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1章 生徒との出会い
8話 童顔ババア先生
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Aクラスの教室から去った俺とアサガイ委員長は移動個室を使って1階へとやって来た。
「職員室に行けば他の先生方が色々とやってくれると思います。私は座学があるので着いたら別行動になりますが、他の先生も頼れる方なので安心してください」
「そうか」
リンガネやハルサキとは違い、アサガイ委員長は必要最低限以上だけど余計なことは言わない人なので話していて苦労はしない。けれど自己紹介の時に話した他の奴らには多少苦労しそうだ。少しの会話を交わした俺達は1階の廊下を歩いてとある場所で止まる。
「ここが職員室です。ちょっと待っててください」
目的の場所に着いた俺にそう言うとアサガイ委員長は1人で部屋の中に入って行った。廊下で待たされている俺は少しだけ首を動かして周りを観察する。
すると向こう側からアサガイ委員長達と同じ服を着た人間2人がボロボロの格好で喋りながら歩いて来た。
「疲れたなぁ~。最近カゲル多くね?」
「わかる。でも私達はマシなほうでしょ。不幸クラスは辛い仕事やらされてるらしいし」
「俺、変わり者じゃなくて良かった~」
「今は大丈夫かもだけど変なことしたら即不幸クラス行きだから気をつけな?」
「ハハッ、わかってる」
俺は部屋の前に立ちながら2人の会話を聞いていた。その2人は俺に目を向けることなく素通りする。
あんなにボロボロになるまで戦っていたとなると相当弱いということだ。俺は少々見下す笑いを浮かべてしまった。
「シンリン先生、今から来る人が……どうかしましたか?」
「気にするな。それよりアサガイ委員長、不幸クラスとは何なのだ?」
「えっ?不幸クラス?」
「さっきここを通って行った奴らが話していた」
「私はよくわからないです。もしかしたら陰で言われている言葉なのかもしれません」
「陰謀者は何処にでもいるのだな」
「流石に陰謀は言い過ぎです……」
「それで?俺は何をすればいい?」
「あっはい。今から来る先生が色々と説明と手続きをしてくれるそうです。私はもう教室に戻りますが、座学が終わり次第迎えに行きます」
「わかった」
「それでは失礼しますね」
アサガイ委員長は俺に軽いお辞儀をすると先程来た道を歩いて戻って行った。座学なんて何をやるのだろうか。
年齢も別々なクラスなのに同じ勉学に励むのは理解できない。ここは本当にわからないことだらけだ。俺は背筋が伸びているアサガイ委員長の背中を見つめてため息をついた。
「ため息をつくと幸せが逃げるぞよ」
「生憎今幸せがない身なのでね。誰だ?」
急に後ろから声をかけられた俺はゆっくりと振り向いて答える。そこには1つに結んだ髪を靡かせた女が立っていた。
「フッ、名乗ろう!我が名はセンリ、56歳!童顔先生と生徒から呼ばれるちょっとお茶目な人間だ!」
「自分でお茶目って言うのか?変わってるな」
「……ノリが悪いの」
「その話し方は結構なお年しか使わない。本当に56か?」
「さてはお前、女性経験が無いな」
「は?」
「フフーン、我にはお見通しじゃ。ぶっきらぼうな男は大抵女性を知れば丸くなる。しかしお前は尖に尖ったまま。これからか…。初よの」
「からかいは要らない」
「なっ!失礼極まりない!全く、お前はトゲより尖った奴だな。ウニだ!ウニ!」
死者の世界は俺と会話が噛み合わないように出来ていると確信に近くなってくる。ウニもトゲも同じだろ。
俺は苛立ちを感じながら目の前にいるババアを睨みつけた。童顔というのは認めよう。本当に56歳だとしたら外見が若すぎる。
しかしお茶目という点は間違っていて、ただ単に苛立たせる性格としか言えなかった。
「何の用だ」
「リコン学長がお前に色々と説明しろと直々に命令が出てな。Aクラスのアサガイからもよろしく頼むと頭を下げられたもので断るにも断れずここにおる」
「別の人を用意してくれ」
「お前失礼!本当失礼!!」
「うるさいのは嫌いだ」
「お前も口うるさい奴だぞよ!我と変わらん!」
「うるさいのは認めるのか…」
童顔ババア……センリは演芸者のように俺に指を差しながら騒ぎ出す。よっぽどこの空間に響いているのかセンリが出てきた職員室という部屋にいる他の人間がこっちを心配そうに見ていた。
「リコン学長も物好きな奴じゃ。こんな奴を教師に任命するなんて」
「なら俺を追い出してくれないか?生徒に言われるよりもあんたに言われた方が説得力あると思う」
「やーだね。お前みたいな奴に頼まれて素直に『はい』と言えるほど優しくないわい!」
「ならやるべき事をさっさとやってくれないか?」
「………」
「おい」
「キィーーーー!!ムカつくぞよ!!」
歯から音が鳴るくらいに食いしばるセンリはその場で強く足踏みして苛立ちを抑えようとしている。次、下手に何か言ったら噛みつかれそうだ。俺はもう黙ろうと思って言おうとしていた「うるさい」を封じた。
「はぁ、はぁ、はぁ……こっちじゃ……」
「ああ」
少しすれば衝動が軽減したようでセンリは呼吸を荒くして職員室の隣にある部屋に招き入れる。今の会話のやり取りで結構疲れたらしく一気に静かになった。
「とりあえずお前のだらしない服を変えるべく、寸法を測る」
「だらしないは余計だ。これはカムイ王都で最も高級な素材を使った……」
「そういうのはいらん。ほれ、服を脱げ」
「………」
