52 / 53
10章 炎国王と氷の側近
52話 不意打ち告白
しおりを挟む
「アハハッ!イグニ様ったらフラれてやんの!それよりもフレイヤ様はこんなイグニ様を見て大丈夫?」
「ええ。もう吹っ切れた部分もあるから」
中庭での微笑ましい光景を私とヒメナ様は上の階から見ていた。騎士団長から国王補佐官になった私フレイヤはイグニ国王との婚約関係を解消した。
その理由は、私と結ばれればイグニ国王はきっと心の底から笑ってくれないから。それが嫌なだけで私は自ら許嫁の立場から去ったのだ。伝えた時のイグニ様の顔は今でも笑ってしまうほどにポカーンとしていたのを覚えている。
「にしてもフレイヤ様って強いよね。ひと殴りくらいイグニ様にぶちかましても良いんだよ?」
「流石に出来ないわよ」
「なら私が代わりにやってあげようか?」
「遠慮しておくわ」
ヒメナ様とはここ数ヶ月でやっと打ち解けた気がする。元々はイグニ国王の従者と騎士団長の立場だったのでそこまで親交は深くなかった。
しかし突然ヒメナ様が補佐官になった私の元に来たと思えば、今回の戦争を記した本を書きたいと言い出し手伝わされたのだ。別に断る理由も無かったので手伝った結果が今に繋がる。
まるで姉妹のような関係性になった私達はお互いに敬語も抜けてラフな感じで喋るようになった。
「でも私心配だよ」
「何で?」
「あれだけ体張ってイグニ様を守ったのに結果的にはこうなっちゃったでしょ?なんか腑に落ちなくてさ」
「イグニ国王を守ったのはあの人が次のヒートヘイズを担う者だからよ」
「嘘つき。本当は好きだったくせに」
「……」
確かに好きだ。それは今だって続いている。フロス様に見せる笑顔を私にも向けてくれたらと何度願っただろう。
けれども全ては私が決めたことだ。このことに関しては、先代国王である焔の神も認めている。私は廊下の壁に背中を預けて寄りかかるように力を抜いた。
「いつかヒメナ様もわかるわよ。好きな人には幸せになって笑って欲しいって思う気持ちが」
「ふーん」
少しカッコつけすぎだろうか。それでもこれが私の本心なのだから仕方ない。これからも私はイグニ国王の補佐官として近くで生きることになる。
だからこそ笑っていて欲しかった。初めて見たあの時の笑顔と同じ表情で。
「じゃあこれからフレイヤ様はどうするの?新しいお相手候補とか」
「残念ながら今の所居ないわね。まぁしばらくは補佐官として忙しくなると思うし別に」
「なら私を候補にする?」
「何言ってるのよ」
ヒメナ様の爆弾発言に私は耳を疑いながら顔を向ける。しかしヒメナ様は真剣な顔をしていながらも私を見て微笑んでいた。
「あまり年上をからかわないの」
「からかってなんかいないよ?だって他の変な奴に渡すよりは私の方が幸せにできるかなぁって思ってさ」
「さっきから本当何言って」
「イグニ様ならきっと認めてくれるよ!あ、何なら今から恋人になっちゃう?私誰かと付き合うなんて初めてだから至らない所もあると思うけど…」
「だ、だから急に何なの!?」
このまま彼女を喋らせたら色々と取り返しのつかないことになりそうだ。私は黙らせようとヒメナ様の口に両手を当てると、何だか嬉しそうに笑っている。
「ふへいひゃ様のふぇほほひいね」
「え?」
「フレイヤ様の手大きいね。なんか安心する手」
「なっ…!」
別に心臓が跳ねたわけではない。ただ、ヒメナ様の笑顔がイグニ国王と重なってしまったのだ。そんな私の気も知らずにヒメナ様は自分の手と私の重ねてくる。
「ねぇねぇ今から逢瀬行く?」
「行かないわよ」
一難去ってまた一難というやつだ。せっかくイグニ国王から解放されたと思ったけど、今度は予想もしない人物に捕まってしまった。
私は呑気に笑っているヒメナ様の手にせめてもの抵抗で強く力を入れればまた太陽のような笑顔を見せてくれた。
