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第三章「レゼンタック」

第七十三話「水撃」

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 ……まぁいい。
 注意を引き付ける事はできた。

 あとは一定の距離を保ちながら壁から引き離す。


 ビュリュンッ

 俺が壁から離れようと足を踏み出した瞬間、スライム鳥が物凄い速度で鋭利に変形した身体を伸ばしてきた。
 見た目の体積以上に伸びた身体に反応が遅れ、仕方なく左手を前に出して防御姿勢を取る。

 ガヂュンッ!

 俺の身体にスライム鳥が当たる寸前、横から飛び出してきた召喚獣がスライム鳥の身体を食い破った。
 しかし、自分の身体を失ったはずのスライム鳥はさらに翼のように身体を大きく広げると、召喚獣を覆いつくしてしまった。

 俺は召喚獣を助けるために近づこうとするが、青色のドロドロが暴れ散っているのでうかつに手が出せない。


 ……どうする。
 とにかく、あの体内で動き回る核を止めなければいけない。

 俺がそう思った瞬間、召喚獣は自分の身体に纏わりつくスライム鳥を喰らい始めた。
 みるみる内にスライム鳥は小さくなっていくが、召喚獣の体内でスライム鳥が今にも身体を突き破りそうな勢いで暴れているのが見て分かる。


 ……ごめん、耐えてくれ。

 俺は短剣を鞘に納めてスライム鳥に近づき、段々と小さくなっていく身体の中で動き回る核の動きに集中する。

 まだ動いている面積が大きくて目で追うのがやっとだ。
 あともう少し……、あともう少し……、

「……ッぐ」

 俺が抜刀と共に核を切り裂くと、スライム鳥の動きがピタリと止まった。


「アクティベイト」
「……ん?」

 SPが320ポイントも増えている。
 あの一体で?

 いや、喜んでいる暇はない。

 俺は<召喚士>に300ポイントを振り、<ヴェレナ><糾合><クラレ><恩愛><リンフォル><コール><挑発><庇護><獣石生成><一心同体>の計10個の特能を手に入れる。

「<クラレ>」

 俺は少し回復効果のある魔法?を急いで召喚獣に使う。
 これで関節が治らないなら現状、治せる手立てはない。

 回復を進める間に報告はしておこう。

「10-0、現在 地点A41」
「生け捕りは出来ませんでした」

「……10-4、地点A41で待機せよ」

「10-4」



 ……なにかおかしい。
 ほとんど真南にいるはずなのにハリソンの銃声が聞こえない。

 というか、最初に新種の報告をしたときに6か所同時に出たとか言ってなかったか?


「アレンから本部へ、南西付近にいるハリソンの状況を教えてください」

「……南の森で新種と戦闘中です」

「ノアはまだ行かないんですか?」

「……現在、北側で確認された新種から順番に捕獲しているため10分ほどかかる予定です」
「……アレンさんと同様に10-0の許可は出しています」

 ハリソンが規則を破って生け捕りを諦めるのは考えにくい。
 ……嫌な予感がする。

「今から僕が応援に行くことは可能ですか?」

「……持ち場を離れることは許可できません」

「10-4」
「ふぅ……、お前、走れる?」

 召喚獣は痛がる素振りは見せないが、右前足を明らかに庇っている。

「ステータスオープン」

 俺がそう唱えると、召喚獣の前にステータスボードが浮かび上がった。
 先程の戦闘でレベルが52になり<毒無効>と<縮小化>を得たようだ。

「小さくなれるか?」

 俺がそう言うと、召喚獣は子猫のような大きさに一瞬で姿を変える。

「<コール>」

 俺は小さくなった召喚獣を手元に呼び寄せスーツのポケットの中に入れるとアキレス腱を伸ばす。
 召喚獣のレベルが上がったのと<一心同体>を得たことで俺のステータスもかなり上がっているようだ。

「<リンフォル>」

 これで<DEF>も上がったはず。


 イスの人と交渉するのは無駄だ。
 ルールを破るのが俺の仕事だからな。


「本気出すからしっかり捕まってろよ」

 俺がポケットの中に向かってそう言うと、頭の中で小さな返事が聞こえたような気がした。
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