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4章 君も俺も誰かに道連れにされる
23話 道連れ炎上
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ある日、こんな呟きがSNSに投稿される。
【流石にここまで口を悪くしては言いませんが、内容としては僕もそう思います。
僕は男性が好きです。その理由は過去に女性との関係でトラウマを持ってしまったからです。
でも僕がゲイと告白すると周りの男性は距離を置こうとします。
確かに僕はゲイですが、男の人なら誰でも好きになるとは限りません。
異性愛者の皆さんと変わらないんです。
どうか、自由に自分を曝け出して恋愛できる日が来ますように】
その呟きの関連画像には4月中旬に投稿された口の悪い嘆きが表示されていた。
いいね数1.1万。拡散数1749。コメント数160件。完全に炎上した。
ーーーーーー
何も予定のない日曜日。
もう少し耐えれば梅雨が終わるかなと呑気なことを考えていた俺は、佐倉からの情報で飛び起きる。
【ヤバいよなこれ。倉持さんまた人気者になるじゃん】
【これいつ投稿されたの?】
【昨日の夕方?俺が知ったのは深夜】
【そっか】
【明日教室はうるさくなるだろうな。もう倉持さんのアカウント説はこの前確定したんだし】
【そうだね】
【あんなに必死に怒るって暴露していると同じだろ。スルーしたら確定にはならなかったのかもしれないのにww】
俺は何気ない返事をしながら炎上した呟きを確認しにいく。
すぐに見つかった呟きは、佐倉が送ってくれた画像の通り炎上していた。
コメントには共感する声も見られるけど、ふざけたようなコメントも目に入る。
その中には心無い言葉や現実を突きつけるようなものも混じっていた。
【凪斗?トイレ行ったか?】
佐倉からのメッセージを無視してコメントをスクロールしていた俺は慌ててアプリを変える。
【ごめん!ちょっと離席していた!】
【あーなるほど。OK】
【っていうか佐倉、今日何かあるの?テンション高そうに感じるけど】
文面では明るさを感じさせるように絵文字やスタンプを使ってやりとりする。
しかしスマホを操作している俺の表情は険しく、焦り出す心臓の音しか聞こえなかった。
【マジか。メッセージでわかるのか】
【何となくね】
【実は俺、これから遊びに行くんだよ】
【そうなの?何処に?】
【少し大きめのショッピングモール。相手誰だかわかるか?】
【…もしかして彼女?】
【いや彼女ではない。でももうすぐ彼女になるかも】
【まさか前話していた3年の先輩とか?】
【おお!正解!よく覚えてんな。流石凪斗】
前まではきっと佐倉から褒められることに喜んでいただろう。しかし今は喜べない。
佐倉に褒められようがどうだっていいとさえ思えてきた。
でも俺は佐倉の機嫌を損ねないように応援するメッセージを送る。
大事なのは相手に合わせる調和だ。
【今日は天気が良いから周辺歩くのも楽しそうだね】
【あー、確かにフラフラするのも良いかもな。先輩が歩くの好きなら提案してみるか】
【上手くいくように応援している!頑張れ!】
【ありがとうな。鉢合わせしないようにショッピングモールには来るなよ?】
【大丈夫。そこに行く予定は無いから】
最後に佐倉からのスタンプを受け取って俺はメッセージアプリを閉じる。
何が応援しているだ。佐倉のことを気にするよりも別のことを気にしなければいけないだろ。
そう自分自身を否定して俺は足を床に着けた。
部屋着から外用の服に着替えて、少量の荷物を鞄に入れる。
激しかった心拍数は徐々に落ち着いてきた。しかし心の中で焦る気持ちは大きくなる一方だ。
「倉持さん…」
数日前に耳にした、からかうような声は聞けるだろうか。そもそも俺と会ってくれるだろうか。
でも事の内容を知っておきながら部屋でゴロゴロしているなんて出来なかった。
俺は鞄を持って外に出る。
「本当、何でこんな時に」
絞り出すように声に出した言葉は苛立ちと怒りが含まれていた。
別に倉持さんの投稿を引用した男性が全部悪いわけじゃない。
でも余計なことをしてくれたと敵視してしまいそうだ。
「どれだけ倉持さんを苦しめれば気が済むんだよ…!」
晴れ渡る空が広がる午後、俺は倉持さんの家へと向かう。
黒くなったスマホ画面の下には今もいいね数が増えている炎上呟きが隠れていた。
【流石にここまで口を悪くしては言いませんが、内容としては僕もそう思います。
僕は男性が好きです。その理由は過去に女性との関係でトラウマを持ってしまったからです。
でも僕がゲイと告白すると周りの男性は距離を置こうとします。
確かに僕はゲイですが、男の人なら誰でも好きになるとは限りません。
異性愛者の皆さんと変わらないんです。
どうか、自由に自分を曝け出して恋愛できる日が来ますように】
その呟きの関連画像には4月中旬に投稿された口の悪い嘆きが表示されていた。
いいね数1.1万。拡散数1749。コメント数160件。完全に炎上した。
ーーーーーー
何も予定のない日曜日。
もう少し耐えれば梅雨が終わるかなと呑気なことを考えていた俺は、佐倉からの情報で飛び起きる。
【ヤバいよなこれ。倉持さんまた人気者になるじゃん】
【これいつ投稿されたの?】
【昨日の夕方?俺が知ったのは深夜】
【そっか】
【明日教室はうるさくなるだろうな。もう倉持さんのアカウント説はこの前確定したんだし】
【そうだね】
【あんなに必死に怒るって暴露していると同じだろ。スルーしたら確定にはならなかったのかもしれないのにww】
俺は何気ない返事をしながら炎上した呟きを確認しにいく。
すぐに見つかった呟きは、佐倉が送ってくれた画像の通り炎上していた。
コメントには共感する声も見られるけど、ふざけたようなコメントも目に入る。
その中には心無い言葉や現実を突きつけるようなものも混じっていた。
【凪斗?トイレ行ったか?】
佐倉からのメッセージを無視してコメントをスクロールしていた俺は慌ててアプリを変える。
【ごめん!ちょっと離席していた!】
【あーなるほど。OK】
【っていうか佐倉、今日何かあるの?テンション高そうに感じるけど】
文面では明るさを感じさせるように絵文字やスタンプを使ってやりとりする。
しかしスマホを操作している俺の表情は険しく、焦り出す心臓の音しか聞こえなかった。
【マジか。メッセージでわかるのか】
【何となくね】
【実は俺、これから遊びに行くんだよ】
【そうなの?何処に?】
【少し大きめのショッピングモール。相手誰だかわかるか?】
【…もしかして彼女?】
【いや彼女ではない。でももうすぐ彼女になるかも】
【まさか前話していた3年の先輩とか?】
【おお!正解!よく覚えてんな。流石凪斗】
前まではきっと佐倉から褒められることに喜んでいただろう。しかし今は喜べない。
佐倉に褒められようがどうだっていいとさえ思えてきた。
でも俺は佐倉の機嫌を損ねないように応援するメッセージを送る。
大事なのは相手に合わせる調和だ。
【今日は天気が良いから周辺歩くのも楽しそうだね】
【あー、確かにフラフラするのも良いかもな。先輩が歩くの好きなら提案してみるか】
【上手くいくように応援している!頑張れ!】
【ありがとうな。鉢合わせしないようにショッピングモールには来るなよ?】
【大丈夫。そこに行く予定は無いから】
最後に佐倉からのスタンプを受け取って俺はメッセージアプリを閉じる。
何が応援しているだ。佐倉のことを気にするよりも別のことを気にしなければいけないだろ。
そう自分自身を否定して俺は足を床に着けた。
部屋着から外用の服に着替えて、少量の荷物を鞄に入れる。
激しかった心拍数は徐々に落ち着いてきた。しかし心の中で焦る気持ちは大きくなる一方だ。
「倉持さん…」
数日前に耳にした、からかうような声は聞けるだろうか。そもそも俺と会ってくれるだろうか。
でも事の内容を知っておきながら部屋でゴロゴロしているなんて出来なかった。
俺は鞄を持って外に出る。
「本当、何でこんな時に」
絞り出すように声に出した言葉は苛立ちと怒りが含まれていた。
別に倉持さんの投稿を引用した男性が全部悪いわけじゃない。
でも余計なことをしてくれたと敵視してしまいそうだ。
「どれだけ倉持さんを苦しめれば気が済むんだよ…!」
晴れ渡る空が広がる午後、俺は倉持さんの家へと向かう。
黒くなったスマホ画面の下には今もいいね数が増えている炎上呟きが隠れていた。
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