「ええ。もう吹っ切れた部分もあるから」
中庭での微笑ましい光景を私とヒメナ様は上の階から見ていた。騎士団長から国王補佐官になった私フレイヤはイグニ国王との婚約関係を解消した。
その理由は、私と結ばれればイグニ国王はきっと心の底から笑ってくれないから。それが嫌なだけで私は自ら許嫁の立場から去ったのだ。伝えた時のイグニ様の顔は今でも笑ってしまうほどにポカーンとしていたのを覚えている。
「にしてもフレイヤ様って強いよね。ひと殴りくらいイグニ様にぶちかましても良いんだよ?」
「流石に出来ないわよ」
「なら私が代わりにやってあげようか?」
「遠慮しておくわ」
ヒメナ様とはここ数ヶ月でやっと打ち解けた気がする。元々はイグニ国王の従者と騎士団長の立場だったのでそこまで親交は深くなかった。
しかし突然ヒメナ様が補佐官になった私の元に来たと思えば、今回の戦争を記した本を書きたいと言い出し手伝わされたのだ。別に断る理由も無かったので手伝った結果が今に繋がる。
まるで姉妹のような関係性になった私達はお互いに敬語も抜けてラフな感じで喋るようになった。
「でも私心配だよ」
「何で?」
「あれだけ体張ってイグニ様を守ったのに結果的にはこうなっちゃったでしょ?なんか腑に落ちなくてさ」
「イグニ国王を守ったのはあの人が次のヒートヘイズを担う者だからよ」
「嘘つき。本当は好きだったくせに」
「……」
確かに好きだ。それは今だって続いている。フロス様に見せる笑顔を私にも向けてくれたらと何度願っただろう。
けれども全ては私が決めたことだ。このことに関しては、先代国王である焔の神も認めている。私は廊下の壁に背中を預けて寄りかかるように力を抜いた。
「いつかヒメナ様もわかるわよ。好きな人には幸せになって笑って欲しいって思う気持ちが」
「ふーん」
少しカッコつけすぎだろうか。それでもこれが私の本心なのだから仕方ない。これからも私はイグニ国王の補佐官として近くで生きることになる。
だからこそ笑っていて欲しかった。初めて見たあの時の笑顔と同じ表情で。
「じゃあこれからフレイヤ様はどうするの?新しいお相手候補とか」
「残念ながら今の所居ないわね。まぁしばらくは補佐官として忙しくなると思うし別に」
「なら私を候補にする?」
「何言ってるのよ」
ヒメナ様の爆弾発言に私は耳を疑いながら顔を向ける。しかしヒメナ様は真剣な顔をしていながらも私を見て微笑んでいた。
「あまり年上をからかわないの」
「からかってなんかいないよ?だって他の変な奴に渡すよりは私の方が幸せにできるかなぁって思ってさ」
「さっきから本当何言って」
「イグニ様ならきっと認めてくれるよ!あ、何なら今から恋人になっちゃう?私誰かと付き合うなんて初めてだから至らない所もあると思うけど…」
「だ、だから急に何なの!?」
このまま彼女を喋らせたら色々と取り返しのつかないことになりそうだ。私は黙らせようとヒメナ様の口に両手を当てると、何だか嬉しそうに笑っている。
「ふへいひゃ様のふぇほほひいね」
「え?」
「フレイヤ様の手大きいね。なんか安心する手」
「なっ…!」
別に心臓が跳ねたわけではない。ただ、ヒメナ様の笑顔がイグニ国王と重なってしまったのだ。そんな私の気も知らずにヒメナ様は自分の手と私の重ねてくる。
「ねぇねぇ今から逢瀬行く?」
「行かないわよ」
一難去ってまた一難というやつだ。せっかくイグニ国王から解放されたと思ったけど、今度は予想もしない人物に捕まってしまった。
私は呑気に笑っているヒメナ様の手にせめてもの抵抗で強く力を入れればまた太陽のような笑顔を見せてくれた。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる