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第三章「レゼンタック」

第九十一話「魚影」

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 ……地平線が明るくなってきたな。

 やっぱり動いていて正解だった。
 眠気もそうだが夏と言えども夜の船上は意外と冷える。


 日が昇り少ししたらケーブルの交換作業が始まる。
 それまで少し休むか……

 俺は見張り台の椅子の上で寝ているルーを起こして席を交替した。
 それにしても、モンスターも眠るんだな……


 カンッカンッカンッカンッ……

 階段を誰かが上ってくる。

「<コール>」

 俺はルーを呼び寄せ、小さくなったルーを服の中に隠した。

「アレン、調子はどうだ?」
「朝飯持ってきたぞ!!」

「ちょっと眠いかなぁ」

 俺はノアからスープを受け取ると再び椅子に腰かける。

「座ってて大丈夫なのか?」

「あぁ……」

 俺は慌てて椅子から立ち上がり、辺りを警戒するふりをする。

「ケーブルの交換作業は10分後から始まる予定だったが、その前に発電機の点検をするらしい」
「なんだか調子が悪いそうだ」
「だから停電しても気にするなよ」

「おっけー」

「それじゃあ俺はもうひと眠りしてくる!!」

「おっけぇ」

 ノアは大きなあくびをしながら戻っていく。
 身に染みる嫌がらせをしてくるな……



「只今より、ケーブル交換作業のため、一時的にバリアを解除します」
「甲板に出ている非戦闘員は直ちに船内に避難してください」

 アナウンスが入った。
 点検が終わったようだ。

 甲板を覗くと銃を持った戦闘員が安全な場所でそれぞれ配置についている。
 と言ってもこの人たちは俺が死んだ時の非常手段だ。
 まぁ、下手に銃を撃たれると俺の身が危ないのでじっとしていてくれた方が助かる。


「只今より、ケーブル交換作業のため、一時的にバリアを解除します」
「甲板に出ている非戦闘員は直ちに船内に避難してください」

 二回目のアナウンスが入った。
 そろそろだ。


 カランカランッ

 鐘の音が鳴ると同時に慣れてしまっていた振動音が無くなり、辺りが静かになる。


 ……


 静かだな……
 モンスターが襲ってこない。


 ……


「船体へのケーブルの取り付け作業が終了しました」
「目標地点まで進みますので非戦闘員は引き続き船内で待機してください」

 アナウンスが入った。

 モンスターはどうした?
 まだ寝てるのか?

「……ん?」

 進行する船首の先に潮目が見える。
 あそこにモンスターが貯まってるのか?

「……んん?」

 潮目が動いてる……
 というよりあれは泡か?

 泡が近づいてくる……
 大きな黒い影が二つ……

「……やばっ」

 バッジュゥゥン!!

 俺が非常ボタンを割ったと同時に、船首が大きく跳ね上がった。
 俺は監視台の手すりにしがみつき、船から落ちないようにする。

 跳ねあがった選手は反動で大きく海の中に沈み込んだ。
 銃を持っていた人も手すりにしがみついているが、ただ一人ボースンが甲板の上に立って船員に指示をしている。
 指示の内容を聞く限り誰も海に落ちていないようだ。


 しかし、問題はまだ始まったばかり。
 あのクジラをどうする……
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