【完結】雪女と炎王子の恋愛攻防戦

雪村

文字の大きさ
13 / 53
4章 雪女は気になる

13話 執着心を利用して

しおりを挟む
それから数時間後、陽が傾きかけて来た頃だ。伝達用の白鳥が氷の塔に訪れる。

グレイシャー公からの返事だろう。きっと私からの手紙に驚いたと思う。けれど雪の女神としてある程度の把握は必要なのだ。


「ご苦労様です」


相変わらず白鳥はここで休むことなく羽ばたいていってしまう。少しくらい私の相手をしてくれても良いのだけど…。

そう心の中で言いながらもやはりグレイシャー公の返事だった手紙を丁寧に開いていく。


『雪の女神フロス様へ

ご無沙汰しております。お身体に支障は無いでしょうか?
さて、本題に移りますとフロス様の知っての通りヒートヘイズの王子が関所に出向きました。何でも女王ダイヤ様宛にヒートヘイズの国王が書簡を綴ったようで。その使者として関所に来た次第であります。
私はたまたま関所の兵士に用事があったので顔を覗かせていた所、ヒートヘイズの王子と対面したというわけです』


私の疑問に答えた後は色々と気を遣う文章が描かれている。ここはサッと目を通して終わりにした。 


「珍しいです…」


正直言ってヒートヘイズとアイシクルの仲はあまり良くない。しかしヒートヘイズの国王がダイヤに向けて手紙を書くなんて一体内容はどんなものなのだろうか。

きっとダイヤはその事を私に言わないだろうし、私から聞いても言葉を濁して終わりなのは目に見えている。


「私が首を突っ込む問題ではないのでしょうか?」


雪の女神フロス。そう呼ばれて数年経ってるけど未だに自分が何のために生きているのかわからなかった。

ちゃんと仕事はある。アイシクルを見守り、雪と氷を支えるという責務。しかし私の中では何だか腑に落ちなかった。

せっかくイグニの本を読んだ安らいだのにまた巻き戻しされた気分だ。そんな私は今、誰かに会いたいと頭の片隅で思ってしまうのだった。


ーーーーーー


「雪女様!今日もイグニが参りましたよ!」

「……」

「おや?もしかして何処か体調でも悪いのですか?」


数日後、イグニはやっと氷の塔に来てくれた。色々とあったのはわかる。でも前は1日おきか続けてここに来ていたので早く来ないかとムズムズしていた。

私はずっと考えていたことを言うべきかをまだ迷っている。イグニは黙り込む私を心配に思ったのか、少し慌てた様子だった。


「イグニ」

「雪女様…!」

「貴方に聞きたいことがあります。塔の扉を開けるので下層で待っていなさい」

「は、入ってよろしいのですか!?」

「ええ。ただし1人で来なさい」

「勿論ですとも!雪女様と2人きりになれるのであれば従者は帰らせます!」

「こっちは一応真剣なのですが?」


イグニは嬉しそうに扉の前で待っている。私は手に力を込めて扉を張る氷を溶かした。

そうすればイグニが下層に入ったのがわかる。私は自室を出て階段に腰を下ろし上層から声をかけた。


「聞こえますか?」

「はい!」

「うるさいです。氷の塔は音が響きます」

「わかりました!!」

「貴方絶対わかってないでしょう!?」


2人して大声を出したものだから塔の中でこだまして耳に違和感が起こる。私は咳払いをして喉を整えてから再度イグニに声をかけた。


「貴方はその場から動かないでください。上の階に上がってもいけません」

「何故ですか?僕は雪女様と面と向かって話をしたいです」

「今回貴方をここに入れたのはとある事を聞くためです。馴れ馴れしくするために招いたのではありません」

「そう、ですか…」


明らかにシュンとした声。少し申し訳なさが出てしまうけど首を振ってそれを消し去る。イグニに情を沸くわけにはいかないのだ。


「以前、イグニはアイシクルとヒートヘイズを繋ぐ関所に行きましたね。私は雪の女神としてその事を知っています」

「流石です。確か5日程前でしょうか。今日までの間、ここに来れなくてすみません」

「別にその話題は要らないです」

「雪女様は何をお聞きになりたいのでしょう?僕が答えてみせます」

「関所ではグレイシャー公爵に書簡を渡したところまでは知っています。私が知りたいのはその書簡の内容です」


ダイヤにもグレイシャー公にも聞けない内容。しかしイグニなら答えてくれると思った。

わかりきったことだけど彼は私への執着心が強い。ただ単にそれは恋なのか、利用なのかはわからないが。


「それは何故なのか聞いても?」

「私が雪の女神だからです。しかしアイシクルの女王は私の秘密裏で何か動こうとしている。それを知るためにも書簡の内容を教えてください」

「ふむ……」


ずっと間無く返事を返していたイグニは黙り始める。すぐには教えてはくれないか。これも予想の範囲内だ。


「ではこうしましょう。私に内容を教えてくれたら、貴方が私に聞きたい事を全て話します。雪の女神としての部分もプライベートな部分も」


これなら食いつくだろう。イグニの執着心に火を灯す“聞きたいこと全て教える”作戦。最後にプライベートもと言ったので答える範囲は広くなった。

まぁプライベートでそこまで珍しいことは無いのだけど。……まさか下着の色なんて聞かれませんよね?一応、確認しておこう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

侯爵令嬢ソフィアの結婚

今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる 美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた 結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて… 表紙はかなさんです✨ ありがとうございます😊 2024.07.05

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました

降魔 鬼灯
恋愛
 コミカライズ化決定しました。 ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。  幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。  月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。    お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。    しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。 よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう! 誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は? 全十話。一日2回更新 完結済  コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。

処理中です...