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第三章「レゼンタック」

第六十二話「デートの続き」

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「じゃあユバルさん、またくるね」

 俺は店の前で短剣の入ったケースを受け取り、アメリアさんを先頭に店を出る。
 結局、アメリアさんは最後の最後まであの大剣をなんとか持ち上げようと頑張っていた。

「今度は一人でこいよ!」

 そういって店の前で手を振るユバルさんにアメリアさんが睨みを利かせる。


「それで……、この後ってどうするんですか?」

「とりあえずご飯食べにいこっか」

 アメリアさんはニコッと笑うと俺の手を引いて歩き出した。



「おじさん、チーズサンド50個、お持ち帰りで!」
「アレン君も好きなの頼んでいいよ?」

 アメリアさんはデリカサンドの前で足を止めて店内に入ると、俺に何も言わずに注文を始める。

「……あ、じゃあパストラミサンドで」

 もしかしてアメリアさんってメチャクチャ大食いなのか?

「アメリアちゃん、お代はいつも通りでいいかい?」

「それでお願いします!」

 おじさんも驚いた様子をみせることなく淡々と注文を受けている。

 大食いの常習犯なのか?


 しばらくすると店の奥から香ばしい香りと共に大きな紙袋が出てきた。

「これアレン君が持ってね」

 そう言うとアメリアさんはおじさんにお礼を言って店を後にする。
 俺はおじさんから紙袋を受け取ると慌ててアメリアさんの後を追いかけた。


 ……レゼンタックに向かってるのか?

 向かっている方角から導き出した目的地は当たっていたようで、アメリアさんは流れるようにレゼンタックに入ると、そのまま奥の部屋に俺を案内した。
 部屋の中には屈強な男たちがたむろしていてノアの姿も見える。

「みんな!お昼買ってきたよ!」

 アメリアさんの号令と共に男たちが俺の方に向かってくる。
 俺は近くにある机に紙袋を置いて自分のパストラミサンドを取り出すと、部屋の端にいるアメリアさんの方に逃げた。
 屈強な男たちは一人、3~4個チーズサンドを取ると再び散る。


「えっと……、今からなにするんですか?」

 俺はパストラミサンドの包み紙を丁寧に剥きながら、隣でニコニコしているアメリアさんに質問する。

「明日はタナバタフェスティバルだからその準備」

「……え?」

「アレン君も手伝うでしょ?」

 そう言うと、アメリアさんは俺が持っているパストラミサンドに目線を向けた。

「……ちなみに準備にはどのくらいかかるんですか?」

「日が暮れるまでにはきっと終わるよ!」

「7月7日って今日ですよね?」

「今日は金曜日でしょ、だから明日やるの」

「ぼく、病人なんですけど」

「その割には元気そうだけど?」
「明日から仕事に復帰だっけ?」

「……そういえばヒナコに用事を頼まれてて早く帰らなきゃいけないんですよ」

「今日は6時まで帰っちゃだめなんでしょ?」

「ユバルさんのお店に忘れ物を……」「だーめ、もう逃げられないよ?」

 アメリアさんは俺の腕を両手でぐっと引き寄せる。

 集められた人を見るに、おそらくそこそこの肉体労働が待っている。
 実際、身体はまだ痛む。
 ほんとうにやりたくない……

「じゃ、デートの続きしよっか!」

 俺が言い訳を考えながら黙っていると、アメリアさんは俺のパストラミサンドにかぶりついた。
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