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異世界 〜片想い〜
見慣れない森
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ふかふかとした感覚が全体で感じ取れる。
なんで俺は寝ているんだろう。
考えても上手く頭が回らなくて何も浮かばなかった。
すると俺の頬に風のようなものが触れると同時に首に何かが当たりくすぐったくなってしまい、目を開けた。
最初に見えたのは真っ青に染まる空と白い雲。
少し眩しくて目を細める。
「う…ん…」
少し顔を動かすと、首に触れていたものの正体は草だった。
なんで草?
俺はまだボーッとして理解が出来ない。
いくら寝起きでもこんなに頭が回らないものなのか。
初めての感覚に近い気がする。
俺は目を何回か瞬きさせて体を覚ました。
上半身だけ起こすと、瞬間的な目眩が起こる。
また目を閉じて目眩が治るのを待った。
なんだか右手が暖かい。
目が覚めて五感も戻ってきたのだろうか。
俺は薄っすら目を開けて右手を確認すると誰かに手を握られていた。
「え……」
細くて白い指。
以前少しだけ自分は手が大きいんだと言って悩んでいたという手の主が隣で寝ていた。
目は開いてないけど、呼吸はちゃんとしているので死んでいるわけではなさそうだ。
俺は慌てて掴まれていた手を離してしまう。
「み、美姫ちゃん」
「ん……」
「おーい」
俺は声をかけながら周りを見渡す。
ここは森だった。
近くに川が流れていて音が心地よい。
なぜ俺達はここで横になっていた?
自分1人の力では解決できなくて、美姫ちゃんに呼びかける。
「まさ、と?」
「美姫ちゃん、起きて」
「いたっ…」
「大丈夫!?」
「大丈夫。急に頭動かしたから…」
美姫ちゃんも俺と同じように上半身を起こす。
周りをキョロキョロと見始めた。
「どこ?」
「わからない」
「あれ?私達ピクニック来てたっけ?」
「なんか前のことがあやふやで…」
「私もよくわからない…」
2人でも理解できなかった。
美姫ちゃんは立ち上がって服に着いた草を払い落とす。
「とりあえずお父さん達探そう?流石に雅人と2人でピクニック来たわけじゃ無いと思うから」
「あ、うん」
その発言からして俺と2人は絶対有り得ないと言うことなのか。
少し悲しくなる。
俺も立ち上がって改めて周りを見渡すが、木々が生い茂って遠くまでは見えない。
「どっちに行こうか?」
「声とかは…聞こえないよね…」
「俺の耳では全く」
「私の耳も同じ」
耳に手を当てたって聞こえてくるのは川の流れる音と、小さく聞こえる小鳥のさえずり。
音で家族を見つけるのは難しそうだ。
「と、とりあえず歩く?」
「うん…」
俺の意見に美姫ちゃんは頷いて歩き出す。
ひとまず開けた道を辿るように足を進めた。
「どう言う理由であそこで2人で寝てたんだろうね」
「わからない。俺が先に目を覚ましたけど、詳しいことは思い出せなくて」
「私も」
「どこまで覚えてる?」
「えっ?どこまでだろう…」
俺は歩きながら思い出そうと頑張ってみる。
しかし直前の出来事は全く覚えてないのだ。
覚えてるとしたら…夕日。
そして美姫ちゃんと俺。
家が立ち並ぶ住宅街……。
「告白……っ」
「ん?誰に?」
「えっ!?いや、その…」
「雅人は何か思い出せたの?」
「いや、何も」
「そっか私は学校で模試をやった時だけ浮かんだ。でもその後のことが全くわからないの」
「模試…?」
「うん。あ、そういえばその日の朝に雅人が一緒に帰ろって言ってくれたんだよね。久しぶりで嬉しかった記憶がある。そこからは全くなんだけど」
「それって…俺が帰り道に話した内容は?」
「何話したの?」
美姫ちゃんの顔は至って真剣だ。
嘘をついているのでもなく、俺に気を遣っているわけでもなさそうだ。
でもそしたら俺の記憶はどうなのだろう。
美姫ちゃんは覚えてない。
しかし俺は告白を覚えている。
勿論返事だって脳に焼きつくように。
けれどその記憶は本物なのだろうか。
でも恋心は幼少期からあるので本物だ。
今この瞬間だってドキドキしている。
色んな意味を含めてだが。
「雅人大丈夫?」
「えっ」
「難しい顔してるから」
「あっ、ああ。大丈夫!」
「疲れたら言ってね。休憩しよ」
「わかった。美姫ちゃんも遠慮なく言って」
「ありがとう!」
本当に可愛い笑顔だな。
普段は美人系なのに、笑うと幼く感じる。
もう告白が真実の記憶か嘘の記憶かなんてどうだっていいや。
今普通に俺達は笑っていられるのだから。
告白の返事を貰った後のことは記憶にないけど、きっと喋れなくなっていたと思う。
だったら忘れていた方がいい。
隣を歩く美姫ちゃんを見て自分に言い聞かせていた。
なんで俺は寝ているんだろう。
考えても上手く頭が回らなくて何も浮かばなかった。
すると俺の頬に風のようなものが触れると同時に首に何かが当たりくすぐったくなってしまい、目を開けた。
最初に見えたのは真っ青に染まる空と白い雲。
少し眩しくて目を細める。
「う…ん…」
少し顔を動かすと、首に触れていたものの正体は草だった。
なんで草?
