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第三章「レゼンタック」
第五十八話「戴冠式」
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「ケイ、それ新しい鏡?」
「うん、そうだよ」
「また買ったの?」
「いいの!アレンうざい!」
「わたし、もう行くから!」
ケイはそう言うと、洒落たスカートをなびかせながら部屋からズカズカと出ていく。
「はぁ……」
胸に気を配りながらため息をつきながらふと机の上に目線を動かすと、身に覚えのない書類が広がっている。
手に取って確認してみると、どうやらケイのレベル測定の結果のようだ。
レゼンタックでは数か月に一回、個人の希望でレベル測定を行うらしいのだが、俺は測っても意味ないので行っていない。
「どれどれ……」
レベルは33か……
ケイのレベルが少し上がっている。
何処かでモンスターの核でも買ったのかな?
「おぉ……」
この数か月で身長が10センチ近くも伸びている。
ヒナコを追い越す日も遠くないな……
あとは体重も増えてるし……
……これ以上は見るのをやめておこう。
暇だな……
まだ9時か……
少し早いけど行くか……
俺は重い腰を持ち上げると、洗剤の香りがするスーツを羽織って部屋を後にした。
「あ、アレン!」
「どっか行くの?」
俺が玄関で靴を履いていると、後ろからヒナコに名前を呼ばれる。
「ちょっと散歩」
「ふーん……」
「そしたら、今日、忙しいから6時まで帰ってこないでね!」
「……わかった」
俺は小さく返事をすると、ヒナコの宿を後にした。
まったく……
あまりにもひどくないか?
まぁ、いい。
あの黒騎士と出会ってから約一か月。
家でゴロゴロしている内に、すっかり雨季は終わり夏に入った。
ギプスも薬も無しに治るか不安だったが、トレバーさんのおかげで完ぺきとは言わないまでも身体の調子は良く、明日から仕事に復帰だ。
この一か月、給料も入らず、労災手当は通信機の弁償代で消えたので、バリバリ働かなければいけない。
しかし、ニートでいるのも捨てがたいな……
どうせ生活費はケイの給料で十分だし……
「おっ……」
市役所の向かい側にある無機質な城の前にもう人が集まっている。
今日は戴冠式。
つい先日、王の死が発表され、同時に新王の存在も発表された。
生まれたばかりの子供を王にするのは如何なものかと思うが、そう言う物だと納得するしかない。
黒騎士と駆け落ちしたお姫様の捜索願いは取り消され、これで二人も自由の身というわけだ。
ぱーぱらっぱー、ぱぱぱぱー……
前から三列目の端で夏の日差しを感じていると、お城のほうからラッパの音が聞こえてきた。
それと同時に、無機質なコンクリートについた小さな窓から、あのお姫様と似た顔をした女性が赤ちゃんを抱いて姿を見せる。
あれが新しい王様か……
「うん、そうだよ」
「また買ったの?」
「いいの!アレンうざい!」
「わたし、もう行くから!」
ケイはそう言うと、洒落たスカートをなびかせながら部屋からズカズカと出ていく。
「はぁ……」
胸に気を配りながらため息をつきながらふと机の上に目線を動かすと、身に覚えのない書類が広がっている。
手に取って確認してみると、どうやらケイのレベル測定の結果のようだ。
レゼンタックでは数か月に一回、個人の希望でレベル測定を行うらしいのだが、俺は測っても意味ないので行っていない。
「どれどれ……」
レベルは33か……
ケイのレベルが少し上がっている。
何処かでモンスターの核でも買ったのかな?
「おぉ……」
この数か月で身長が10センチ近くも伸びている。
ヒナコを追い越す日も遠くないな……
あとは体重も増えてるし……
……これ以上は見るのをやめておこう。
暇だな……
まだ9時か……
少し早いけど行くか……
俺は重い腰を持ち上げると、洗剤の香りがするスーツを羽織って部屋を後にした。
「あ、アレン!」
「どっか行くの?」
俺が玄関で靴を履いていると、後ろからヒナコに名前を呼ばれる。
「ちょっと散歩」
「ふーん……」
「そしたら、今日、忙しいから6時まで帰ってこないでね!」
「……わかった」
俺は小さく返事をすると、ヒナコの宿を後にした。
まったく……
あまりにもひどくないか?
まぁ、いい。
あの黒騎士と出会ってから約一か月。
家でゴロゴロしている内に、すっかり雨季は終わり夏に入った。
ギプスも薬も無しに治るか不安だったが、トレバーさんのおかげで完ぺきとは言わないまでも身体の調子は良く、明日から仕事に復帰だ。
この一か月、給料も入らず、労災手当は通信機の弁償代で消えたので、バリバリ働かなければいけない。
しかし、ニートでいるのも捨てがたいな……
どうせ生活費はケイの給料で十分だし……
「おっ……」
市役所の向かい側にある無機質な城の前にもう人が集まっている。
今日は戴冠式。
つい先日、王の死が発表され、同時に新王の存在も発表された。
生まれたばかりの子供を王にするのは如何なものかと思うが、そう言う物だと納得するしかない。
黒騎士と駆け落ちしたお姫様の捜索願いは取り消され、これで二人も自由の身というわけだ。
ぱーぱらっぱー、ぱぱぱぱー……
前から三列目の端で夏の日差しを感じていると、お城のほうからラッパの音が聞こえてきた。
それと同時に、無機質なコンクリートについた小さな窓から、あのお姫様と似た顔をした女性が赤ちゃんを抱いて姿を見せる。
あれが新しい王様か……
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