36 / 53
異世界 〜守り守られるはずなのに〜
貴方への想いの現状
しおりを挟む
「雅人、貴方の話が聞きたいです」
「俺の話ですか?」
「ええ。貴方がここに来る前の話を、良ければ聞かせてください」
「でもつまらない話ですよ。特に変わりない日々でしたので」
「良いのです。私は貴方という人物が知りたい」
巫女様はいつものように微笑んで俺に顔を向ける。
俺は頭の中で何を話そうかと考えるけどウケる話なんてなかった。
学校の話なんてどうだろう?
しかしこの世界で通用する単語が無さすぎてちゃんと説明出来なそうだ。
教科書とか部活とか言ってもその後の解説が俺には難しい。
こんな時、頭の回転が速い美姫ちゃんが居ればスラスラ説明出来ていたのに。
悩む俺に巫女様は静かに笑った。
「勿論、身近な人の話でも構いません。例えば……貴方が1番想っている人の話とか」
「み、巫女様!?」
「ふふっ」
もしかして気付いているのか?
俺は巫女様の言葉にドキリと嫌な心臓の鳴り方をしてしまう。
それに釣られて顔が徐々に熱を帯びてきた。
「あの、想っているというのは?」
「雅人が1番わかるはずです」
「うう……」
こんな反応で返せば想っている人が居ますと言っているのと同じだ。
俺は自分の反応がわかりやすいことに肩を落とした。
美姫ちゃんにも言われているけど、表情とか口調でわかってしまうほど俺の感情は真っ直ぐだ。
クール過ぎる人からしたら羨ましいのかもしれないけど、わかりやすいのもどうかと思う。
「巫女様は、いつからその事を気付いて…?」
「いつでしょう。でも貴方が美姫を見る目はとても優しく感じます」
「相手もバレてる……!」
「恥ずかしいことではありません。寧ろ、誰かを愛せる自分を誇ってください」
「でも、それがバレるのは俺には恥ずかく感じます…」
「大丈夫。どうせ結婚すれば皆の公に出るのですから」
「けっ、結婚!?いや、まだ俺にはその言葉は早すぎると言いますか!!」
「結婚は例えですよ」
穏やかな口調の巫女様に対して俺は顔を赤くさせながら結婚の言葉に両手を横に振る。
そんな様子も面白いようで巫女様は楽しそうに微笑んでいた。
「私は、ずっとここに1人で居ます。だから誰かとこんなたわいもない話をする事もないのです。今日だけは許してください」
「そ、そんな事言われたら…」
「ならば私の話も聞かせましょう。そうすればお互いに対等かと」
「……わかりました。そもそも巫女様のお願いを断ったら村の人達に怒られそうなので」
「ありがとう、雅人」
俺は巫女様に聞こえないくらいのため息を吐いてから自分の中で過去を遡った。
「いつから好きになっていたかはわからないです。俺と美姫ちゃんは小さい頃からずっと一緒にいたので。でも思い出せば頭の中に映る小さな俺には常に美姫ちゃんが隣に居ました。親同士も仲良しだったのでお互いの家を行き来して遊んでましたから。ずっと一緒に居れば居るほど好きが強くなってしまって……。実は、この世界に来る前に美姫ちゃんに自分の想いを伝えたんです。結果は、、ダメでした」
「そうですか……」
「そういう目では見てないって言われました。流石の俺もずっと温めてきた想いが簡単に終わっちゃったので1人で大泣きですよ」
「もう、想いは伝えないのですか?」
「……それが、昨日巫女様に相談した件に繋がります」
「というのは?」
「美姫ちゃんが無くしたと言った記憶の1部。それは俺が美姫ちゃんに2回目の想いを伝えた時のことです。その部分だけが消えていて。……俺からの告白は全部忘れられてしまっています……。1回目も、2回目も、忘れられて…」
「雅人……」
「ごめんなさい。悲しい感じになっちゃいました」
「良いんです。私が聞いたことなので。貴方も大変な想いをしたのですね」
「……今はもう想いを伝えようって考えは消えつつあります。一晩経てば忘れるから大丈夫っていう考えもありますけど、美姫ちゃんは俺を好きな人という目では見てくれない。もし元の世界に帰っても、俺は諦める予定です」
話せば話すほど自分の声の音色が沈んでいくのが丸わかりで逆に面白くなってくる。
巫女様は上半身だけゆっくりと体を上げた。
「巫女様、まだ体を起こすのはやめた方が…」
「雅人。貴方は帰りたいですか?」
「えっ?」
「元の世界に帰りたいですか?」
「それは……この世界も好きですけど、あっちの世界には自分の家族が居ます。それに美姫ちゃんだって」
「美姫のことは考えなくて良い。貴方が帰りたいと望むのであれば……」
「巫女様?」
俺の体が巫女様の腕の中に包まれる。
柔らかい感触が、巫女様の香りが、俺の全てを包み込むようだった。
「私と一緒に帰りましょう」
「俺の話ですか?」
「ええ。貴方がここに来る前の話を、良ければ聞かせてください」
「でもつまらない話ですよ。特に変わりない日々でしたので」
「良いのです。私は貴方という人物が知りたい」
巫女様はいつものように微笑んで俺に顔を向ける。
俺は頭の中で何を話そうかと考えるけどウケる話なんてなかった。
学校の話なんてどうだろう?
