【完結】異世界先生 〜異世界で死んだ和風皇子は日本で先生となり平和へと導きます〜

雪村

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1章 生徒との出会い

6話 Aクラスの生徒達

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「討伐アカデミーの本拠地の建物はとても広くて高いです。でも私達が行動するのは3階にある教室や、1階にある食堂と訓練室くらいですかね」

「他の部屋は何なのだ?」

「討伐アカデミーは私達以外に沢山の生徒がいます。その人達のクラスや施設があるんですよ。性別、年齢、出身は様々でも戦う仲間です」

「お前達2人の年齢は?」

「おいおい。儚きレディーにそんなこと聞くなよな~。先生覚えときなよ。女性に年齢聞いたって大抵の人は……」

「私は17歳です」

「っておい!何で言うの!?」

「別に隠すことでもありませんから」

「大抵の女性は何だ?」

「何でもねぇよ!」


開けたら景色が変わる個室を出た俺達は長い廊下を歩いている。アサガイ委員長の説明を聞きながらもリンガネの絡みにくい話に耳を傾けていた。


「さっきお前達と一緒にいた静かな男…ハルサキはどこにいる?」

「えっ、もうハルサキの名前覚えてんのか?あたし達自己紹介したっけ?」

「そういえばまだでした!私は…」

「アサガイ委員長とリンガネだろう。何回も聞いていれば覚える」

「すげぇ!先生らしい!」

「あの、私に委員長という言葉は付けなくても良いです」

「もうアサガイ委員長で覚えてしまった」

「アサガイで良いのに…」


アサガイ委員長は少しだけ残念そうな顔をしたが気のせいだろう。そんなことよりも俺はハルサキを探さなければならない。

今の状況を説明して、俺が指導者になることを反対してもらわなければ。


「それで?ハルサキはどこにいる?」

「ハルサキさんはきっとAクラスの教室にいるはず。討伐報告書を書くと言っていたので」

「そんなにハルサキに会いたいのか?」

「まぁ、私達女性といるよりも男性といた方が楽なのかと」

「なーるほど」


そういう意味ではないのだ、アサガイ委員長。俺を引き入れ迎えたお前達は敵である以上話はきっと通じない。

ならばハルサキが最後の砦なのだ。あいつなら、あいつなら……。


「ここがAクラスの教室です。今日からシンリン先生はこの部屋に通うことになります」

「……はぁ」


思わずため息をついてしまう俺。そんな俺も見ずにリンガネは扉を勢いよく開けて教室の中に入って行った。


「ただいまーー!」

「あっ、帰ってきたな。暴走族」

「誰が暴走だって!?」

「もう少しお淑やかにした方がよろしくて?」

「委員長も帰ってきた!」

「……おかえりなさい」


色んな方向から色んな声が交わる。俺は扉の前で立ち尽くしてしまった。

そんな部外者同然の俺を見た教室にいた奴らは一瞬アホ面になった後、謎の納得をしたように「あー」と頷く。


「新人さんだ!!」

「新米族か。よろしく頼む」

「服装がおかしくてよ」

「………誰?」


俺に耳は2つしかない。2つあったとしても情報を一気に消化することは不可能だ。

飛び交う言葉に顔を引き攣らせていると赤髪の背が小さく元気そうな少女が俺の元へ走って来た。


「本当に変な服!制服は貰ってないの?」

「制服…?」

「そう!私達が来ている制服!あっ、でも貴方は男の子だからスカートは履けないや…」

「すかーと?」

「もしかして履きたい?なら学長に相談すると良いよ!」

「お前は何を言ってる?」


この教室に来てもやはり噛み合わない俺との会話。顔が更に引き攣る俺に助け舟を出そうと委員長は俺の手を掴んで他の奴らがいる場所まで連れて来た。


「紹介します。生徒ではなく、この方は私達Aクラスの教師となる方です!シンリン先生自己紹介を」

「俺はやるなんて言ってない」

「まぁたそれか?良い加減諦めな」

「ならお前が取り消してくれリンガネ」

「あたしは権力持ってないから無理」


リンガネは呆れたように首を横に振る。俺は即座に首を動かして目的の人間を探した。

するとそいつは1番端の席に座って静かに何かを書いている。俺はそんなハルサキが座る席に向かって助けを求めた。


「ハルサキ」

「……!貴方か。急に名前を呼ばれて驚いた」

「俺を助けろ」

「どういうことだ?」

「さっきアサガイ委員長が言った話を聞いていたか?」

「先生になるとか…」

「なりたくない。強制的に決められたんだ。お前から何か言って欲しい」

「何を言えばいい?」

「俺が指導者になることを取り消しにしろとだけ言ってくれ」

「……わかった」


ハルサキはどこか面倒臭そうな顔をしているけど関係ない。ゆっくり席から立ち上がったハルサキはアサガイ委員長の側へ行くと俺が言った通りの文章を伝えてくれた。

何だか感情が込もってないのは気にすることない。俺も交渉するハルサキに近寄ると急に彼は後ろを振り返った。


「うわっ!何だ!?」

「俺には無理だ」

「……は?」

「リコン学長も了承しているのなら無理だ。潔く指導者になってくれ」

「ハルサキ!?お前は俺の味方ではないのか!」

「…?味方なんて言ってない」

「嘘、だろ…」


俺は膝から崩れるように床に手を付いた。敵の前で膝をつくなんて父上に怒られる行為だけど、今の俺に力は入らない。


「は、ははは、は…」

「シンリン先生大丈夫ですか?」

「……アサガイ委員長。何故俺なんだ?指導者なんてどこにでもいるだろう?そこら辺にわんさかいるだろう?」


俺は絶望の笑顔でアサガイ委員長に問い詰める。しかしアサガイ委員長は眉を下げて首を振った。
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