レベルってなんですか?

Nombre

文字の大きさ
上 下
168 / 244
第三章「レゼンタック」

第三十一話「ピンチヒッター」

しおりを挟む
 そうだ、思い出した。
 コビーさんだ。
 ウォロ村に来ていた行商人。

「アレンさん、どうかしましたか?」

「その……、ケイは今、体調不良で……」

「長居はしないので」
「少し顔を見たら帰りますよ」

 俺はコビーさんから簡単に逃げられると思っていたが、あっという間に押され始めている。

 ……どうしよう。
 断るための嘘が思い浮かばない。

 そもそも体調関係なしにケイはコビーさんに会いたいのだろうか。
 たぶん会いたくない。

 ……大ピンチ。



 ふと気づくと、俺はコビーさんと一緒にヒナコの家の宿の前まできていた。
 俺は引き戸を開けて玄関に入る。

「……ちょっとケイに聞いてきますね」

 俺はコビーさんを玄関に待たせてダイニングに早足で向かった。

「あれ?」
「アレンのお客さん?」

「そう、ちょっと戻って」

 俺は物音に気付いてダイニングから廊下に出てこようとしていたヒナコの肩を抱いてダイニングに押し返した。

「え、なに……」

「あの人はコビーさんって名前なんだけど、ケイの知り合い」
「それでケイに会いたいって言ってる」
「だけどケイはあの人の事あんまり好きじゃない」
「助けて」

 俺は顔を赤くするヒナコに早口で淡々と状況を説明する。

「……うん、いいよ」
「その代わり貸し11個
 ヒナコはそう言うと玄関にいるコビーさんをダイニングに招き込んだ。

 俺はコビーさんにケイの様子を見てくると言い訳をして二階に戻る。


「おかえり」

「ただいま」

 ケイは居間でゴロゴロしていた。
 今朝よりも体調は良さそうだ。

「誰かいるの?」

「……コビーさん」

 俺がコビーさんの名前を出すと、ケイはあからさまに嫌な顔をする。

「挨拶しなきゃダメかな?」

「体調わるいんだから寝てな」

「わかった」

 ケイは返事をすると一目散に寝室に行き、既に敷いてあった布団に潜った。

 俺は部屋着に着替えてヒナコとコビーさんの様子を見に一階に戻る。

 ……少し気持ち悪い。


 ダイニングに行くと、キッチンでヒナコが夕食の準備をしていた。

「あれ、コビーさんは?」

「明日またくるって」
「その時は自分でなんとかしてよ」

 俺が着替えている間に、ヒナコはコビーさんを追い返したようだ。

 さすが。

 俺はコップにお茶を注ぎ、椅子に腰を下ろした。

 ケイと二人きりでいるのも気まずい。

「ケイの事でお金が必要になったら言ってね」
「出してもらうのは悪いから」

 俺はキッチンにいるヒナコに少し大きな声で話しかける。

「だったら一緒に買い物にいったら?」

「いや、それはさ……」

「冗談!」
「あとでレシート渡すね!」
「だけどこれで貸し2個目だから!」

 ヒナコの笑い声がキッチンから聞こえてくる。

 なんだかこの宿での俺の立場がどんどん低くなっていく気がするな……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

ごめんみんな先に異世界行ってるよ1年後また会おう

味噌汁食べれる
ファンタジー
主人公佐藤 翔太はクラスみんなより1年も早く異世界に、行ってしまう。みんなよりも1年早く異世界に行ってしまうそして転移場所は、世界樹で最強スキルを実でゲット?スキルを奪いながら最強へ、そして勇者召喚、それは、クラスのみんなだった。クラスのみんなが頑張っているときに、主人公は、自由気ままに生きていく

処理中です...