レベルってなんですか?

Nombre

文字の大きさ
上 下
235 / 244
第三章「レゼンタック」

第九十八話「人間離れ」

しおりを挟む
「アレンさーん、車いす持ってきましたよー」

 俺が物陰で隠れていると、マルセア君がこそこそと俺の姿を探している声が聞こえてくる。

「こっち」

 俺が物影から姿を現し手招きをすると、マルセア君はすぐに気づいてくれた。

「遅くなってすみません」
「ノアさんは4階の病室にいるそうです」

「じゃあいこっか」


 俺はマルセア君の押す車いすに乗り、病人を装いながらなんとかエレベーターに乗る。


「アレンさん、やっぱり治療は受けた方がいいと思いますよ……」
「今からでも戻りましょうよ……」

 マルセア君は心配そうな顔をしながら俺の顔を覗き込んでくる。

 そう言われてもな……
 トレバーさんに俺の身体が人間ではないかもしれないと伝えられた時、一つ約束をした。
 それは、命に係わる事態でなければ病院にいかないという事だ。
 もし何かあった時、人体実験されるならまだしも敵対する者だと認識されてしまえばケイの面倒を見ることが出来なくなってしまう。

 それは少し避けたい。


「えーっと、まぁいいから」

「そうですよね……、すみません……」


 エレベーターを降りると静まり返った廊下が出迎えてくれた。
 419号室ということは……左だ。

 静かな廊下に車いすのタイヤがカーペットと擦れる音が漂う。


 マルセア君はノアのいる病室の前までくると車いすを止めた。

「アレンさん、入りますよ?」

「え?あーうん、ドア開けるね」


「ノア―、元気―?」

 俺は前かがみになって引き戸を開けながら病室に入ると、ベッドの上で小さな食器に囲まれたノアに声をかける。

「え……」

 マルセア君が口を開けたまま動かなくなってしまったので、俺は壁に手をつけながら立ち上がりノアが座っているベッドに近づいて、腰を下ろした。

「ノア、死にそうだったみたいじゃん」

「あぁ、そうらしいな!」
「だがこのくらいの怪我なら飯食えば治る!!」

 マルセア君は驚いているようだがノアという人間はこんなもんだ。
 たった数か月だが散々みせつけられてきた。
 俺なんかよりよっぽど人間離れしている。

 まぁ、治療室ではなく病室にいることを知るまでは少し心配してたけど……

「アレン、お前の怪我はどうだ?」

「重症だけど多分すぐに治せる」
「ちょっとそれ貸して」

 俺はノアのベッドの脇にある酸素吸入器に手を伸ばした。
 予想通り、普通の救急病院にノアの肌を通る道具が置いてあるはずもない。
 となれば、これがここにあるのも当然だ。

「マルセア君、ちょっときて!」

 俺がそう言うと、マルセア君はハッとして動き出した。


「あのー……、なんですか?」

 マルセア君はノアに怯えているのか目が泳いでいる。

「そしたらさ、マルセア君に俺の腕と脚を縫ってほしいんだ」
「できる?」

「え……」

 マルセア君は再び口を開いたまま固まる。


「……すみません、できないです」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~

楠富 つかさ
ファンタジー
 地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。  そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。  できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!! 第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...