飛ばした奴らだ。カゲルを連れてきたレオンを見て大きく目が開いている。なんで連れてきたと言わんばかりに睨みつけていた。
「貴方達に託すわ!そしたらお逃げなさい!!」
受け取ってくれるのを信じたレオンがカムラを投げる。そしてまたカゲル達と向かい合う。
「ここなら狭くないわ。パーティ会場から逃げるのは癪だけど……。自分が不利になる状況で絶対戦わなきゃいけないなんて法律はありませんわ!」
せめて時間を稼いで戦ってくれる人を待つ。それが今すべき事だとレオンは思っていた。自分は脚力しか武器はない。特刀はただのお守り代わりと化している。それでも刀を抜かなければならないのだ。
「ワタクシは先生を助ける刀なのですわ!生き残って、先生を助けに行く!」
地下へと落とされたシンリンは現在どうしているかわからない。でも死ねない理由としては十分だった。
駆け出すレオン。そんな勇ましい姿を目の当たりにしたサポートの生徒の瞳に何かが宿る。「逃げろ」そうあのAクラスの変人には言われた。
「うっ……う…」
他クラスの生徒の腕には血を流すカムラが横たわっている。
「俺らはサポートだ…」
「……でも、でも」
「っ、私やる…!」
「ああ、僕も。あんなの見せられて大人しく下がれない!変わるんだ!僕達も!」
アカデミーの生徒達は何かしらの過去があってこの場所へ来ている。サポート役の生徒達にだって当たり前のようにあったのだ。辛い過去が。
しかしそれは腕の中にいるカムラも、目の前で戦っているレオンも同じ。苦しくて痛いはずなのにAクラスは前を向いていた。『不幸クラス』なんて呼んでいたのが馬鹿馬鹿しくなってくる。
「あいつらは不幸なんかじゃなかった。確かに変わっている部分は多い。それでも、誰よりも強いんだ。Aクラスの生徒は…!」
強いカゲルを討伐する任務や、ややこしい対応をしなければいけない任務。そして現場で前線を走る任務。面倒くさく辛い任務を請け負うのは変人が集まるからだと思っていた。
普通にしていればAクラスに移動しなくて済む。だから大人しくしていろなんて噂が広まったのはいつだっただろうか。
Aクラスに入るやつは変人。そんな概念を今、ここにいるサポート役の生徒達は破り捨てる。
「強い奴が、Aクラスに行けるんだ!」
お互いに目を合わせ頷いた生徒は1人を残して抜刀する。残った生徒がカムラを背負い、入り口に向かって走り出そうとした。
「……水」
「えっ?」
「水、だ…。池の、水…をかけろ…」
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