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第三章「レゼンタック」

第百話「帰港」

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「あ”―、やっと着いたー!!」

 俺は誰よりも早く船から降りると、桟橋の上で大きく深呼吸する。


 あのクジラ騒動の翌日、予定通り帰りの船は出航し傷が癒えぬまま俺は護衛の任務に就いたが、ルーのおかげもあって特に問題なく帰ってこられることが出来た。
 というより、そもそもこのくらい余裕の任務のはずだったのだ。

 まぁ、何はともあれ無事に帰ってこれて良かった……


「おいアレン、まだ港に着いただけだぞ」
「……それでこの後はどうするつもりだ?」

 ノアはゆっくりと船から降り、船のロープを繋いでおくビットに腰を下ろした。
 まだ全身の包帯は外れておらず絶好調とは言い難い。

「この後はこのまま休暇に入る予定だったけど怪我の事もあるしレゼンタックに戻ろうか迷ってる」

 本来ならば試験の結果が出るまでケイやヒナコと海で遊ぼうと思っていたのだが、この調子では海には入れないだろう。
 せっかく水着をユバルさんの店で買ったのに……

「あれだけ治療を嫌がってたのに医者に診てもらうのか?」
「金に困ってるなら建て替えといてやるぞ?」

「いや、トレバーさんに診てもらおうと思って……」

「そうか、珍しいな!」
「あいつも医者のせがれだから安心して治療を受けて大丈夫だぞ!!」

「ノアよりは信頼してるよ」


「アレンさーん!」
「傷の調子はどうですかー!」

 船の方を見上げると、作業中のマルセア君が大きく腕を振っているのが見えた。

「昨日よりはだいぶ良くなった―!」
「手当てありがとー!」
 俺はそう言うと、右腕を庇いながら腕を振り返した。
 包帯の下にある千切れかかった腕は既に繋がり始めている。

 マルセア君は安心した表情を見せると。一礼して作業に戻った。


「その調子ならレゼンタックに戻らなくてもいいんじゃないか?」

「……やっぱり一日だけここで遊んでから帰ることにする」

「それじゃあさっさと仕事を終わらせるか!」

 俺はノアと歩幅を合わせながら桟橋の近くにある小さな小屋に向かった。


「キャプテン!無事で何よりで!」

「今回の任務は散々だったな」
「私も引退前に良い経験をしたよ」

 俺とノアは任務が無事に終了した事を証明する手続きを始める。
 といってもボースンなどの責任者にサインを貰うだけだ。
 これで本当に任務は終わりだ。


「おい若造、今回は助かったぞ」
「いい働きをしたな」

「ありがとうございます」
「……あ」

 俺は気が抜けていたせいで思わず頭を下げてしまう。

「ふん、また頼むぞ」

 ボースンは俺の頭を軽く撫でると、作業に戻るために小屋を後にした。


「アレン、後は俺がやっておくからもう終わっていいぞ」

「やった、じゃあお疲れ」
「またレゼンタックで」

 俺はファイルにまとめた書類をノアに渡すと小屋を後にした。



「いい天気だな……」

 俺は残りの痛み止めの数を確認すると空を見上げる。
 黄色い空に蒼い海。
 やっぱり地球の方が綺麗だな。


「とりあえず昼飯でも食べるか……」
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