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異世界 〜貴方の大切さ〜 美姫side
君の優しさに触れていたい
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おばあちゃんも少し焦っているようでいつもより歩く速度が速かった。
すぐに境の門に着いて私とおばあちゃんは祈りを捧げる。
しかし、いつものようにガラスが割れる音がしない。
「おや?」
「音がしない…」
おばあちゃんと目を合わせてお互いに確認し合うけどやはり音は聞こえない。
後ろで待っていたカルイくんも首を横に振っていた。
「私が確認します」
少しずつ前に出て手を伸ばしながら結界が解けているかを確認する。
しかしある場所まで来たら私の手が押し返されるような感覚になった。
これは結界がまだ張っている証拠だと思う。
「ダメです。解けてない」
「おかしな。こんな事は一度もなかった。雅人が何か関係しているのか?」
「ばあちゃん、他の道はダメ?」
「ワシが知っているのはこの道しか無い」
「森の中って歩けないんですか?」
「森は霊獣様の住処じゃ。許可無しにこの道以外を通るなんて出来んよ」
「うーん。何か方法はねぇかな……」
結界が解けない限りは私達は巫女様に会うことは出来ない。
どうして今日は通れないのだろう。
そう考えているうちに森に風が吹き始めた。
「なんか強くねぇか?」
「……」
「どうしましょう」
「ばあちゃん?」
「戻る他ないかもな」
「でも雅人が…!」
「美姫。冷静さを失うな。とりあえず村に戻って対策を…」
「なぁ美姫。お前いつの間に背が伸びたんだ?」
「えっ?背?」
カルイくんは不審な顔をしている。
私はカルイくんにそう言われて気付いたが、何故か妙に目線が合っていた。
カルイくんの方が私よりも身長は高いからいつも話す時は少しだけ目線を上にするのだ。
それなのに今は同じ位置に顔がある。
「み、美姫!お前!」
おばあちゃんが慌てた様子で私を見ながら地面に指を差した。
私は下を向いて何を差しているのか確認すると……地面に足が着いていない。
「浮いてる!?」
「え!?美姫早まるな!雅人は絶対見つかるから死んじゃダメだ!」
「バカ者!縁起でも無いこと言うでない!にしても美姫!戻って来なされ!」
「別に早まってる訳ではないんですけど!」
カルイくんとおばあちゃんは宙に浮き始めた私を連れ戻すように腕を引っ張る。
しかし私の上昇は止まらずに足だけが上へ上へと昇って行った。
逆立ちするかのように宙に浮いてワンピースが捲れ始める所まで来ている。
「なんだこの力!美姫お前そんなに力あったのか!?オレまで引っ張られそうだ!」
「私は力無い方だよ!体力測定でも下の方だし!」
「タイ、ソク…?何を言ってるかわからないがワシ達の手を離すなよ!」
2人は私を地面へ降ろそうと頑張ってくれるが、歳を取っているおばあちゃんは限界が来たようでカルイくんに両手を託す。
しかしカルイくんも顔を真っ赤にして力を込めるけど状況は悪くなる一方だった。
「カルイくん……私、手が痺れて…」
「諦めるな!まだオレは力出せる……!」
「ワシがべっぴんだった時はもっと力になれたのに」
「ばあちゃん!へこたれてないで他の大人呼んできてよ!!」
「きゃぁ!!」
「「美姫!」」
最後の仕上げと言わんばかりに地面から私に向かって風が湧き上がりカルイくんの手から私の手が離れる。
痺れが少しずつ引いていくのと同時に私の体は空へと飛ばされた。
ワンピースの下側を押さえながらグルグルと体が回り、森の奥へと飛ばされる。
カルイくんとおばあちゃんの姿も見えなくなってしまった。
私は急な酔いが来て片手でウッと口を塞ぐ。
出るまではいかないが……キツい。
「少し高めのジェットコースターでも……ダメなのに……」
いつしか私の視界は気持ち悪さと不安からの涙で潤う。
「雅人…」
小さくてもその言葉を口にすれば雅人はいつでも私に寄り添ってくれた。
かっこ悪いからと涙は見せることは無かったけど、沢山の弱さは見せている。
しかしそんな雅人は今居ない。
どこでも私に着いていこうとしていたのに、居ないのが現在の事実だ。
それなのに私はまだ名前を呼んでいる。
そうだ。私は……
「雅人の優しさに、触れていたいんだ…」
気付いた言葉を口にした私の体は涙と共に下へと落ちて行く。
