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5章 反社会政府編 〜差し伸べる手〜
44話 仲直り
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「その人は今…」
「ご心配なくて。ちゃんと生きていますわ。現在は何をしているかわかりませんが…。ワタクシはその話を聞いて深く苦しみました。加害者のくせして」
レオンの声は低くなっていく。相当苦しんだのだろう。たぶん、今も。加害者のくせして苦しんだのは俺も同じだった。痛いほど気持ちがわかってしまう。
ただお互いに同じ経験をしていてもレオンが俺を許せなかったのはありのままの自分を受け入れてくれたヒマワリが誰よりも大切だったのだ。そう理解した俺は自分の手を強く握った。
「でもそのおかげで気付けたんですわ。ワタクシもその人のようになりたかったんだって。単純な八つ当たりから始まった悲劇がきっかけとなった。先生が先程ヒマワリに言った言葉を聞いて、忘れていた原点を思い出しましたわ」
全てを言い終わったレオンはいつも通りの声に戻る。貼り付けた笑顔は変わらずに俺に向けられていた。ヒマワリの前でもそんな顔をしているのかと気になってしまう。
けれども俺がレオンの貼り付けた笑顔を取ってしまったら、きっと彼は…彼女は苦しそうな表情だけ残るはずだ。嘘の笑顔を取ってしまうくらいなら余計なことは何も言わずにただ見守っていれば良い。
レオンを本当に笑わせるのは俺の役目ではなさそうだから。そう感じた俺は握っていた手を軽く開いてヒマワリを撫でた時のようにレオンの頭に手を乗せた。
「お前にも約束しよう。俺はAクラスのために刀を使って守る。あの時レオンが俺に言ってくれた言葉を借りるぞ。何かあったら俺の名前を呼んでくれ」
「……!」
『何かあったらワタクシを呼んでくださいまし。すぐに駆けつけて救出してみせますわ』
脳内で響くレオンの頼もしい言葉は今でも残っている。俺の誓いを聞いたレオンは目を細めて笑った。
「ならワタクシは先生を助ける刀になりますわ」
「心強い」
レオンに乗せた手を下ろした俺は強く頷く。もう、俺達の中心に出来ていた溝は埋まったようだ。自然と口角が上がる俺はレオンに背を向けてアカデミーに戻ろうと廊下を歩き始める。
「ヒマワリに顔を見せてやれ。それと、あまり菓子を差し入れしすぎるなよ?」
「……先生」
「何だ?」
「山崎麗音(やまざき れおん)。ワタクシの名前ですわ」
「何故急に…」
「ヒマワリが言っていたの。あの子の姓名を先生に伝えたらとても嬉しそうな顔をしてくれたって。ふふっ、今も嬉しそう。言った甲斐がありましたわ」
「そんなに顔を出てたか?」
「わかりやすさではAクラスで1番ですわ。それじゃあ」
そう言うとレオンはヒマワリの病室に入っていく。すぐさまヒマワリの元気な声が俺の耳まで届いた。山崎麗音か…。Aクラス生徒の姓名を2人も知れた俺は確かに嬉しさがあった。
「良い名前だ」
本人には聞こえない声で呟いてまた歩き出す。心に絡まっていた鎖が外れたような気がした。アカデミーに帰ったらリンガネの相手でもしてやろうか。
足取りも自然と軽くなっていた俺はゆっくり背中を伸ばしながら待たせている車に向かって行った。
「ご心配なくて。ちゃんと生きていますわ。現在は何をしているかわかりませんが…。ワタクシはその話を聞いて深く苦しみました。加害者のくせして」
レオンの声は低くなっていく。相当苦しんだのだろう。たぶん、今も。加害者のくせして苦しんだのは俺も同じだった。痛いほど気持ちがわかってしまう。
ただお互いに同じ経験をしていてもレオンが俺を許せなかったのはありのままの自分を受け入れてくれたヒマワリが誰よりも大切だったのだ。そう理解した俺は自分の手を強く握った。
「でもそのおかげで気付けたんですわ。ワタクシもその人のようになりたかったんだって。単純な八つ当たりから始まった悲劇がきっかけとなった。先生が先程ヒマワリに言った言葉を聞いて、忘れていた原点を思い出しましたわ」
全てを言い終わったレオンはいつも通りの声に戻る。貼り付けた笑顔は変わらずに俺に向けられていた。ヒマワリの前でもそんな顔をしているのかと気になってしまう。
けれども俺がレオンの貼り付けた笑顔を取ってしまったら、きっと彼は…彼女は苦しそうな表情だけ残るはずだ。嘘の笑顔を取ってしまうくらいなら余計なことは何も言わずにただ見守っていれば良い。
レオンを本当に笑わせるのは俺の役目ではなさそうだから。そう感じた俺は握っていた手を軽く開いてヒマワリを撫でた時のようにレオンの頭に手を乗せた。
「お前にも約束しよう。俺はAクラスのために刀を使って守る。あの時レオンが俺に言ってくれた言葉を借りるぞ。何かあったら俺の名前を呼んでくれ」
「……!」
『何かあったらワタクシを呼んでくださいまし。すぐに駆けつけて救出してみせますわ』
脳内で響くレオンの頼もしい言葉は今でも残っている。俺の誓いを聞いたレオンは目を細めて笑った。
「ならワタクシは先生を助ける刀になりますわ」
「心強い」
レオンに乗せた手を下ろした俺は強く頷く。もう、俺達の中心に出来ていた溝は埋まったようだ。自然と口角が上がる俺はレオンに背を向けてアカデミーに戻ろうと廊下を歩き始める。
「ヒマワリに顔を見せてやれ。それと、あまり菓子を差し入れしすぎるなよ?」
「……先生」
「何だ?」
「山崎麗音(やまざき れおん)。ワタクシの名前ですわ」
「何故急に…」
「ヒマワリが言っていたの。あの子の姓名を先生に伝えたらとても嬉しそうな顔をしてくれたって。ふふっ、今も嬉しそう。言った甲斐がありましたわ」
「そんなに顔を出てたか?」
「わかりやすさではAクラスで1番ですわ。それじゃあ」
そう言うとレオンはヒマワリの病室に入っていく。すぐさまヒマワリの元気な声が俺の耳まで届いた。山崎麗音か…。Aクラス生徒の姓名を2人も知れた俺は確かに嬉しさがあった。
「良い名前だ」
本人には聞こえない声で呟いてまた歩き出す。心に絡まっていた鎖が外れたような気がした。アカデミーに帰ったらリンガネの相手でもしてやろうか。
足取りも自然と軽くなっていた俺はゆっくり背中を伸ばしながら待たせている車に向かって行った。
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