34 / 77
3章 反社会政府編 〜後悔〜
34話 BL騒動
しおりを挟む
全てを俺に話したことによって、より表情が鮮やかになっているカナト。涙の跡が頬に残っているが目はもう前を見ていた。俺の手の震えも徐々に収まり、手のひらには爪の食い込みがくっきりと残っている。
「シンリンさんに話したら結構スッキリしたっす。授業を終わりにした甲斐がありましたね」
「まさか恐怖で泣いているとは思わなかった。勝手に脇腹の痛みだと…」
「でもあれは強烈っすよ。流石教師です。本当、泣くなんてかっこ悪い」
「絶望して何も感じられなくなるよりは良いだろう」
「えっ」
俺はヒマワリの左腕が千切れた時に泣くことさえ出来なかった。俺が何もしなくても勝手に時が過ぎていき、他の生徒達が勝手にカゲルを討伐してくれたのだ。
一切動けなかった俺と使われなかった特刀。その後悔が頭から離れなくて正直竹刀を持つことすら億劫になっていた。でもカナトと手合わせしてわかってしまう。俺が今刀を握る理由を。
「とりあえず本当に痣が無いか確認させてもらう」
「ちょっ、どういう流れ!?」
立ち上がった俺はカナトが座る長椅子の前に来るとそのまましゃがんで彼の制服に手を伸ばす。慌ててカナトはその手を掴むが俺の方が力では勝っているので片手で退け、もう片手で服を勢いよく捲った。
「少し赤くなってあるが、青痣にはなってないな」
「痣にはなってないって言ったっすよね!?」
「でも確認は必要だ。手を出してしまった俺としては…」
すると急に医務室の扉が開く。それと同時に怒っている声が耳へと痛いほど響いた。
「ま~~たお前か!?シンリン!本当に我を困らせる天才じゃな!全く!」
「シンリン先生お待たせしました。ちょうど教室に戻ろうと職員室前を通ったセンリ先生がいらっしゃいましたので連れて来て……え?」
入って来たのはうるさいセンリと心配するアサガイ委員長。そんな2人は俺がカナトの腕を押さえつけて制服を捲っている姿を見て硬直した。カナトは俺の目を合わせると慌てた様子で2人に弁解する。
「これは違くて…!」
「BL!?BLじゃ!ボーイズラブ!!」
「は?何を言ってる?」
「アサガイ!お前は帰っておれ!真面目ちゃんには刺激が強すぎる!」
「えっ、あの、えっ?」
「我は壁じゃ。さぁ続けてくれ」
「何をだ?」
「BLをじゃ」
「さっきから何を興奮している?来てもらって悪いが手当は必要なかったみたいだ。今確認して痣は出来てなかった」
「BL……BL…我は壁…」
「話が通じてないっすよ!」
「びーえる?英語ならハルサキさんあたりなら知ってるかも…?」
カナトの言う通り話が全く通じてない。センリは鼻息を荒げて目が大きく開き俺達を見ている。アサガイ委員長はセンリの言葉を理解しようと首を傾げながら医務室を出て行った。
俺がカナトの服から手を離して興奮するセンリに近づき両頬を最大限伸ばせば、目が覚めたように奇声を出し始める。そんな様子を見たカナトは面白おかしく少年のように笑っていた。
「のびゃすのじゃない!」
「目覚ましだ」
しかしこの後、カナトの机と椅子を持ちながらAクラスの教室に戻れば顔を真っ青にしたハルサキに助けを求められることになる。その隣には真剣にセンリが出した単語について尋ねるアサガイ委員長がいる事を今の俺は知らなかった。
「シンリンさんに話したら結構スッキリしたっす。授業を終わりにした甲斐がありましたね」
「まさか恐怖で泣いているとは思わなかった。勝手に脇腹の痛みだと…」
「でもあれは強烈っすよ。流石教師です。本当、泣くなんてかっこ悪い」
「絶望して何も感じられなくなるよりは良いだろう」
「えっ」
俺はヒマワリの左腕が千切れた時に泣くことさえ出来なかった。俺が何もしなくても勝手に時が過ぎていき、他の生徒達が勝手にカゲルを討伐してくれたのだ。
一切動けなかった俺と使われなかった特刀。その後悔が頭から離れなくて正直竹刀を持つことすら億劫になっていた。でもカナトと手合わせしてわかってしまう。俺が今刀を握る理由を。
「とりあえず本当に痣が無いか確認させてもらう」
「ちょっ、どういう流れ!?」
