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異世界 〜離れないから、貴方も離れないで〜 雅人side
好き
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「「特にない」」
「嘘だろ!?」
美姫ちゃんと声をハモらせながら言った言葉はカルイを勢いよく起き上がらせた。
その様子が面白くて俺と美姫ちゃんは笑う。
「いや何かないのかよ?オレでさえあるんだぜ?」
「だって思い付かない」
「私も」
カルイはガクッと肩を落として俺達の考え方に呆れた。
「ん?」
すると急にカルイは小さな声を出して川の方を見る。
「どうしたんだ?」
「いや、なんか大物が来る予感がする」
「え?大物?」
「魚だ」
そう言うとカルイは持ってきた槍のような物を持って川の近くに行く。
俺も体を起こしてその様子を見るとカルイは大声を出して滝の方を指差した。
「ちょっと見てくる!待っててくれ!」
「わかった」
「気をつけてね」
「おう!」
カルイは岩場を軽々飛び越えるとそのまま姿を消した。
魚の大物が来るって予感はどうやったら身につくのだろうか。
俺はカルイの能力が気になって仕方ない。
どんな原理なのだろうと俺らしくもなく顎に手を当てて考えていると後ろから俺の頬に手を伸ばされる。
「美姫ちゃん?」
カルイを見送ってまた寝転がった美姫ちゃんは俺の頬に優しく触れていた。
なんだか恥ずかしくなって俺は目を逸らす。
美姫ちゃんは小さく笑って頬を摘む。
「ちょっと…」
「雅人って昔から頬っぺた伸びるよね」
「まぁね」
「だから面白くて私は勝手に触って伸ばしてた」
「でも久しぶりじゃない?こうやって伸ばすのは」
「だって思春期男子にこんな事出来るわけないじゃん。それに私は雅人には反抗期が来ると思っていたから、軽々しく触れないようにしていたの」
「そうだったんだ」
「でも雅人の反抗期対象に私は入らなかったね」
「当たり前だよ。だって…」
「だって?」
次の言葉に俺は詰まらせてしまう。
恥ずかしさが強くなって俺は黙ったまま美姫ちゃんに頬を伸ばされている。
美姫ちゃんはずっと続きを喋らない俺にからかうような笑みを浮かべた。
「今まで言えなかったから言ってくれるんじゃないの?」
「うっ……」
「どうなの?雅人くん?」
美姫ちゃんはより強く伸ばし縮みを繰り返した。
摘まれている俺の頬は熱くなってくる。
……ここで誤魔化したら絶対またからかわれるはすだ。
それに今、流れの主導権を持っているのは美姫ちゃん。
こういう時くらい俺がかっこよく決めたい。
そんな想いが強く出た俺は頬に添えられている美姫ちゃんの手を自分の両手でギュッと握って寝転ぶ美姫ちゃんの目を見つめた。
「ずっと好きだから……嫌われたくなかったんだ。だから美姫ちゃんには誰よりも優しくしてきた」
「………」
やっと言えた言葉に美姫ちゃんは黙って俺を見ている。
言い終えた俺は段々と顔が赤くなって耐えられなくなり、遂に顔を背けてしまう。
「ごめん。こう言うの、慣れてなくて」
「ふふっ、雅人らしくて好きだよ」
「えっ、今、好きって…」
「恋人だから好きくらい言って良いでしょ?」
「……参りました」
「勝ち負けじゃないのに」
俺は美姫ちゃんの顔を見れずに俯くけど手は握ったままだった。
2人の体温が合わさって熱くなるのがわかる。
ほとんどが俺の体温だけれども、とても暖かくて離したくなかった。
「前さ、私が雅人の事が好きだった気付いた時に雅人からの2回の告白を思い出したって言ったじゃん?」
「うん」
実は以前、美姫ちゃんが俺に抱いている想いを言ってくれた時に言われたのがその事だった。
美姫ちゃんが俺のことが好きと気付いてくれたおかげで今までの告白を全て思い出してくれたのだ。
しかしこの世界に来た時の前の状況はお互いな思い出せてない。
でも俺は美姫ちゃんが俺に好意を持ってくれていると言う事実だけで十分だ。
本当ならカッコ悪い告白は忘れたままでいて欲しかったのだけど…。
「学校帰りで言われた時も、アキロさんの前で言われた時も、雅人らしくて良いなって思ってる」
「でもかっこ悪いでしょ?今もそうだけどさ。なんて言うか…ビシッと決められないし」
「そんなところも好き」
美姫ちゃんはそう言うと片手で俺の頬をまた撫でる。
俺は気持ちがまた溢れ出しそうで……いや、溢れてしまって美姫ちゃんの手を引っ張り体を起こすと強く自分の方へ引き寄せた。
「俺も好き」
「ふふっ、私も」
美姫ちゃんと俺はお互いの背中に腕を回して隙間なく抱きしめる。
本当に幸せだ。絶対離さないし離れない。
俺はそう自分に誓いを立てた。