俺はまだボーッとして理解が出来ない。
いくら寝起きでもこんなに頭が回らないものなのか。
初めての感覚に近い気がする。
俺は目を何回か瞬きさせて体を覚ました。
上半身だけ起こすと、瞬間的な目眩が起こる。
また目を閉じて目眩が治るのを待った。
なんだか右手が暖かい。
目が覚めて五感も戻ってきたのだろうか。
俺は薄っすら目を開けて右手を確認すると誰かに手を握られていた。
「え……」
細くて白い指。
以前少しだけ自分は手が大きいんだと言って悩んでいたという手の主が隣で寝ていた。
目は開いてないけど、呼吸はちゃんとしているので死んでいるわけではなさそうだ。
俺は慌てて掴まれていた手を離してしまう。
「み、美姫ちゃん」
「ん……」
「おーい」
俺は声をかけながら周りを見渡す。
ここは森だった。
近くに川が流れていて音が心地よい。
なぜ俺達はここで横になっていた?
自分1人の力では解決できなくて、美姫ちゃんに呼びかける。
「まさ、と?」
「美姫ちゃん、起きて」
「いたっ…」
「大丈夫!?」
「大丈夫。急に頭動かしたから…」
美姫ちゃんも俺と同じように上半身を起こす。
周りをキョロキョロと見始めた。
「どこ?」
「わからない」
「あれ?私達ピクニック来てたっけ?」
「なんか前のことがあやふやで…」
「私もよくわからない…」
2人でも理解できなかった。
美姫ちゃんは立ち上がって服に着いた草を払い落とす。
「とりあえずお父さん達探そう?流石に雅人と2人でピクニック来たわけじゃ無いと思うから」
「あ、うん」
その発言からして俺と2人は絶対有り得ないと言うことなのか。
少し悲しくなる。
俺も立ち上がって改めて周りを見渡すが、木々が生い茂って遠くまでは見えない。
「どっちに行こうか?」
「声とかは…聞こえないよね…」
「俺の耳では全く」
「私の耳も同じ」
耳に手を当てたって聞こえてくるのは川の流れる音と、小さく聞こえる小鳥のさえずり。
音で家族を見つけるのは難しそうだ。
「と、とりあえず歩く?」
「うん…」
俺の意見に美姫ちゃんは頷いて歩き出す。
ひとまず開けた道を辿るように足を進めた。
「どう言う理由であそこで2人で寝てたんだろうね」
「わからない。俺が先に目を覚ましたけど、詳しいことは思い出せなくて」
「私も」
「どこまで覚えてる?」
「えっ?どこまでだろう…」
俺は歩きながら思い出そうと頑張ってみる。
しかし直前の出来事は全く覚えてないのだ。
覚えてるとしたら…夕日。
そして美姫ちゃんと俺。
家が立ち並ぶ住宅街……。
「告白……っ」
「ん?誰に?」
「えっ!?いや、その…」
「雅人は何か思い出せたの?」
「いや、何も」
「そっか私は学校で模試をやった時だけ浮かんだ。でもその後のことが全くわからないの」
「模試…?」
「うん。あ、そういえばその日の朝に雅人が一緒に帰ろって言ってくれたんだよね。久しぶりで嬉しかった記憶がある。そこからは全くなんだけど」
「それって…俺が帰り道に話した内容は?」
「何話したの?」
美姫ちゃんの顔は至って真剣だ。
嘘をついているのでもなく、俺に気を遣っているわけでもなさそうだ。
でもそしたら俺の記憶はどうなのだろう。
美姫ちゃんは覚えてない。
しかし俺は告白を覚えている。
勿論返事だって脳に焼きつくように。
けれどその記憶は本物なのだろうか。
でも恋心は幼少期からあるので本物だ。
今この瞬間だってドキドキしている。
色んな意味を含めてだが。
「雅人大丈夫?」
「えっ」
「難しい顔してるから」
「あっ、ああ。大丈夫!」
「疲れたら言ってね。休憩しよ」
「わかった。美姫ちゃんも遠慮なく言って」
「ありがとう!」
本当に可愛い笑顔だな。
普段は美人系なのに、笑うと幼く感じる。
もう告白が真実の記憶か嘘の記憶かなんてどうだっていいや。
今普通に俺達は笑っていられるのだから。
告白の返事を貰った後のことは記憶にないけど、きっと喋れなくなっていたと思う。
だったら忘れていた方がいい。
隣を歩く美姫ちゃんを見て自分に言い聞かせていた。
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