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第三章「レゼンタック」
第百五話「小さな約束」
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「ヒナコ遅いね」
「俺ちょっとみてくるよ」
俺がそう言いながら立ち上がると、ケイが俺の腕を強く引っ張る。
「待って、足怪我してるでしょ?」
「ヒナコちゃんなら大丈夫だよ」
「……それもそうか」
俺は再びベンチに座ると空を見上げる。
「怪我痛くないの?」
「痛いよ」
「もう仕事辞めたら?」
「二人だけならわたしのお給料で十分だよ?」
「あ、言うの忘れてたけど昇級審査に合格したらバイト辞めていいよ」
「楽しいなら別だけどさ」
「バイトは辞めない」
「アレンは痛いのに楽しいの?」
「うーん、どうなんだろ」
「よく分からない」
「でも楽しい人はいっぱいいるよ」
「じゃあやっぱり仕事辞めたほうがいいよ」
「また怪我するよ?」
「でも性に合ってるしなぁ」
「他に働き口を探すのも面倒だし」
「さすがに未成年に養われるほど悲しい人間にはなりたくないよ」
「無理してカイの代わりにならなくてもいいよ」
「わたし、平気だからね」
俺は空からケイの方に目を向ける。
「その口、また新しいの買ったの?」
「うん、すごい人気のやつ」
「アメリアさんと同じだよ」
「ふーん」
「色強すぎ、子供には似合わない」
「今の話と関係ないじゃん」
「まだ12歳なんだからさ、ケイこそ無理に大人にならなくてもいいよ」
「何もしなくても来年になったら大人になるんだから」
「あとカイの代わりなんてしてないし、そんなこと出来ないから」
「……わたし、やっぱり学校行きたくない」
「それはダメ、約束したでしょ?」
「俺もいつまでもケイの面倒みるつもりないから」
「……うん」
「じゃあ私とも約束してよ」
「なに?」
「もう怪我しないで」
「いや俺だって気を付けてるんだよ?」
「それでこれだからなぁ」
「じゃあ絶対に死なないで」
「もう家族がいなくなるのは嫌なの」
「……わかった」
「あともう一ついい?」
「いいよ」
「ウォロ村に連れてって」
「学校に行く前にもう一回だけ見たいの」
「機会があったら連れていくつもりだったし」
「そうだな……、今すぐには厳しいから……」
「……少し寒いかもしれないけどケイの誕生日に行こうか」
「うん、ありがとう」
ケイの頭を膝の上に乗せウトウトとしていると、後ろの方から聞きなれた足音が近づいてきた。
「ごめーん、二人がいない事に気づいてなかった!!」
「ケイちゃんそれ何食べてたの?」
「ヒナコちゃん、わたしリップ似合ってるよね?」
ケイはそう言うと、人差し指を口元に近づける。
「ん、似合ってるけどなんで?」
「ううん、なんでもない!」
「これあそこのお店のアイス、美味しかったよ」
「ヒナコちゃん一緒に買いに行く?」
「食べたい!」
「アレンも食べる?」
「あ、おれ……」「アレンは怪我が痛くて食欲ないって!!」
俺がさっきと同じものを頼もうとすると、ケイは大声で声を被せる。
そしてヒナコに見えないように俺に向かってベーッと舌を出すと、ヒナコの手を引き、俺の財布を持って意気揚々とお店の方に向かって行った。
まったく。
『ケイを頼んだぞ』か……
ずいぶんと重い置き土産だな……
「俺ちょっとみてくるよ」
俺がそう言いながら立ち上がると、ケイが俺の腕を強く引っ張る。
「待って、足怪我してるでしょ?」
「ヒナコちゃんなら大丈夫だよ」
「……それもそうか」
俺は再びベンチに座ると空を見上げる。
「怪我痛くないの?」
「痛いよ」
「もう仕事辞めたら?」
「二人だけならわたしのお給料で十分だよ?」
「あ、言うの忘れてたけど昇級審査に合格したらバイト辞めていいよ」
「楽しいなら別だけどさ」
「バイトは辞めない」
「アレンは痛いのに楽しいの?」
「うーん、どうなんだろ」
「よく分からない」
「でも楽しい人はいっぱいいるよ」
「じゃあやっぱり仕事辞めたほうがいいよ」
「また怪我するよ?」
「でも性に合ってるしなぁ」
「他に働き口を探すのも面倒だし」
「さすがに未成年に養われるほど悲しい人間にはなりたくないよ」
「無理してカイの代わりにならなくてもいいよ」
「わたし、平気だからね」
俺は空からケイの方に目を向ける。
「その口、また新しいの買ったの?」
「うん、すごい人気のやつ」
「アメリアさんと同じだよ」
「ふーん」
「色強すぎ、子供には似合わない」
「今の話と関係ないじゃん」
「まだ12歳なんだからさ、ケイこそ無理に大人にならなくてもいいよ」
「何もしなくても来年になったら大人になるんだから」
「あとカイの代わりなんてしてないし、そんなこと出来ないから」
「……わたし、やっぱり学校行きたくない」
「それはダメ、約束したでしょ?」
「俺もいつまでもケイの面倒みるつもりないから」
「……うん」
「じゃあ私とも約束してよ」
「なに?」
「もう怪我しないで」
「いや俺だって気を付けてるんだよ?」
「それでこれだからなぁ」
「じゃあ絶対に死なないで」
「もう家族がいなくなるのは嫌なの」
「……わかった」
「あともう一ついい?」
「いいよ」
「ウォロ村に連れてって」
「学校に行く前にもう一回だけ見たいの」
「機会があったら連れていくつもりだったし」
「そうだな……、今すぐには厳しいから……」
「……少し寒いかもしれないけどケイの誕生日に行こうか」
「うん、ありがとう」
ケイの頭を膝の上に乗せウトウトとしていると、後ろの方から聞きなれた足音が近づいてきた。
「ごめーん、二人がいない事に気づいてなかった!!」
「ケイちゃんそれ何食べてたの?」
「ヒナコちゃん、わたしリップ似合ってるよね?」
ケイはそう言うと、人差し指を口元に近づける。
「ん、似合ってるけどなんで?」
「ううん、なんでもない!」
「これあそこのお店のアイス、美味しかったよ」
「ヒナコちゃん一緒に買いに行く?」
「食べたい!」
「アレンも食べる?」
「あ、おれ……」「アレンは怪我が痛くて食欲ないって!!」
俺がさっきと同じものを頼もうとすると、ケイは大声で声を被せる。
そしてヒナコに見えないように俺に向かってベーッと舌を出すと、ヒナコの手を引き、俺の財布を持って意気揚々とお店の方に向かって行った。
まったく。
『ケイを頼んだぞ』か……
ずいぶんと重い置き土産だな……
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