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第三章「レゼンタック」

第二十話「ワンルーム」

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 ケイは朝食は食べられたが部屋に戻るやいなやベッドの上で仰向けになって寝てしまった。


「ケイ、ちょっと行ってくるね」

 俺はパーカーとスーツに着替えて部屋を後にしようとする。
 レゼンタックに行くのは早い方が良いだろう。

「うーん……」

 ケイは目を瞑りながら気だるそうに返事をした。


 階段を降りて玄関で靴を履いていると、ヒナコがダイニングから顔を出した。

「アレン、どこ行くの?」
「今日は12時って言ってなかったっけ?」

「ケイが休むってレゼンタックに言いに行ってくる」
「すぐ戻ってくるよ」

「それなら私がもう電話しておいたよ」

「……え?」
「あぁ……、ありがとう」

 この世界って電話あるの?
 いや、テレビがあるなら電話もあるか。

 異世界の文明をちょっと舐めすぎてた……


「電話ってどこに置いてあるの?」

「私の部屋だけど……」
「見に来る?」

「……うん、見たい」

 二回も断ったら落ち込むよな……
 それに少し興味もあるし。


「……ちょっと待っててね!」

 ヒナコはそう言うと、ダイニングから廊下に出てすぐ横のドアを開けて中に入っていった。
 俺は片方だけ履いた靴を脱いでヒナコを待つ。

 ヒナコの部屋のドアは廊下を通るたびに目に入っていたが、[MOTHER]と書かれているので近寄りがたい雰囲気があった。


「アレン!」
「入っていいよ!」

 玄関に腰を下ろして30秒ほど待っていると、ヒナコは部屋から身体を半分だけ出して俺を呼んだ。

 俺は廊下を進み、ヒナコの部屋の中に足を踏み入れる。


「これが電話だよ!」
「アレンのいた世界でもあったと思うけどね!」

 黒電話なんて逆に初めて見た。

「狭いけど適当に座って!」

「いや……、うん、ありがと」

 俺は一瞬、断ろうとしたが、少し顔を伏せながら部屋の片隅にあった座布団に腰を下ろした。


「何か飲む?」

「……うん」

「ちょっと待っててね!」

 ヒナコはそう言い残して部屋を後にする。

 本当は電話を見てささっと自分の部屋に戻ろうかと思ったのだが、ヒナコに申し訳なくなってしまった。
 というのも、思っていたよりも部屋が狭いのだ。

 間取りはワンルームで、おそらく俺の部屋の寝室と同じ広さだろう。
 それに物があるぶん寝室よりも狭く感じる。
 確実に俺の部屋の居間よりも狭い。

 確かにヒナコが自分の部屋にいるところを見たことは無いので、寝るだけの部屋としてなら十分かもしれないが……

「これ、オレンジジュースね!」

「ありがとう」

 ヒナコが両手にコップを持って戻ってくると、俺の真正面に腰を下ろした。


「これ、俺はいいから」

「……ありがとう!」

 俺は尻に敷いていた座布団を抜き取り、ヒナコに渡す。


「……」「……」

 二人とも口を閉じて目を伏せながら、チラチラとお互いを確認し合っている。
 沈黙がお互いをより気まずくさせる。

 小心者ゆえに、こういう時になってなぜか変な気を使ってしまう。


 申し訳なさのせいで堅苦しい世間話しか頭に浮かばない……

 どうしよう……
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