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異世界 〜片想い〜
戦争と厄災
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しばらくの間息子さんと喋りながらお茶を飲んで時間を潰していると、おばあちゃんが手紙を読み終えたようで自分の湯呑みに口を付けた。
1口お茶を体に流したら俺の方を向いて感心するように頷く。
「巫女様の専属の護衛なんていつぶりだろうか…」
「前にも居たのですか?」
「ワシが生きている間では雅人が初めてじゃが、先代の巫女様には護衛がいたと言う記録が残されておる」
「俺は護衛があるなんて初耳だな。てことは、雅人は強いのか?」
「いやいや、俺は全く喧嘩なんてした事ないよ。筋肉だって付いてないし…」
「巫女様は雅人の人柄で選んだそう。この手紙にも書いてある」
「なるほどな。お袋みたいな変な性格の人はお断りってわけだ!」
「ヒッヒッ、ワシは巫女様を護衛できるほど若くはないわい」
息子さんとおばあちゃんは笑って話す。
おばあちゃんが生きている間では初めてと言うことはやはり巫女様の年齢は相当行っているはずだ。
それなのにあの若々しい見た目。
何の秘密が隠されているのだろう。
しかしそんな事聞いたらまた美姫ちゃんに殴られてしまう。
俺は自分から出る好奇心をグッと堪えた。
「巫女様にその手紙を読んだ後、おばあちゃんの言う通りにしろって言われたんだ。俺はどうすればいい?」
「やる事は2つ。武器の調達と護衛の衣装の入手じゃ」
「それだけでいいの?」
「手紙にはそう書いてある。あんた、雅人を案内してくれないか?武器と護衛の衣装を作ってもらえる家に」
「わかった。雅人のためなら喜んで引き受けよう」
おばあちゃんが息子さんに頼むと快く引き受けてくれる。
息子さんは座布団からお尻を離すと玄関へ歩いて行った。
俺も着いてくように玄関に向かう。
今の服には合わないスニーカーを履いて外へ出ると息子さんはおばあちゃんに忠告するよう指を差した。
「あいつが帰って来ても変な事を言わないように!特に怖い話はな!」
「わかっておる」
「本当か…?」
息子さんは納得しない表情だったが渋々と家の玄関を閉めると先に外へ出た俺に駆け寄って来た。
「それじゃあ早速行くか!武器から話に行こう。まぁ作るまでに時間がかかると思うから今すぐには手に入らないからな?」
「了解。武器を作ってる家はどこなの?」
「お前も知っているカルイの家だ」
「えっカルイの家?」
「あそこは何代も続いている武器職人の家系。今はカルイの親父さんが武器を作っている」
息子さんは見張り台の下にあるカルイの家へ歩き出す。
「この村の人達って武器は使う方なの?」
「戦争さえ起こらなければ狩りに使う一択だな。でも昔は戦争が頻繁にあったらしいから武器を作る技術は絶やさないでいるんだ。何かあってからじゃ遅い」
「そっか。やっぱりどこの世界でも戦争はあるんだね」
「雅人達の所にも戦いはあるのか?」
「俺達の国は平和な方だよ。酷いところはまだ戦っている場所もある」
「戦いなんてしたって面白くないのにな。全くだ」
「本当にそう思うよ」
この世界にもやはり戦争はあるみたいだった。
よく考えれば今居る地方、ビャッコ以外にも人は住んでいるのだ。
争いの1つ2つは起こってしまうのだろう。
それに頭の中をよぎるのは巫女様との話で出て来た『厄災』の言葉。
もし俺達があの物語通りの人物なのであれば『厄災』は起こってしまう。
どんなものが起きるかは想像も出来ないけど、戦争だって『厄災』の1つだ。
俺は何だか不安になる。
勝手に事件を起こして勝手に終わらせる立場であると考えられる俺と美姫ちゃんはこれからどうすればいいのだろう。
カルイの家の前に着いて息子さんに肩を叩かれるまで俺はずっと考え込んでしまった。
1口お茶を体に流したら俺の方を向いて感心するように頷く。
「巫女様の専属の護衛なんていつぶりだろうか…」
「前にも居たのですか?」
「ワシが生きている間では雅人が初めてじゃが、先代の巫女様には護衛がいたと言う記録が残されておる」
「俺は護衛があるなんて初耳だな。てことは、雅人は強いのか?」
「いやいや、俺は全く喧嘩なんてした事ないよ。筋肉だって付いてないし…」
「巫女様は雅人の人柄で選んだそう。この手紙にも書いてある」
「なるほどな。お袋みたいな変な性格の人はお断りってわけだ!」
「ヒッヒッ、ワシは巫女様を護衛できるほど若くはないわい」
息子さんとおばあちゃんは笑って話す。
おばあちゃんが生きている間では初めてと言うことはやはり巫女様の年齢は相当行っているはずだ。
それなのにあの若々しい見た目。
何の秘密が隠されているのだろう。
しかしそんな事聞いたらまた美姫ちゃんに殴られてしまう。
俺は自分から出る好奇心をグッと堪えた。
「巫女様にその手紙を読んだ後、おばあちゃんの言う通りにしろって言われたんだ。俺はどうすればいい?」
「やる事は2つ。武器の調達と護衛の衣装の入手じゃ」
「それだけでいいの?」
「手紙にはそう書いてある。あんた、雅人を案内してくれないか?武器と護衛の衣装を作ってもらえる家に」
「わかった。雅人のためなら喜んで引き受けよう」
おばあちゃんが息子さんに頼むと快く引き受けてくれる。
息子さんは座布団からお尻を離すと玄関へ歩いて行った。
俺も着いてくように玄関に向かう。
今の服には合わないスニーカーを履いて外へ出ると息子さんはおばあちゃんに忠告するよう指を差した。
「あいつが帰って来ても変な事を言わないように!特に怖い話はな!」
「わかっておる」
「本当か…?」
息子さんは納得しない表情だったが渋々と家の玄関を閉めると先に外へ出た俺に駆け寄って来た。
「それじゃあ早速行くか!武器から話に行こう。まぁ作るまでに時間がかかると思うから今すぐには手に入らないからな?」
「了解。武器を作ってる家はどこなの?」
「お前も知っているカルイの家だ」
「えっカルイの家?」
「あそこは何代も続いている武器職人の家系。今はカルイの親父さんが武器を作っている」
息子さんは見張り台の下にあるカルイの家へ歩き出す。
「この村の人達って武器は使う方なの?」
「戦争さえ起こらなければ狩りに使う一択だな。でも昔は戦争が頻繁にあったらしいから武器を作る技術は絶やさないでいるんだ。何かあってからじゃ遅い」
「そっか。やっぱりどこの世界でも戦争はあるんだね」
「雅人達の所にも戦いはあるのか?」
「俺達の国は平和な方だよ。酷いところはまだ戦っている場所もある」
「戦いなんてしたって面白くないのにな。全くだ」
「本当にそう思うよ」
この世界にもやはり戦争はあるみたいだった。
よく考えれば今居る地方、ビャッコ以外にも人は住んでいるのだ。
争いの1つ2つは起こってしまうのだろう。
それに頭の中をよぎるのは巫女様との話で出て来た『厄災』の言葉。
もし俺達があの物語通りの人物なのであれば『厄災』は起こってしまう。
どんなものが起きるかは想像も出来ないけど、戦争だって『厄災』の1つだ。
俺は何だか不安になる。
勝手に事件を起こして勝手に終わらせる立場であると考えられる俺と美姫ちゃんはこれからどうすればいいのだろう。
カルイの家の前に着いて息子さんに肩を叩かれるまで俺はずっと考え込んでしまった。
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