このまま地面に落ちれば大怪我では済まないだろう。
最後に見た雅人の笑顔と言葉は、昨日の夜交わしたおやすみだった。
すぐに境の門に着いて私とおばあちゃんは祈りを捧げる。
しかし、いつものようにガラスが割れる音がしない。
「おや?」
「音がしない…」
おばあちゃんと目を合わせてお互いに確認し合うけどやはり音は聞こえない。
後ろで待っていたカルイくんも首を横に振っていた。
「私が確認します」
少しずつ前に出て手を伸ばしながら結界が解けているかを確認する。
しかしある場所まで来たら私の手が押し返されるような感覚になった。
これは結界がまだ張っている証拠だと思う。
「ダメです。解けてない」
「おかしな。こんな事は一度もなかった。雅人が何か関係しているのか?」
「ばあちゃん、他の道はダメ?」
「ワシが知っているのはこの道しか無い」
「森の中って歩けないんですか?」
「森は霊獣様の住処じゃ。許可無しにこの道以外を通るなんて出来んよ」
「うーん。何か方法はねぇかな……」
結界が解けない限りは私達は巫女様に会うことは出来ない。
どうして今日は通れないのだろう。
そう考えているうちに森に風が吹き始めた。
「なんか強くねぇか?」
「……」
「どうしましょう」
「ばあちゃん?」
「戻る他ないかもな」
「でも雅人が…!」
「美姫。冷静さを失うな。とりあえず村に戻って対策を…」
「なぁ美姫。お前いつの間に背が伸びたんだ?」
「えっ?背?」
カルイくんは不審な顔をしている。
私はカルイくんにそう言われて気付いたが、何故か妙に目線が合っていた。
カルイくんの方が私よりも身長は高いからいつも話す時は少しだけ目線を上にするのだ。
それなのに今は同じ位置に顔がある。
「み、美姫!お前!」
おばあちゃんが慌てた様子で私を見ながら地面に指を差した。
私は下を向いて何を差しているのか確認すると……地面に足が着いていない。
「浮いてる!?」
「え!?美姫早まるな!雅人は絶対見つかるから死んじゃダメだ!」
「バカ者!縁起でも無いこと言うでない!にしても美姫!戻って来なされ!」
「別に早まってる訳ではないんですけど!」
カルイくんとおばあちゃんは宙に浮き始めた私を連れ戻すように腕を引っ張る。
しかし私の上昇は止まらずに足だけが上へ上へと昇って行った。
逆立ちするかのように宙に浮いてワンピースが捲れ始める所まで来ている。
「なんだこの力!美姫お前そんなに力あったのか!?オレまで引っ張られそうだ!」
「私は力無い方だよ!体力測定でも下の方だし!」
「タイ、ソク…?何を言ってるかわからないがワシ達の手を離すなよ!」
2人は私を地面へ降ろそうと頑張ってくれるが、歳を取っているおばあちゃんは限界が来たようでカルイくんに両手を託す。
しかしカルイくんも顔を真っ赤にして力を込めるけど状況は悪くなる一方だった。
「カルイくん……私、手が痺れて…」
「諦めるな!まだオレは力出せる……!」
「ワシがべっぴんだった時はもっと力になれたのに」
「ばあちゃん!へこたれてないで他の大人呼んできてよ!!」
「きゃぁ!!」
「「美姫!」」
最後の仕上げと言わんばかりに地面から私に向かって風が湧き上がりカルイくんの手から私の手が離れる。
痺れが少しずつ引いていくのと同時に私の体は空へと飛ばされた。
ワンピースの下側を押さえながらグルグルと体が回り、森の奥へと飛ばされる。
カルイくんとおばあちゃんの姿も見えなくなってしまった。
私は急な酔いが来て片手でウッと口を塞ぐ。
出るまではいかないが……キツい。
「少し高めのジェットコースターでも……ダメなのに……」
いつしか私の視界は気持ち悪さと不安からの涙で潤う。
「雅人…」
小さくてもその言葉を口にすれば雅人はいつでも私に寄り添ってくれた。
かっこ悪いからと涙は見せることは無かったけど、沢山の弱さは見せている。
しかしそんな雅人は今居ない。
どこでも私に着いていこうとしていたのに、居ないのが現在の事実だ。
それなのに私はまだ名前を呼んでいる。
そうだ。私は……
「雅人の優しさに、触れていたいんだ…」
気付いた言葉を口にした私の体は涙と共に下へと落ちて行く。
このまま地面に落ちれば大怪我では済まないだろう。
最後に見た雅人の笑顔と言葉は、昨日の夜交わしたおやすみだった。
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