そしてこの数分後、俺達が居る草むら付近の川の底から大物の魚を取ったカルイが水飛沫を上げながら飛び出してくることを俺と美姫ちゃんはまだ知らなかった……。
「嘘だろ!?」
美姫ちゃんと声をハモらせながら言った言葉はカルイを勢いよく起き上がらせた。
その様子が面白くて俺と美姫ちゃんは笑う。
「いや何かないのかよ?オレでさえあるんだぜ?」
「だって思い付かない」
「私も」
カルイはガクッと肩を落として俺達の考え方に呆れた。
「ん?」
すると急にカルイは小さな声を出して川の方を見る。
「どうしたんだ?」
「いや、なんか大物が来る予感がする」
「え?大物?」
「魚だ」
そう言うとカルイは持ってきた槍のような物を持って川の近くに行く。
俺も体を起こしてその様子を見るとカルイは大声を出して滝の方を指差した。
「ちょっと見てくる!待っててくれ!」
「わかった」
「気をつけてね」
「おう!」
カルイは岩場を軽々飛び越えるとそのまま姿を消した。
魚の大物が来るって予感はどうやったら身につくのだろうか。
俺はカルイの能力が気になって仕方ない。
どんな原理なのだろうと俺らしくもなく顎に手を当てて考えていると後ろから俺の頬に手を伸ばされる。
「美姫ちゃん?」
カルイを見送ってまた寝転がった美姫ちゃんは俺の頬に優しく触れていた。
なんだか恥ずかしくなって俺は目を逸らす。
美姫ちゃんは小さく笑って頬を摘む。
「ちょっと…」
「雅人って昔から頬っぺた伸びるよね」
「まぁね」
「だから面白くて私は勝手に触って伸ばしてた」
「でも久しぶりじゃない?こうやって伸ばすのは」
「だって思春期男子にこんな事出来るわけないじゃん。それに私は雅人には反抗期が来ると思っていたから、軽々しく触れないようにしていたの」
「そうだったんだ」
「でも雅人の反抗期対象に私は入らなかったね」
「当たり前だよ。だって…」
「だって?」
次の言葉に俺は詰まらせてしまう。
恥ずかしさが強くなって俺は黙ったまま美姫ちゃんに頬を伸ばされている。
美姫ちゃんはずっと続きを喋らない俺にからかうような笑みを浮かべた。
「今まで言えなかったから言ってくれるんじゃないの?」
「うっ……」
「どうなの?雅人くん?」
美姫ちゃんはより強く伸ばし縮みを繰り返した。
摘まれている俺の頬は熱くなってくる。
……ここで誤魔化したら絶対またからかわれるはすだ。
それに今、流れの主導権を持っているのは美姫ちゃん。
こういう時くらい俺がかっこよく決めたい。
そんな想いが強く出た俺は頬に添えられている美姫ちゃんの手を自分の両手でギュッと握って寝転ぶ美姫ちゃんの目を見つめた。
「ずっと好きだから……嫌われたくなかったんだ。だから美姫ちゃんには誰よりも優しくしてきた」
「………」
やっと言えた言葉に美姫ちゃんは黙って俺を見ている。
言い終えた俺は段々と顔が赤くなって耐えられなくなり、遂に顔を背けてしまう。
「ごめん。こう言うの、慣れてなくて」
「ふふっ、雅人らしくて好きだよ」
「えっ、今、好きって…」
「恋人だから好きくらい言って良いでしょ?」
「……参りました」
「勝ち負けじゃないのに」
俺は美姫ちゃんの顔を見れずに俯くけど手は握ったままだった。
2人の体温が合わさって熱くなるのがわかる。
ほとんどが俺の体温だけれども、とても暖かくて離したくなかった。
「前さ、私が雅人の事が好きだった気付いた時に雅人からの2回の告白を思い出したって言ったじゃん?」
「うん」
実は以前、美姫ちゃんが俺に抱いている想いを言ってくれた時に言われたのがその事だった。
美姫ちゃんが俺のことが好きと気付いてくれたおかげで今までの告白を全て思い出してくれたのだ。
しかしこの世界に来た時の前の状況はお互いな思い出せてない。
でも俺は美姫ちゃんが俺に好意を持ってくれていると言う事実だけで十分だ。
本当ならカッコ悪い告白は忘れたままでいて欲しかったのだけど…。
「学校帰りで言われた時も、アキロさんの前で言われた時も、雅人らしくて良いなって思ってる」
「でもかっこ悪いでしょ?今もそうだけどさ。なんて言うか…ビシッと決められないし」
「そんなところも好き」
美姫ちゃんはそう言うと片手で俺の頬をまた撫でる。
俺は気持ちがまた溢れ出しそうで……いや、溢れてしまって美姫ちゃんの手を引っ張り体を起こすと強く自分の方へ引き寄せた。
「俺も好き」
「ふふっ、私も」
美姫ちゃんと俺はお互いの背中に腕を回して隙間なく抱きしめる。
本当に幸せだ。絶対離さないし離れない。
俺はそう自分に誓いを立てた。
そしてこの数分後、俺達が居る草むら付近の川の底から大物の魚を取ったカルイが水飛沫を上げながら飛び出してくることを俺と美姫ちゃんはまだ知らなかった……。
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