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異世界 〜貴方の大切さ〜 美姫side
どんな答えでも君の側に
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でも私は負けたくない。
目の前で笑みを崩さずに微笑んでいる人には絶対負けたくなかった。
「雅人。このままで良いから聞いて」
「……」
腕の中に居る雅人をより強く抱きしめ、耳元に口を寄せて優しく話す。
自分の想いが全て伝わるように。
相変わらず返事は無いけど私は構わずに続けた。
「まず、お礼を言わせて。今日までずっと守ってくれてありがとう。雅人がいなくなってからそれに気付くなんて馬鹿だよね。本当に……馬鹿なんだよ。なのに、失って気付く馬鹿なのに、雅人は笑顔で私の側に居てくれた。きっと知らず知らずうちに私が傷つけたこともあったよね」
「………」
「次は謝らせて。本当にごめんなさい。巫女様に言われてやっと雅人が何かに悩んでいる事がわかった。でも、まだその何かはわからない。だから約束する。その悩みが解決するまで私は雅人の隣から……ううん。その悩みが解決しても、雅人から離れないよ。どんな事が雅人の中で渦を巻いているか私は知らないけど………。でも絶対に約束する。例え私の事が嫌いでも、好きでも、私は雅人の隣にいる」
「……」
「私は雅人が大切」
全て言い終わった私は抱える雅人の頭に頬を擦り寄せた。
そして下に降ろしている雅人の手を片手で強く握る。
雅人に取ってはきっと強く握っても私の力では痛くないだろう。
だから遠慮なく握らせてもらった。
「ゲホッ、、ゲホッ」
「巫女様?」
「ふぅ…ゲホッ。そろそろ、ですかね…」
雅人と私の邪魔をするかのように咳き込む巫女様は口に手を当てながら私を見つめる。
わざとの咳きではなさそうだが、その表情は先程と打って変わっていて笑みなどは浮かんでなかった。
「何をするつもりですか?」
「雅人を寄越して」
「嫌です」
「それなら貴方をちょうだい」
「わ、私?」
「ええ。人1人居れば十分」
「まさか…生贄ですか?」
「本当、美姫は頭が冴えますね」
巫女様は立ち上がって私達の所へ歩いてくる。
その姿は亡霊のように恐ろしく、ゆらゆらと体を揺らし近づいていた。
私は雅人を庇うように自分の体を前に出す。
今は、私が守らなくてはいけない。
「せっかく雅人の気持ちが固まったと言うのに……貴方が…」
「雅人も私も生贄なんかならない」
「貴方さえ、あんな言葉をかけなければ、雅人は素直に洗脳されていたのに……」
瞬時にわかった。
きっと巫女様は雅人の弱みに入って良い言葉で生贄とは言わずに一緒に帰ろうとでも言ったのだ。
私が雅人に言った言葉がどう影響を与えたのかはわからないけど、きっと雅人の心が変わったのかもしれない。
私は徐々に縮まる巫女様との距離を保つべく背中の大剣を降ろして引き抜き、突き出した。
白の眼はこんな暗い部屋でもキラキラと輝いている。
鋭い剣先は巫女様の足を止めさせた。
「それが護衛用の武器ですか?」
「もう貴方の為の物ではありません」
「この剣を携え、護衛服を着る雅人が見てみたかった」
「貴方が雅人の話をしないで!!」
「その剣でどうするつもりでしょうか?私を刺しますか?平和で武器のない日本で生まれ育った美姫が?」
「… っ!」
私が持つ大剣は小さく震えていた。
雅人を抱き寄せるために片手は塞がっているので余計に震えが増す。
突き出した事によって巫女様が怖気付いてくれればと思っていたのに無効だ。
全く怖がっていない。
寧ろ、馬鹿にしたような笑みをしている。
「儀式の準備に時間がかかり過ぎてしまいました。もう少し早く終わればさっさと雅人を連れて行けたのに」
「連れて…?殺しての間違いでしょう?」
「ふふっ」
「私は貴方を刺そうと思いここに来たわけではありません。でも、これ以上近寄るのであれば本当に突き刺します」
「突き刺した後は?」
「白虎様の元へ連れて行きます」
「そう……」
「本心を言えば貴方にはお世話になりました。戦いたくありません。…降参してください」
巫女様にこれでもかと言うほど睨みつけて私は近寄らせなかった。
しかし1回咳払いした巫女様は覚悟を決めた顔でまた足を踏み出す。
私は剣を前へと突き出すがもう止まることはなかった。
「私は……帰りたいのです」
そう私に言った巫女様の瞳からは一雫が流れて頬を伝う。
私はその姿に驚き、手に持つ剣を降ろしてしまう。
それを好機と捉えた巫女様はそのまま素早く私達へと近寄ってきた。
「離れてください」
いつもより低い声が私の腕の中から聞こえたと思えば右手に握っていた大剣を取られて守るように前に立つ。
座っている私に背を向けて剣を構えるのは紛れもなく雅人だった。
目の前で笑みを崩さずに微笑んでいる人には絶対負けたくなかった。
「雅人。このままで良いから聞いて」
「……」
腕の中に居る雅人をより強く抱きしめ、耳元に口を寄せて優しく話す。
自分の想いが全て伝わるように。
相変わらず返事は無いけど私は構わずに続けた。
「まず、お礼を言わせて。今日までずっと守ってくれてありがとう。雅人がいなくなってからそれに気付くなんて馬鹿だよね。本当に……馬鹿なんだよ。なのに、失って気付く馬鹿なのに、雅人は笑顔で私の側に居てくれた。きっと知らず知らずうちに私が傷つけたこともあったよね」
「………」
「次は謝らせて。本当にごめんなさい。巫女様に言われてやっと雅人が何かに悩んでいる事がわかった。でも、まだその何かはわからない。だから約束する。その悩みが解決するまで私は雅人の隣から……ううん。その悩みが解決しても、雅人から離れないよ。どんな事が雅人の中で渦を巻いているか私は知らないけど………。でも絶対に約束する。例え私の事が嫌いでも、好きでも、私は雅人の隣にいる」
「……」
「私は雅人が大切」
全て言い終わった私は抱える雅人の頭に頬を擦り寄せた。
そして下に降ろしている雅人の手を片手で強く握る。
雅人に取ってはきっと強く握っても私の力では痛くないだろう。
だから遠慮なく握らせてもらった。
「ゲホッ、、ゲホッ」
「巫女様?」
「ふぅ…ゲホッ。そろそろ、ですかね…」
雅人と私の邪魔をするかのように咳き込む巫女様は口に手を当てながら私を見つめる。
わざとの咳きではなさそうだが、その表情は先程と打って変わっていて笑みなどは浮かんでなかった。
「何をするつもりですか?」
「雅人を寄越して」
「嫌です」
「それなら貴方をちょうだい」
「わ、私?」
「ええ。人1人居れば十分」
「まさか…生贄ですか?」
「本当、美姫は頭が冴えますね」
巫女様は立ち上がって私達の所へ歩いてくる。
その姿は亡霊のように恐ろしく、ゆらゆらと体を揺らし近づいていた。
私は雅人を庇うように自分の体を前に出す。
今は、私が守らなくてはいけない。
「せっかく雅人の気持ちが固まったと言うのに……貴方が…」
「雅人も私も生贄なんかならない」
「貴方さえ、あんな言葉をかけなければ、雅人は素直に洗脳されていたのに……」
瞬時にわかった。
きっと巫女様は雅人の弱みに入って良い言葉で生贄とは言わずに一緒に帰ろうとでも言ったのだ。
私が雅人に言った言葉がどう影響を与えたのかはわからないけど、きっと雅人の心が変わったのかもしれない。
私は徐々に縮まる巫女様との距離を保つべく背中の大剣を降ろして引き抜き、突き出した。
白の眼はこんな暗い部屋でもキラキラと輝いている。
鋭い剣先は巫女様の足を止めさせた。
「それが護衛用の武器ですか?」
「もう貴方の為の物ではありません」
「この剣を携え、護衛服を着る雅人が見てみたかった」
「貴方が雅人の話をしないで!!」
「その剣でどうするつもりでしょうか?私を刺しますか?平和で武器のない日本で生まれ育った美姫が?」
「… っ!」
私が持つ大剣は小さく震えていた。
雅人を抱き寄せるために片手は塞がっているので余計に震えが増す。
突き出した事によって巫女様が怖気付いてくれればと思っていたのに無効だ。
全く怖がっていない。
寧ろ、馬鹿にしたような笑みをしている。
「儀式の準備に時間がかかり過ぎてしまいました。もう少し早く終わればさっさと雅人を連れて行けたのに」
「連れて…?殺しての間違いでしょう?」
「ふふっ」
「私は貴方を刺そうと思いここに来たわけではありません。でも、これ以上近寄るのであれば本当に突き刺します」
「突き刺した後は?」
「白虎様の元へ連れて行きます」
「そう……」
「本心を言えば貴方にはお世話になりました。戦いたくありません。…降参してください」
巫女様にこれでもかと言うほど睨みつけて私は近寄らせなかった。
しかし1回咳払いした巫女様は覚悟を決めた顔でまた足を踏み出す。
私は剣を前へと突き出すがもう止まることはなかった。
「私は……帰りたいのです」
そう私に言った巫女様の瞳からは一雫が流れて頬を伝う。
私はその姿に驚き、手に持つ剣を降ろしてしまう。
それを好機と捉えた巫女様はそのまま素早く私達へと近寄ってきた。
「離れてください」
いつもより低い声が私の腕の中から聞こえたと思えば右手に握っていた大剣を取られて守るように前に立つ。
座っている私に背を向けて剣を構えるのは紛れもなく雅人だった。
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