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第三章「レゼンタック」
第四十六話「恋心」
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「……あれ?」
今日は肉と一緒に新鮮な果物をいくつか持ってきたが、白い狼の姿が見えない。
夕方を過ぎるとどこかに帰ってしまうのかな……
10分ほど厩舎の近くで狼を待っていたのだが、一向に姿を現さない。
まぁいい、これは俺が食べるとしてまた明日持ってこよう。
俺は名前も知らないドロドロの果物を口の中に放り込むと、任務に戻った。
「はぁ……」
今日はケイと家を出る時間が同じだったので、親切で身支度を手伝ってあげようと思ったら『邪魔』と言われてしまった。
いくら頼まれても、もう一生ケイの髪を結ばない。
というか、あの伸びた髪を早く切らないかな……
隣で寝てるとき、たまに顔にかかってきてうっとおしい。
今日は久しぶりに晴れたのに気分があまりよくない。
俺はバッグに入っている果物と肉を取り出すと、白い狼の前にそっと置く。
やはり午前中ならここにいるようだ。
「やっぱダメか……」
俺は肉と果物をその場に置いたまま任務に戻る。
「はぁ……」
昨日の昼にはあったはずのテーピングが、今日の昼には無くなっていた。
たぶん、誰かに持ってかれた。
そのせいで今日はテーピングなしで任務に行かなくてはいけなくなった。
確かにあのテーピングは俺専用の物ではないが、せめて補充をして欲しかった。
俺は狼の前にスパイスのついた肉を置くと、その場でしゃがみ込む。
今日は初心に戻り、反応があった初日の条件に戻した。
今日は一層と雨が強いし、最近いい事ないんだよな……
今日が過ぎると2週間は西側任務にならないので、なにか成果は欲しい。
もういっそう、攻撃されるのを覚悟でちょっとだけでも触ってみるか?
「よし……」
俺は右手のグローブを外し、中腰の状態で指先を狼の背中にゆっくりと伸ばす。
「そこで何をしているの?」
中指の爪が狼の毛並みに触れた瞬間、後ろから女の人の声が聞こえ、突然の出来事で俺の身体はピタリと硬直してしまった。
やばい……
さぼってるのがバレたか……
俺は声の主を確認するために、立ち上がりながらゆっくりと振り返る。
「……あ」
身体を覆う大きな布の隙間から、細くて白い髪とミルク色の淡い肌がチラッと見える。
デリカサンドで見かけた女性だ。
雨色と交わらない綺麗な肌と少し濁った赤い目。
美女。
俺が口を籠らせながら目の前にある綺麗な顔を眺めていると、その女性は長いまつ毛を不機嫌そうにピクリと動かして振り返ると、西の方に向かって歩き出す。
その後を、いつの間にか起き上がっていた白い狼が肉を加えて付いていく。
白い狼の飼い主はあの人だったか。
また今度、会えたら話しかけるか……
俺は右手にグローブをはめ直す。
いや、話しかけるなら今がチャンスじゃないか?
今を逃したらこんなチャンスはないぞ、俺。
こう考えている間にも、どんどん距離が離れていく。
「……ビーーッ、ビー―ッ、ビー―ッ、コードブラック、コードブラック、誘拐事件発生」
俺が女性の後を追いかける決心をしたと同時に、クソでかい警報音が頭の中に響く。
なんだよ、この大事な時に。
邪魔するなよ。
「……被害者一名、ソフィア第一王女殿下」
……え?
今日は肉と一緒に新鮮な果物をいくつか持ってきたが、白い狼の姿が見えない。
夕方を過ぎるとどこかに帰ってしまうのかな……
10分ほど厩舎の近くで狼を待っていたのだが、一向に姿を現さない。
まぁいい、これは俺が食べるとしてまた明日持ってこよう。
俺は名前も知らないドロドロの果物を口の中に放り込むと、任務に戻った。
「はぁ……」
今日はケイと家を出る時間が同じだったので、親切で身支度を手伝ってあげようと思ったら『邪魔』と言われてしまった。
いくら頼まれても、もう一生ケイの髪を結ばない。
というか、あの伸びた髪を早く切らないかな……
隣で寝てるとき、たまに顔にかかってきてうっとおしい。
今日は久しぶりに晴れたのに気分があまりよくない。
俺はバッグに入っている果物と肉を取り出すと、白い狼の前にそっと置く。
やはり午前中ならここにいるようだ。
「やっぱダメか……」
俺は肉と果物をその場に置いたまま任務に戻る。
「はぁ……」
昨日の昼にはあったはずのテーピングが、今日の昼には無くなっていた。
たぶん、誰かに持ってかれた。
そのせいで今日はテーピングなしで任務に行かなくてはいけなくなった。
確かにあのテーピングは俺専用の物ではないが、せめて補充をして欲しかった。
俺は狼の前にスパイスのついた肉を置くと、その場でしゃがみ込む。
今日は初心に戻り、反応があった初日の条件に戻した。
今日は一層と雨が強いし、最近いい事ないんだよな……
今日が過ぎると2週間は西側任務にならないので、なにか成果は欲しい。
もういっそう、攻撃されるのを覚悟でちょっとだけでも触ってみるか?
「よし……」
俺は右手のグローブを外し、中腰の状態で指先を狼の背中にゆっくりと伸ばす。
「そこで何をしているの?」
中指の爪が狼の毛並みに触れた瞬間、後ろから女の人の声が聞こえ、突然の出来事で俺の身体はピタリと硬直してしまった。
やばい……
さぼってるのがバレたか……
俺は声の主を確認するために、立ち上がりながらゆっくりと振り返る。
「……あ」
身体を覆う大きな布の隙間から、細くて白い髪とミルク色の淡い肌がチラッと見える。
デリカサンドで見かけた女性だ。
雨色と交わらない綺麗な肌と少し濁った赤い目。
美女。
俺が口を籠らせながら目の前にある綺麗な顔を眺めていると、その女性は長いまつ毛を不機嫌そうにピクリと動かして振り返ると、西の方に向かって歩き出す。
その後を、いつの間にか起き上がっていた白い狼が肉を加えて付いていく。
白い狼の飼い主はあの人だったか。
また今度、会えたら話しかけるか……
俺は右手にグローブをはめ直す。
いや、話しかけるなら今がチャンスじゃないか?
今を逃したらこんなチャンスはないぞ、俺。
こう考えている間にも、どんどん距離が離れていく。
「……ビーーッ、ビー―ッ、ビー―ッ、コードブラック、コードブラック、誘拐事件発生」
俺が女性の後を追いかける決心をしたと同時に、クソでかい警報音が頭の中に響く。
なんだよ、この大事な時に。
邪魔するなよ。
「……被害者一名、ソフィア第一王女殿下」
……え?
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