しかしこの世界で通用する単語が無さすぎてちゃんと説明出来なそうだ。
教科書とか部活とか言ってもその後の解説が俺には難しい。
こんな時、頭の回転が速い美姫ちゃんが居ればスラスラ説明出来ていたのに。
悩む俺に巫女様は静かに笑った。
「勿論、身近な人の話でも構いません。例えば……貴方が1番想っている人の話とか」
「み、巫女様!?」
「ふふっ」
もしかして気付いているのか?
俺は巫女様の言葉にドキリと嫌な心臓の鳴り方をしてしまう。
それに釣られて顔が徐々に熱を帯びてきた。
「あの、想っているというのは?」
「雅人が1番わかるはずです」
「うう……」
こんな反応で返せば想っている人が居ますと言っているのと同じだ。
俺は自分の反応がわかりやすいことに肩を落とした。
美姫ちゃんにも言われているけど、表情とか口調でわかってしまうほど俺の感情は真っ直ぐだ。
クール過ぎる人からしたら羨ましいのかもしれないけど、わかりやすいのもどうかと思う。
「巫女様は、いつからその事を気付いて…?」
「いつでしょう。でも貴方が美姫を見る目はとても優しく感じます」
「相手もバレてる……!」
「恥ずかしいことではありません。寧ろ、誰かを愛せる自分を誇ってください」
「でも、それがバレるのは俺には恥ずかく感じます…」
「大丈夫。どうせ結婚すれば皆の公に出るのですから」
「けっ、結婚!?いや、まだ俺にはその言葉は早すぎると言いますか!!」
「結婚は例えですよ」
穏やかな口調の巫女様に対して俺は顔を赤くさせながら結婚の言葉に両手を横に振る。
そんな様子も面白いようで巫女様は楽しそうに微笑んでいた。
「私は、ずっとここに1人で居ます。だから誰かとこんなたわいもない話をする事もないのです。今日だけは許してください」
「そ、そんな事言われたら…」
「ならば私の話も聞かせましょう。そうすればお互いに対等かと」
「……わかりました。そもそも巫女様のお願いを断ったら村の人達に怒られそうなので」
「ありがとう、雅人」
俺は巫女様に聞こえないくらいのため息を吐いてから自分の中で過去を遡った。
「いつから好きになっていたかはわからないです。俺と美姫ちゃんは小さい頃からずっと一緒にいたので。でも思い出せば頭の中に映る小さな俺には常に美姫ちゃんが隣に居ました。親同士も仲良しだったのでお互いの家を行き来して遊んでましたから。ずっと一緒に居れば居るほど好きが強くなってしまって……。実は、この世界に来る前に美姫ちゃんに自分の想いを伝えたんです。結果は、、ダメでした」
「そうですか……」
「そういう目では見てないって言われました。流石の俺もずっと温めてきた想いが簡単に終わっちゃったので1人で大泣きですよ」
「もう、想いは伝えないのですか?」
「……それが、昨日巫女様に相談した件に繋がります」
「というのは?」
「美姫ちゃんが無くしたと言った記憶の1部。それは俺が美姫ちゃんに2回目の想いを伝えた時のことです。その部分だけが消えていて。……俺からの告白は全部忘れられてしまっています……。1回目も、2回目も、忘れられて…」
「雅人……」
「ごめんなさい。悲しい感じになっちゃいました」
「良いんです。私が聞いたことなので。貴方も大変な想いをしたのですね」
「……今はもう想いを伝えようって考えは消えつつあります。一晩経てば忘れるから大丈夫っていう考えもありますけど、美姫ちゃんは俺を好きな人という目では見てくれない。もし元の世界に帰っても、俺は諦める予定です」
話せば話すほど自分の声の音色が沈んでいくのが丸わかりで逆に面白くなってくる。
巫女様は上半身だけゆっくりと体を上げた。
「巫女様、まだ体を起こすのはやめた方が…」
「雅人。貴方は帰りたいですか?」
「えっ?」
「元の世界に帰りたいですか?」
「それは……この世界も好きですけど、あっちの世界には自分の家族が居ます。それに美姫ちゃんだって」
「美姫のことは考えなくて良い。貴方が帰りたいと望むのであれば……」
「巫女様?」
俺の体が巫女様の腕の中に包まれる。
柔らかい感触が、巫女様の香りが、俺の全てを包み込むようだった。
「私と一緒に帰りましょう」
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました
珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。
なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる