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第三章「レゼンタック」
第八十一話「意地悪」
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俺はハリソンの見舞いを適当に済ませ、レゼンタックに向かう。
まだ歩くのは困難そうだったが、口は相変わらず元気だった。
俺はレゼンタックに着くと、四階に向かい、ノアの机に向かった。
「アレン、早かったな!!」
「ちゃんと反省したのか?」
ノアは俺に気づくと大声で俺の名前を呼ぶ。
「報告書はちゃんと書いたよ?」
俺はびっしりと文字で埋めた紙をノアに渡した。
紙を埋めるのは得意だ。
「そのようだな!!」
「まぁ、仲間を助ける心に文句は言わないが、このルールは街への被害を最小限に抑えるための物だ」
「これから仕事中は必ずルールを守るんだぞ」
「それに仲間ならハリソンの事も少し信じてやれ!!」
「じゃあもう行っていいぞ!」
俺はノアに頭を下げ、その場にいた人たちに挨拶をしてから階段を降りる。
実際、俺が助けに行かなくてもおそらくハリソンは亀猿を倒せていた。
これは先程ハリソンから直接聞いた話だが、あと数秒、俺の到着が遅ければ腕を失う覚悟で火薬を亀猿の口内で爆破させるつもりだったらしい。
だがあの出血量で生きて帰ってこれたのかは分からない……
「アレンさん、ちょっといいですか?」
考え事をしながらレゼンタックのレストランに入ろうとすると、後ろから誰かに呼び止められた。
振り向くと爽やかイケメンが手招きしている。
「トレバーさん、なにかありました?」
「お昼ご飯」
「約束忘れてないですよね?」
そういえばマラソン大会で賭けをしてたんだった。
というかまた出費か……
「待ち伏せしてたんですか?」
「13分ほど」
トレバーさんも意地悪だな……
「わかりました、それじゃあ行きましょう」
俺がそう言ってレストランに入ろうとすると、トレバーさんに手を掴まれる。
女の子だったら惚れてたかもしれない。
「えーっと、なんですか?」
「外で食べましょう」
トレバーさんはそう言うと手を離し、俺を先導してレゼンタックを後にした。
「どこ行くんですか?」
「私のお気に入りです」
トレバーさんは行き先をはぐらかしながらどんどん歩いていく。
まぁ、ユバルさんのお店から近いので今のところ問題はない。
「ここですか?」
「はい、ここです」
トレバーさんはそう言うと、躊躇う事もなく店の中に入る。
入り口には金色に輝く豚の置物。
提灯型の赤いライトで照らされた席の間を、トレバーさんは頭を下げる店員に挨拶をしながらどんどん進んでいく。
そして店の一番奥にある大きな回転テーブルが置かれた個室に案内されると、俺は綺麗な店員さんに誘導されながら椅子に座った。
「あのー……、マナーとか分からないんですけど大丈夫ですか?」
席に着くやいなや前菜らしき食べ物が運ばれ、料理長らしき人の挨拶が終わり、部屋にトレバーさんと二人きりになったところで俺は初めて口を開く。
「帰るのは構いませんが、二人分のコース料金は払ってくださいね」
「……最後までいます」
やっぱりこの人は意地悪だ。
まだ歩くのは困難そうだったが、口は相変わらず元気だった。
俺はレゼンタックに着くと、四階に向かい、ノアの机に向かった。
「アレン、早かったな!!」
「ちゃんと反省したのか?」
ノアは俺に気づくと大声で俺の名前を呼ぶ。
「報告書はちゃんと書いたよ?」
俺はびっしりと文字で埋めた紙をノアに渡した。
紙を埋めるのは得意だ。
「そのようだな!!」
「まぁ、仲間を助ける心に文句は言わないが、このルールは街への被害を最小限に抑えるための物だ」
「これから仕事中は必ずルールを守るんだぞ」
「それに仲間ならハリソンの事も少し信じてやれ!!」
「じゃあもう行っていいぞ!」
俺はノアに頭を下げ、その場にいた人たちに挨拶をしてから階段を降りる。
実際、俺が助けに行かなくてもおそらくハリソンは亀猿を倒せていた。
これは先程ハリソンから直接聞いた話だが、あと数秒、俺の到着が遅ければ腕を失う覚悟で火薬を亀猿の口内で爆破させるつもりだったらしい。
だがあの出血量で生きて帰ってこれたのかは分からない……
「アレンさん、ちょっといいですか?」
考え事をしながらレゼンタックのレストランに入ろうとすると、後ろから誰かに呼び止められた。
振り向くと爽やかイケメンが手招きしている。
「トレバーさん、なにかありました?」
「お昼ご飯」
「約束忘れてないですよね?」
そういえばマラソン大会で賭けをしてたんだった。
というかまた出費か……
「待ち伏せしてたんですか?」
「13分ほど」
トレバーさんも意地悪だな……
「わかりました、それじゃあ行きましょう」
俺がそう言ってレストランに入ろうとすると、トレバーさんに手を掴まれる。
女の子だったら惚れてたかもしれない。
「えーっと、なんですか?」
「外で食べましょう」
トレバーさんはそう言うと手を離し、俺を先導してレゼンタックを後にした。
「どこ行くんですか?」
「私のお気に入りです」
トレバーさんは行き先をはぐらかしながらどんどん歩いていく。
まぁ、ユバルさんのお店から近いので今のところ問題はない。
「ここですか?」
「はい、ここです」
トレバーさんはそう言うと、躊躇う事もなく店の中に入る。
入り口には金色に輝く豚の置物。
提灯型の赤いライトで照らされた席の間を、トレバーさんは頭を下げる店員に挨拶をしながらどんどん進んでいく。
そして店の一番奥にある大きな回転テーブルが置かれた個室に案内されると、俺は綺麗な店員さんに誘導されながら椅子に座った。
「あのー……、マナーとか分からないんですけど大丈夫ですか?」
席に着くやいなや前菜らしき食べ物が運ばれ、料理長らしき人の挨拶が終わり、部屋にトレバーさんと二人きりになったところで俺は初めて口を開く。
「帰るのは構いませんが、二人分のコース料金は払ってくださいね」
「……最後までいます」
やっぱりこの人は意地悪だ。
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