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異世界 〜守り守られるはずなのに〜
巫女様の秘密
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帰る…?
巫女様が言った事が俺は理解できなくてずっと同じ表情で固まってしまう。
巫女様の腕が強く俺を引き寄せて耳元に口を近づけて囁いた。
「神の悪戯によって遊ばれた者は貴方達だけではありませんよ」
「それって…」
「私は貴方を気に入っている。今まで会ってきた人の中で誰よりも優しい。貴方が美姫のことを完全に諦めるなら……私が貴方の側に居ます」
淡々と話す口調の意味のことは大体わかってる。
俺は巫女様に告白された。
しかし情報が一気に俺の頭の中に入り込んで深くは考えられない。
ずっと俺の鎖骨辺りに擦り寄っていた巫女様は顔を上げて目を見る。
何を考えているのか読めない表情。
この状況無しで見ればいつものように優しい目をして微笑んでいる。
状況有りで考えれば、からかって楽しんでいるのか?
俺を試そうとしているのか?
そしたら次に何故そんなことを?と出てくるけど巫女様の考えを解くことは出来ない。
「雅人の話をしたら、私の話もすると約束しましたね」
「…はい」
「このまま聞いてください。私はこの世界の者ではありません」
「それじゃあ、何で…」
「いいえ。付け足します。私の意識はこの世界で誕生したものではありません……ですね。体部分はこの世界で生まれたもの。わかりましたか?」
「言った言葉の意味はわかりました。ただ、話が全く読めないです」
「ええ。今から話します。だから逸らさないで」
巫女様と見つめ合っていた俺が少し視線を外すと両手で頬を掴まれて強引に目を合わせてくる。
「私の意識は、日本で産まれて育ちました」
「俺達と、同じ」
「そうです。しかし私は幼い頃から病弱で20の時に完全に意識が無くなった。そして目覚めたらこの世界の赤子として誕生していたのです」
「…転生ってやつですか?」
「いいえ。日本にいる私は死んでいません。だって、声が聞こえるのですから」
「声?」
「時々、私の名前を呼んでくれる声がします。今日はこんな事があったよ、明日もまた来るね……と。これは意識のない私の体に誰かが話しかける声。それがわかったのはこの世界に来て15年経った頃です」
巫女様は頬に当てた手を離さず俺に語り続けた。
しかし俺の中でとある記憶と疑問が浮かんでくる。
それは以前、おばあちゃんが言っていた事だった。
『ワシが生きている間では雅人が初めてじゃ。先代の巫女様には護衛がいたと言う記録が残されておる』
護衛に関しての手紙を届けた時におばあちゃんが口にしたのもの。
その話通りなら巫女様は100年はこの世界にいる事になる。
しかしそれだと頭の中に語りかけてくる声は何なのだろう。
年齢的に考えて100年もの間、意識のない人に話をするのは可能な事なのか?
両親なら何年でも側に居てあげるという気持ちはあるかもしれないけど年齢からして必然的に両親の方が早く亡くなってしまう。
「えっと、、ちょっと待ってください……」
「逃げないでください。今は私の目を見て話を聞いてるだけで良いのです。この体についてでしょう?」
「わかるんですか?」
「貴方は素直な人ですから」
「ふふっ」と巫女様は愛おしそうなものを見るような目で笑いを溢した。
わかりやすい表情をしてしまった俺の負けだ。
「この体は私の2つ目の人形です」
「どういう事ですか?」
「先代巫女の体と言った方がわかりやすいですね。この世界で授かった体……つまりもう1つの体で過ごしていた当時の私は先代巫女と共にとある儀式をしました。
白虎様に仕える巫女は不老の存在。それがこの世界の理です。しかし先代巫女は老いで死なないことに辛く苦しみました。理由は1つ。先代巫女が愛した彼女の護衛が先に老いて亡くなってしまったから」
巫女様の話にまた、おばあちゃんの話し声が繰り返し脳内で思い出された。
『先代の巫女様には護衛がいたと言う記録が残されておる』
護衛はあくまでも村人と同じ存在。
いくら不老の人間の側にいてもその力は得られない。
先代の巫女様は置いて行かれてしまったのだ。
最も愛する人に。
巫女様が言った事が俺は理解できなくてずっと同じ表情で固まってしまう。
巫女様の腕が強く俺を引き寄せて耳元に口を近づけて囁いた。
「神の悪戯によって遊ばれた者は貴方達だけではありませんよ」
「それって…」
「私は貴方を気に入っている。今まで会ってきた人の中で誰よりも優しい。貴方が美姫のことを完全に諦めるなら……私が貴方の側に居ます」
淡々と話す口調の意味のことは大体わかってる。
俺は巫女様に告白された。
しかし情報が一気に俺の頭の中に入り込んで深くは考えられない。
ずっと俺の鎖骨辺りに擦り寄っていた巫女様は顔を上げて目を見る。
何を考えているのか読めない表情。
この状況無しで見ればいつものように優しい目をして微笑んでいる。
状況有りで考えれば、からかって楽しんでいるのか?