「何だ?……ハハーン、もしかして恥ずかしいのか?そうじゃろうな。歳は高くてもこんなにキュートな顔じゃからな。実質若い女性に見られてると同じ。んもぅ!照れるわい!」
「職員室に行けば他の先生方が色々とやってくれると思います。私は座学があるので着いたら別行動になりますが、他の先生も頼れる方なので安心してください」
「そうか」
リンガネやハルサキとは違い、アサガイ委員長は必要最低限以上だけど余計なことは言わない人なので話していて苦労はしない。けれど自己紹介の時に話した他の奴らには多少苦労しそうだ。少しの会話を交わした俺達は1階の廊下を歩いてとある場所で止まる。
「ここが職員室です。ちょっと待っててください」
目的の場所に着いた俺にそう言うとアサガイ委員長は1人で部屋の中に入って行った。廊下で待たされている俺は少しだけ首を動かして周りを観察する。
すると向こう側からアサガイ委員長達と同じ服を着た人間2人がボロボロの格好で喋りながら歩いて来た。
「疲れたなぁ~。最近カゲル多くね?」
「わかる。でも私達はマシなほうでしょ。不幸クラスは辛い仕事やらされてるらしいし」
「俺、変わり者じゃなくて良かった~」
「今は大丈夫かもだけど変なことしたら即不幸クラス行きだから気をつけな?」
「ハハッ、わかってる」
俺は部屋の前に立ちながら2人の会話を聞いていた。その2人は俺に目を向けることなく素通りする。
あんなにボロボロになるまで戦っていたとなると相当弱いということだ。俺は少々見下す笑いを浮かべてしまった。
「シンリン先生、今から来る人が……どうかしましたか?」
「気にするな。それよりアサガイ委員長、不幸クラスとは何なのだ?」
「えっ?不幸クラス?」
「さっきここを通って行った奴らが話していた」
「私はよくわからないです。もしかしたら陰で言われている言葉なのかもしれません」
「陰謀者は何処にでもいるのだな」
「流石に陰謀は言い過ぎです……」
「それで?俺は何をすればいい?」
「あっはい。今から来る先生が色々と説明と手続きをしてくれるそうです。私はもう教室に戻りますが、座学が終わり次第迎えに行きます」
「わかった」
「それでは失礼しますね」
アサガイ委員長は俺に軽いお辞儀をすると先程来た道を歩いて戻って行った。座学なんて何をやるのだろうか。
年齢も別々なクラスなのに同じ勉学に励むのは理解できない。ここは本当にわからないことだらけだ。俺は背筋が伸びているアサガイ委員長の背中を見つめてため息をついた。
「ため息をつくと幸せが逃げるぞよ」
「生憎今幸せがない身なのでね。誰だ?」
急に後ろから声をかけられた俺はゆっくりと振り向いて答える。そこには1つに結んだ髪を靡かせた女が立っていた。
「フッ、名乗ろう!我が名はセンリ、56歳!童顔先生と生徒から呼ばれるちょっとお茶目な人間だ!」
「自分でお茶目って言うのか?変わってるな」
「……ノリが悪いの」
「その話し方は結構なお年しか使わない。本当に56か?」
「さてはお前、女性経験が無いな」
「は?」
「フフーン、我にはお見通しじゃ。ぶっきらぼうな男は大抵女性を知れば丸くなる。しかしお前は尖に尖ったまま。これからか…。初よの」
「からかいは要らない」
「なっ!失礼極まりない!全く、お前はトゲより尖った奴だな。ウニだ!ウニ!」
死者の世界は俺と会話が噛み合わないように出来ていると確信に近くなってくる。ウニもトゲも同じだろ。
俺は苛立ちを感じながら目の前にいるババアを睨みつけた。童顔というのは認めよう。本当に56歳だとしたら外見が若すぎる。
しかしお茶目という点は間違っていて、ただ単に苛立たせる性格としか言えなかった。
「何の用だ」
「リコン学長がお前に色々と説明しろと直々に命令が出てな。Aクラスのアサガイからもよろしく頼むと頭を下げられたもので断るにも断れずここにおる」
「別の人を用意してくれ」
「お前失礼!本当失礼!!」
「うるさいのは嫌いだ」
「お前も口うるさい奴だぞよ!我と変わらん!」
「うるさいのは認めるのか…」
童顔ババア……センリは演芸者のように俺に指を差しながら騒ぎ出す。よっぽどこの空間に響いているのかセンリが出てきた職員室という部屋にいる他の人間がこっちを心配そうに見ていた。
「リコン学長も物好きな奴じゃ。こんな奴を教師に任命するなんて」
「なら俺を追い出してくれないか?生徒に言われるよりもあんたに言われた方が説得力あると思う」
「やーだね。お前みたいな奴に頼まれて素直に『はい』と言えるほど優しくないわい!」
「ならやるべき事をさっさとやってくれないか?」
「………」
「おい」
「キィーーーー!!ムカつくぞよ!!」
歯から音が鳴るくらいに食いしばるセンリはその場で強く足踏みして苛立ちを抑えようとしている。次、下手に何か言ったら噛みつかれそうだ。俺はもう黙ろうと思って言おうとしていた「うるさい」を封じた。
「はぁ、はぁ、はぁ……こっちじゃ……」
「ああ」
少しすれば衝動が軽減したようでセンリは呼吸を荒くして職員室の隣にある部屋に招き入れる。今の会話のやり取りで結構疲れたらしく一気に静かになった。
「とりあえずお前のだらしない服を変えるべく、寸法を測る」
「だらしないは余計だ。これはカムイ王都で最も高級な素材を使った……」
「そういうのはいらん。ほれ、服を脱げ」
「………」
「何だ?……ハハーン、もしかして恥ずかしいのか?そうじゃろうな。歳は高くてもこんなにキュートな顔じゃからな。実質若い女性に見られてると同じ。んもぅ!照れるわい!」
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