立ち上がった俺はカナトが座る長椅子の前に来るとそのまましゃがんで彼の制服に手を伸ばす。慌ててカナトはその手を掴むが俺の方が力では勝っているので片手で退け、もう片手で服を勢いよく捲った。
「少し赤くなってあるが、青痣にはなってないな」
「痣にはなってないって言ったっすよね!?」
「でも確認は必要だ。手を出してしまった俺としては…」
すると急に医務室の扉が開く。それと同時に怒っている声が耳へと痛いほど響いた。
「ま~~たお前か!?シンリン!本当に我を困らせる天才じゃな!全く!」
「シンリン先生お待たせしました。ちょうど教室に戻ろうと職員室前を通ったセンリ先生がいらっしゃいましたので連れて来て……え?」
入って来たのはうるさいセンリと心配するアサガイ委員長。そんな2人は俺がカナトの腕を押さえつけて制服を捲っている姿を見て硬直した。カナトは俺の目を合わせると慌てた様子で2人に弁解する。
「これは違くて…!」
「BL!?BLじゃ!ボーイズラブ!!」
「は?何を言ってる?」
「アサガイ!お前は帰っておれ!真面目ちゃんには刺激が強すぎる!」
「えっ、あの、えっ?」
「我は壁じゃ。さぁ続けてくれ」
「何をだ?」
「BLをじゃ」
「さっきから何を興奮している?来てもらって悪いが手当は必要なかったみたいだ。今確認して痣は出来てなかった」
「BL……BL…我は壁…」
「話が通じてないっすよ!」
「びーえる?英語ならハルサキさんあたりなら知ってるかも…?」
カナトの言う通り話が全く通じてない。センリは鼻息を荒げて目が大きく開き俺達を見ている。アサガイ委員長はセンリの言葉を理解しようと首を傾げながら医務室を出て行った。
俺がカナトの服から手を離して興奮するセンリに近づき両頬を最大限伸ばせば、目が覚めたように奇声を出し始める。そんな様子を見たカナトは面白おかしく少年のように笑っていた。
「のびゃすのじゃない!」
「目覚ましだ」
しかしこの後、カナトの机と椅子を持ちながらAクラスの教室に戻れば顔を真っ青にしたハルサキに助けを求められることになる。その隣には真剣にセンリが出した単語について尋ねるアサガイ委員長がいる事を今の俺は知らなかった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説


先生と私。
狭山雪菜
恋愛
茂木結菜(もぎ ゆいな)は、高校3年生。1年の時から化学の教師林田信太郎(はやしだ しんたろう)に恋をしている。なんとか彼に自分を見てもらおうと、学級委員になったり、苦手な化学の授業を選択していた。
3年生になった時に、彼が担任の先生になった事で嬉しくて、勢い余って告白したのだが…
全編甘々を予定しております。
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
火駆闘戯 第一部
高谷 ゆうと
ファンタジー
焼暴士と呼ばれる男たちがいた。
それは、自らの身体ひとつで、人間を脅かす炎と闘う者たちの総称である。
人間と対立する種族、「ラヨル」の民は、その長であるマユルを筆頭に、度々人間たちに奇襲を仕掛けてきていた。「ノーラ」と呼ばれる、ラヨルたちの操る邪術で繰り出される炎は、水では消えず、これまでに数多の人間が犠牲になっていった。人々がノーラに対抗すべく生み出された「イョウラ」と名付けられた武術。それは、ノーラの炎を消すために必要な、人間の血液を流しながらでも、倒れることなく闘い続けられるように鍛え上げられた男たちが使う、ラヨルの民を倒すための唯一の方法であった。
焼暴士の見習い少年、タスクは、マユルが持つといわれている「イホミ・モトイニ」とよばれる何かを破壊すべく、日々の鍛錬をこなしていた。それを破壊すれば、ラヨルの民は、ノーラを使えなくなると言い伝えられているためだ。
タスクは、マユルと対峙するが、全く歯が立たず、命の危機にさらされることになる。己の無力さを痛感したその日、タスクの奇譚は、ゆっくりと幕を開けたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる