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第三章「レゼンタック」

第二十一話「黒猫のペン」

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「あー、ヒナコって動物、好きなの?」

 俺は棚の上に置いてあったペン立てに目を向ける。

 まったく、馬鹿みたいな話題だな……

「うん、好きだよ!」
「見た事は無いけどね!」
「一回ぐらい触ってみたいな……」

 ヒナコは中腰になってペンを手に取った。
 ペンの頭についている黒猫の頭がゆらゆらと揺れている。

「モンスターは?」
「動物と似てるよ?」

「モンスターも見た事ないよ」
「近づくの怖いし……」
「それに、そういうのは男の子の趣味だよ」

「え、モンスターも見たことないの?」

「すごーく遠くからならあるけど、小さくてよく分からなかった」

「まぁ、そうだね」
「近づかない方が懸命かもね……」

「……」「……」

 間をジュースを飲んで埋めていたら、もうコップが空になってしまった。


「……あ、おかわり持ってくるね!」

「いや、いいよ」
「もう戻るから」

 俺はヒナコより早く立ち上がり、部屋を後にしようとする。

「そうだよね……」
「お昼ご飯11時ころでいい?」

「うん、ありがとう」


 俺はヒナコの部屋を後にすると、階段を上って自分の部屋に戻った。

 ケイは寝室で静かに寝ている。


 ……今回は拒絶反応が出なかったな。

 昨日の夜、なんで嘔吐をしたのか自分でも分からない。
 もしかしたら原因はヒナコではなく、あの短剣かもしれないな。


 俺は部屋の端に置いてある短剣の入ったケースに手を伸ばす。

「……なんだ?」

 俺のスーツから甘ったるい香りがする。

 ……ヒナコか。



「ケイ、お昼の時間だよ?」

「うーん……」

 11時になったので、俺はケイの肩を軽くゆすって起こす。

「ケイ、大丈夫?」

「うーん……」

 ケイは目を開けずにうなっている。

 ケイの額に手の甲を当ててみたが熱は無い。

「先に行ってるよ?」

「ワカッタ……」


 俺はケイを部屋に置いて、一回に降りて昼ご飯を食べる。

 俺がお昼ご飯を食べている間にヒナコが様子を見に行ったが、首を傾げて戻ってきた。


 昼ご飯を済ませると、仕事に行く支度を始めた。

 脱いでいたスーツをパーカーの上から羽織り、グローブをはめて、赤い花を腰に挿す。
 ポーチとホルスターは腰に着けてあるし、後は武器を持って行けば大丈夫だ。
 ポーチには水の入ったペットボトルだけ入れておいた。


「ケイ、行ってくるね」

「イッテラッシャイ」

 ケイは居間でおかゆを食べながら俺に小さく手を振った。


 俺は階段を下りて、玄関で靴をきつく締める。

「今日は何時に帰ってくるの?」

 見送りにきたヒナコが後ろから俺に話しかける。

「言われてないから分からないんだよね……」
「なるべく早く帰ってくるよ」

 俺は膝に手をついて勢いよく立ち上がると、引き戸を開けた。

「いってらっしゃい!」

「いってきまーす」
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