俺を試そうとしているのか?
そしたら次に何故そんなことを?と出てくるけど巫女様の考えを解くことは出来ない。
「雅人の話をしたら、私の話もすると約束しましたね」
「…はい」
「このまま聞いてください。私はこの世界の者ではありません」
「それじゃあ、何で…」
「いいえ。付け足します。私の意識はこの世界で誕生したものではありません……ですね。体部分はこの世界で生まれたもの。わかりましたか?」
「言った言葉の意味はわかりました。ただ、話が全く読めないです」
「ええ。今から話します。だから逸らさないで」
巫女様と見つめ合っていた俺が少し視線を外すと両手で頬を掴まれて強引に目を合わせてくる。
「私の意識は、日本で産まれて育ちました」
「俺達と、同じ」
「そうです。しかし私は幼い頃から病弱で20の時に完全に意識が無くなった。そして目覚めたらこの世界の赤子として誕生していたのです」
「…転生ってやつですか?」
「いいえ。日本にいる私は死んでいません。だって、声が聞こえるのですから」
「声?」
「時々、私の名前を呼んでくれる声がします。今日はこんな事があったよ、明日もまた来るね……と。これは意識のない私の体に誰かが話しかける声。それがわかったのはこの世界に来て15年経った頃です」
巫女様は頬に当てた手を離さず俺に語り続けた。
しかし俺の中でとある記憶と疑問が浮かんでくる。
それは以前、おばあちゃんが言っていた事だった。
『ワシが生きている間では雅人が初めてじゃ。先代の巫女様には護衛がいたと言う記録が残されておる』
護衛に関しての手紙を届けた時におばあちゃんが口にしたのもの。
その話通りなら巫女様は100年はこの世界にいる事になる。
しかしそれだと頭の中に語りかけてくる声は何なのだろう。
年齢的に考えて100年もの間、意識のない人に話をするのは可能な事なのか?
両親なら何年でも側に居てあげるという気持ちはあるかもしれないけど年齢からして必然的に両親の方が早く亡くなってしまう。
「えっと、、ちょっと待ってください……」
「逃げないでください。今は私の目を見て話を聞いてるだけで良いのです。この体についてでしょう?」
「わかるんですか?」
「貴方は素直な人ですから」
「ふふっ」と巫女様は愛おしそうなものを見るような目で笑いを溢した。
わかりやすい表情をしてしまった俺の負けだ。
「この体は私の2つ目の人形です」
「どういう事ですか?」
「先代巫女の体と言った方がわかりやすいですね。この世界で授かった体……つまりもう1つの体で過ごしていた当時の私は先代巫女と共にとある儀式をしました。
白虎様に仕える巫女は不老の存在。それがこの世界の理です。しかし先代巫女は老いで死なないことに辛く苦しみました。理由は1つ。先代巫女が愛した彼女の護衛が先に老いて亡くなってしまったから」
巫女様の話にまた、おばあちゃんの話し声が繰り返し脳内で思い出された。
『先代の巫女様には護衛がいたと言う記録が残されておる』
護衛はあくまでも村人と同じ存在。
いくら不老の人間の側にいてもその力は得られない。
先代の巫女様は置いて行かれてしまったのだ。
最も愛する人に。
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