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卵が平等に配られてこそ、ニンゲンは繁栄する
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「あそこに高い塔があるだろう。あそこに住んでいるのがおとうさまさ。塔に住んでるからおとうさまって呼ばれてる。世界で一番強い翼をもつ者さ」
「一番強いラ・ズーって、どうやって決めるんですか」
ヨンジンが興味をそそられたように聞いた。
「一番高い塔を建てたからだろうね」
翼をもつ者は結婚すると、おひめさまが安全に卵を産めるように巣を作る。強いラ・ズーほど大きな巣を作ると言われている。おとうさまの作ったのはただの巣なんてものじゃない、私たち翼をもたぬ者が登ったら、下りてくることもできないくらい高い塔なのさ。
「まあ一番と言っても世界中を調べたわけじゃないだろうけど、たまたまオルさまがこの近くの森に住んでたから、おとうさまが一番強いってことに決めたんだろう」
「オルさまって誰ですか」
「このお城を建てた偉い人さ」
おとうさまが建てた塔のそばにお城を建てて、クデカの都と定めたのがオルさまだ。オルさまによると、最も強いラ・ズーにおひめさまを与えて、いい卵を産ませることがニンゲンを繁栄させる近道なんだそうだ。
おひめさまは1年に1人しか生まれないと言われてる。おひめさまが生まれたら、お城に連れてこなければいけないし、エマニの実が生ったらお城に献上しなければいけない。この掟もオルさまが決めた。卵祭りもそれから始まったんだ。それでニンゲンが繁栄しているのかどうかはよくわからないけれど、卵祭りに来れば卵がもらえるチャンスがあるし、売り物もたくさん売れるのは事実だ。大きなお祭りは楽しいしね。だからみんな遠路はるばる卵祭りに足を運ぶ。オルさまって人はよほど頭がいいんだろうね。
「卵が平等に配られてこそ、ニンゲンは繁栄する。それが秩序だ」
というのが、卵祭りで演説の締めくくりにオルさまがいつも言うせりふだ。『それが秩序だ』というのがオルさまの口癖で、この言葉は私たちノル・ズーの間でしばらく流行した。
「私が育てたむすめの中には、おひめさまのお世話係として働いている子もいるんだよ。アーユーラっていうんだ」
私は胸を張った。短命な翼をもつ者に比べると私たちノル・ズーはとても長生きで、政治や経済活動をすべてを取り仕切っている。中でもお城で働くノル・ズーは私たちの憧れの的だ。アーユーラは私の自慢のむすめなんだ。
ノル・ズーのほとんどは私たちのように、狩りをしたり作物を育てたりして、時にはそれを売って暮らしている。群れを作ってみんなで卵を育てもする。私たちにはお金はあまり必要ないんだ。特に田舎では使い道がないからね。卵も育てずにお城で働くのはよほど野心のある者だけだ。
もちろんやる気さえあればお城で働けるってわけじゃない。何か取り柄がなくちゃいけない。アーユーラの場合は人なつっこさだろうね。この子が大人になった時、都で暮らしたいと言いだしたので、卵祭りに連れてきた時に置いてきた。それから自分でうまいことやってハルマヤさまのお世話係にまでなったんだから大したものだ。
まずはお城に出入りしてる物売りと仲良くなって、そのつてでお城の料理人と仲良くなって……そういう具合にいろんな人に顔を売っておひめさまのお世話を任されるようになったんだ。
おひめさまのお世話をするには、何よりもおひめさまと仲良くなれなきゃいけない。おひめさまっていうのはおそろしく自己中心的だから、寛大でなくては付き合えないんだ。ちやほやされて育つせいもあるだろうけど、エマをもつ者は生まれつきプライドが高いからね。アーユーラは誰にでも惜しみなく愛を注ぐから、誰からも好かれる。人から好かれるためならすべてを差し出すようなところがあって、そこがかえって欠点かもしれないね。
