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第三章「レゼンタック」
第五十五話「数え唄」
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「え、ウィリアムさんってまだ24歳なんですか?」
「君の顔が幼すぎるだけだ」
やっぱり異国の人の年齢は難しい。
この貫禄で20代前半はおかしいだろ……
「……思い出したわ!」
ウィリアムさんの横で黙っていたお姫様が、そう言いながら急に立ち上がり、片手を大きな胸に当てた。
「ひとつの、東の果てに魔物と華を交わす者あり」
「ふたつの、南の果てに二面の頭を持つ者あり」
「みっつの、西の果てに蒼き龍に跨る者あり」
「よっつの、北の果てに八股の刃を操る者あり」
「いつつの、その者らを繋ぐ四人の護り人あり」
「むっつの、聖の剣と魔の剣を持つ者あり」
「ななつの、これらの者、皆、天の名を授かりけり」
お姫様は歌い終わると満足げに腰を下ろした。
「この国の創世神話に出てくる歌よ」
「それと指輪をしたモンスターのお話もあるわ」
「先程のお話となにか関係あると思うのだけれど、どうかしら?」
聖の剣と魔の剣はおそらく<勇者>と<魔王>だ。
しかし、それ以外はいまいちピンとこない。
天の名?
あの<特能>のことか?
「そういえば、ギルセリアの勇者が古びた指輪をしていると聞いた事があるな……」
「君のその指輪と関係があるんじゃないか?」
「うーん……、アクティベイト」
関係はあるかもしれないが、華とか龍がスキルボードには出てこないんだよな……
見落としているだけか?
ケイとヒナコが言っていた青い龍とは関係あるのか?
「……わかんないです」
「ふむ……」
俺とウィリアムさんが諦めた横で、お姫様は不満そうな顔でウィリアムさんにもたれ掛かっている。
「レベルとか<職業>とかってなんなんですかね……」
俺がそうボソッと呟くと、ウィリアムさんはお姫様の肩をグッと抱いて口を開いた。
「私はレベルや<職業>に絶対の信頼をあずけていた」
「例えるならば沈まない船」
「しかし、今日、その船の底に大きな穴をあけられた気分だ」
黒騎士はそれだけ言うと、口を閉じた。
ザクッ……ザクッ……
「もうすぐ夜が明けるぞ」
俺はウィリアムさんの声にハッとして目を覚ます。
身体を縛られたままの状態で、いつの間にか寝てしまってしたようだ。
空が少し明るい。
目の前にあった焚火の跡が消えている。
「これ、返しておくぞ」
ウィリアムさんはそう言うと、俺の目の前に短剣の鞘を置く。
そして次の瞬間、何もない地面から黒い馬を召喚した。
お姫様は召喚された馬にスッと跨る。
「街まで送ってやれなくてすまない」
「その縄はあと数分で解けるから安心しろ」
ウィリアムさんはそう言うとお姫様の後ろ側に馬に跨り、手綱を握る。
「アレン君」
「君の先には多くの困難が舞っているだろうが、困ったら遠慮なく私を訪ねなさい」
「それと君は勇気という物をはき違えている」
「人生は命が資本だからな、自分の理性に飲み込まれないように」
「わかりました」
「気をつけて」
俺がそう言うと、黒騎士とお姫様は姿を消してしまった。
やっぱり、ああいう人は最後に洒落た言葉を残すんだな……
「君の顔が幼すぎるだけだ」
やっぱり異国の人の年齢は難しい。
この貫禄で20代前半はおかしいだろ……
「……思い出したわ!」
ウィリアムさんの横で黙っていたお姫様が、そう言いながら急に立ち上がり、片手を大きな胸に当てた。
「ひとつの、東の果てに魔物と華を交わす者あり」
「ふたつの、南の果てに二面の頭を持つ者あり」
「みっつの、西の果てに蒼き龍に跨る者あり」
「よっつの、北の果てに八股の刃を操る者あり」
「いつつの、その者らを繋ぐ四人の護り人あり」
「むっつの、聖の剣と魔の剣を持つ者あり」
「ななつの、これらの者、皆、天の名を授かりけり」
お姫様は歌い終わると満足げに腰を下ろした。
「この国の創世神話に出てくる歌よ」
「それと指輪をしたモンスターのお話もあるわ」
「先程のお話となにか関係あると思うのだけれど、どうかしら?」
聖の剣と魔の剣はおそらく<勇者>と<魔王>だ。
しかし、それ以外はいまいちピンとこない。
天の名?
あの<特能>のことか?
「そういえば、ギルセリアの勇者が古びた指輪をしていると聞いた事があるな……」
「君のその指輪と関係があるんじゃないか?」
「うーん……、アクティベイト」
関係はあるかもしれないが、華とか龍がスキルボードには出てこないんだよな……
見落としているだけか?
ケイとヒナコが言っていた青い龍とは関係あるのか?
「……わかんないです」
「ふむ……」
俺とウィリアムさんが諦めた横で、お姫様は不満そうな顔でウィリアムさんにもたれ掛かっている。
「レベルとか<職業>とかってなんなんですかね……」
俺がそうボソッと呟くと、ウィリアムさんはお姫様の肩をグッと抱いて口を開いた。
「私はレベルや<職業>に絶対の信頼をあずけていた」
「例えるならば沈まない船」
「しかし、今日、その船の底に大きな穴をあけられた気分だ」
黒騎士はそれだけ言うと、口を閉じた。
ザクッ……ザクッ……
「もうすぐ夜が明けるぞ」
俺はウィリアムさんの声にハッとして目を覚ます。
身体を縛られたままの状態で、いつの間にか寝てしまってしたようだ。
空が少し明るい。
目の前にあった焚火の跡が消えている。
「これ、返しておくぞ」
ウィリアムさんはそう言うと、俺の目の前に短剣の鞘を置く。
そして次の瞬間、何もない地面から黒い馬を召喚した。
お姫様は召喚された馬にスッと跨る。
「街まで送ってやれなくてすまない」
「その縄はあと数分で解けるから安心しろ」
ウィリアムさんはそう言うとお姫様の後ろ側に馬に跨り、手綱を握る。
「アレン君」
「君の先には多くの困難が舞っているだろうが、困ったら遠慮なく私を訪ねなさい」
「それと君は勇気という物をはき違えている」
「人生は命が資本だからな、自分の理性に飲み込まれないように」
「わかりました」
「気をつけて」
俺がそう言うと、黒騎士とお姫様は姿を消してしまった。
やっぱり、ああいう人は最後に洒落た言葉を残すんだな……
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