【完結】異世界先生 〜異世界で死んだ和風皇子は日本で先生となり平和へと導きます〜

雪村

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3章 反社会政府編 〜後悔〜

25話 不気味な笑顔

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車という金属の物体に乗せられて着いた先は薄暗い露店が並ぶ場所だった。普通ならこんな場所には来ないし行きたくもない。俺はしーとべるとと言われる紐を隣の席に座るヒマワリに外してもらって外へ出た。


「先生なんかご機嫌!車楽しかった?」

「興味深い乗り物だ。帰りも乗れるのだろう?」

「はい。でも任務の場所はここから少し先になので歩くことにもなりますけど」

「車に乗ったことないなんて相当な田舎だ。でも田舎の移動は車が必須とカムラが言ってた気がするが…」

「カムイ王都だ」


続いてアサガイ委員長、ハルサキが外に出てくる。残りの生徒達も他の車に乗って到着した。


「そんじゃぁ作戦はどうする?」

「先生族からは何かあるか?」

「作戦なんて立ててない。見つけたら斬るのみだ」

「……脳筋な考え方」

「高貴じゃないですわ」

「ならお前達に作戦はあるのか?」

「いつもアサガイ委員長かハルサキが指示してくれるんですの」


そういえば初めて会った時もアサガイ委員長を筆頭に動いていた。やはりあの人はAクラスの中心的な人物らしい。

しかし、そんなアサガイ委員長に頼りきって良いのか?俺はふと疑問に思う。そんな疑問を気にせずにアサガイ委員長は生徒と俺を集めて任務についての詳細を話し始めた。


「目的地はこの商店街の路地裏にあるビルになります。場合によっては商店街も戦場と化すでしょう。学長から送られてきた反社会政府派閥の数情報だと、およそ100人」

「こんな小さなビルに100人もいるのかよ」

「あくまで派閥に参加している人の人数です。今この付近にいる人の数は分かりませんが、一応頭に入れておいてください」

「聞きたいことがある」

「何ですか?シンリン先生」

「斬るのはカゲルだけか?その派閥に入っている人間はどうする」

「その人達は捕らえてください。決して斬ってはいけません。そのために今から班分けをしますね」


アサガイ委員長は大きめの黒い板を操作しながら説明してくれる。そして俺達の顔を見て班分けをした。


「私、レオンさん、ヒマワリさんは派閥に入っている人達を確保しましょう。残りのハルサキさん、リンガネさん、カムラさん、ミロクニさんはカゲルを討伐してください」

「俺は?」

「シンリン先生はビル内に被害者の方達が居ないかを調べて欲しいです。見つけ次第私達に引き渡して、それが終わったら討伐グループに参加…というのはどうでしょうか」

「構わん」

「ありがとうございます。それでは行きましょう」


アサガイ委員長が車を運転した奴に黒い板を渡すと派閥がいるとされる場所へ歩き出す。それに釣られるかのように他の生徒も動き出した。

教室にいる時とはまるで違う生徒達の雰囲気は後ろを歩く俺にはわかる。きっと任務時はこうやって切り替えているのだろう。

何だか、カムイ王都であった軍の行進に似ているな。年に1回ある軍を讃える祭典でカムイ王都を守る兵士達が宮殿に向かって歩くのだ。そしてカムイ王都の王である父上に首を垂れて王都のために尽くすことを誓う。一種の儀式のようなものだった。


「緊張してるのかしら?」

「レオン。そんなことない。ただ、いつにも増して生徒達の様子が真剣だから少々驚いてしまった」

「ふふっ、能ある鷹は爪を隠すって言うでしょ?ワタクシ達は普段爪を隠しているのですわ。任務の時だけその爪を剥き出す。高貴そのもの」

「訓練の授業くらい爪を見せてもらいたいものだな」

「緊張している先生にワタクシの秘密を教えてあげますわ」

「緊張してないって言ってるだろ」

「ワタクシ脚力が凄いの。走るのも早いし、飛び上がるのも高く飛べる。その分腕力はないのだけれどね」

「……初耳だな」

「言ってないもの」

「その秘密とやらを言ってどうしたい」

「何かあったらワタクシを呼んでくださいまし。すぐに駆けつけて救出してみせますわ」

「はぁ……。一応頭に入れておこう」


俺は頭を掻きながら返事をすれば隣に来たレオンは満足そうに微笑む。こいつの口調や外見が女性ということもだいぶ慣れてきた。

しかし時々、センリのような不気味さを感じる時もある。嫌われるためとかの思考を無しにした場合はきっと親交を深めるのは難しい人間だろう。


「とは言っても先生からきっと大丈夫。なんか本番に強そうな気がしますのよ」

「一応、ババアと一緒にカゲル討伐はやっている。ただ今回の任務は生身の人間が絡んでくるからな。厄介だ」

「人間に会った時は常に笑顔を絶やさないことが秘訣ですわ。特に派閥に囚われてしまった人達には。ほら、ワタクシみたいに笑顔笑顔」

「………」

「それは無表情でして」

「レオンは」

「はい?」

「まるで貼り付けたような笑顔をするのだな」


レオンが作る笑顔を見て俺は思ったことを口にしていた。するとレオンの顔は段々と顔は曇っていく。もしかしてまずいことを言ってしまったのか。

俺の顔まで険しくなった。でもレオンは怒ることなくまた笑顔を作って片目を一瞬だけ瞑ると前の方にいる他の生徒達の中に入ってしまう。結局俺の思ったことに対して何も言ってはくれなかった。

もう目的の建物は俺の視界の中に入っている。俺は余計な考えを振りかぶって腰につけてある特刀へ手を添えた。
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