「オルさまは今頃エマニの実が届けられるのを首を長くして待ってるはずだよ。アーユーラは私が卵祭りに来るといつも仕事を抜け出して会いに来てくれる。紹介してあげるから、オルさまのところへ案内してもらうといいよ」
「一番強いラ・ズーって、どうやって決めるんですか」
ヨンジンが興味をそそられたように聞いた。
「一番高い塔を建てたからだろうね」
翼をもつ者は結婚すると、おひめさまが安全に卵を産めるように巣を作る。強いラ・ズーほど大きな巣を作ると言われている。おとうさまの作ったのはただの巣なんてものじゃない、私たち翼をもたぬ者が登ったら、下りてくることもできないくらい高い塔なのさ。
「まあ一番と言っても世界中を調べたわけじゃないだろうけど、たまたまオルさまがこの近くの森に住んでたから、おとうさまが一番強いってことに決めたんだろう」
「オルさまって誰ですか」
「このお城を建てた偉い人さ」
おとうさまが建てた塔のそばにお城を建てて、クデカの都と定めたのがオルさまだ。オルさまによると、最も強いラ・ズーにおひめさまを与えて、いい卵を産ませることがニンゲンを繁栄させる近道なんだそうだ。
おひめさまは1年に1人しか生まれないと言われてる。おひめさまが生まれたら、お城に連れてこなければいけないし、エマニの実が生ったらお城に献上しなければいけない。この掟もオルさまが決めた。卵祭りもそれから始まったんだ。それでニンゲンが繁栄しているのかどうかはよくわからないけれど、卵祭りに来れば卵がもらえるチャンスがあるし、売り物もたくさん売れるのは事実だ。大きなお祭りは楽しいしね。だからみんな遠路はるばる卵祭りに足を運ぶ。オルさまって人はよほど頭がいいんだろうね。
「卵が平等に配られてこそ、ニンゲンは繁栄する。それが秩序だ」
というのが、卵祭りで演説の締めくくりにオルさまがいつも言うせりふだ。『それが秩序だ』というのがオルさまの口癖で、この言葉は私たちノル・ズーの間でしばらく流行した。
「私が育てたむすめの中には、おひめさまのお世話係として働いている子もいるんだよ。アーユーラっていうんだ」
私は胸を張った。短命な翼をもつ者に比べると私たちノル・ズーはとても長生きで、政治や経済活動をすべてを取り仕切っている。中でもお城で働くノル・ズーは私たちの憧れの的だ。アーユーラは私の自慢のむすめなんだ。
ノル・ズーのほとんどは私たちのように、狩りをしたり作物を育てたりして、時にはそれを売って暮らしている。群れを作ってみんなで卵を育てもする。私たちにはお金はあまり必要ないんだ。特に田舎では使い道がないからね。卵も育てずにお城で働くのはよほど野心のある者だけだ。
もちろんやる気さえあればお城で働けるってわけじゃない。何か取り柄がなくちゃいけない。アーユーラの場合は人なつっこさだろうね。この子が大人になった時、都で暮らしたいと言いだしたので、卵祭りに連れてきた時に置いてきた。それから自分でうまいことやってハルマヤさまのお世話係にまでなったんだから大したものだ。
まずはお城に出入りしてる物売りと仲良くなって、そのつてでお城の料理人と仲良くなって……そういう具合にいろんな人に顔を売っておひめさまのお世話を任されるようになったんだ。
おひめさまのお世話をするには、何よりもおひめさまと仲良くなれなきゃいけない。おひめさまっていうのはおそろしく自己中心的だから、寛大でなくては付き合えないんだ。ちやほやされて育つせいもあるだろうけど、エマをもつ者は生まれつきプライドが高いからね。アーユーラは誰にでも惜しみなく愛を注ぐから、誰からも好かれる。人から好かれるためならすべてを差し出すようなところがあって、そこがかえって欠点かもしれないね。
「オルさまは今頃エマニの実が届けられるのを首を長くして待ってるはずだよ。アーユーラは私が卵祭りに来るといつも仕事を抜け出して会いに来てくれる。紹介してあげるから、オルさまのところへ案内してもらうといいよ」
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