レベルってなんですか?

Nombre

文字の大きさ
上 下
155 / 244
第三章「レゼンタック」

第十八話「ハグ」

しおりを挟む
「ふぅ……」

 俺は椅子に腰を下ろすと、手元にあったお茶を飲み干した。

 病人が同じ部屋にいるのは少し気まずいので、眠くなったら部屋に戻ろう。


 そういえば<猫足>の事について、まだ確認してないな……
 たしか、足跡が消えていたとかなんとか……

「ヒナコ、ちょっと庭に出ていい?」

「うん、いいよ!」

 俺は椅子から立ち上がり、窓を開けて縁側に出た。
 ヒナコが庭の電気をつけてくれる。

「さてと……」

 どうやって確認すればいいだろうか。
 ヒナコの宿の庭は固く締まっているので、分かりやすい足跡が付きそうにない。


 集めるか……

 俺は小さなサンダルを履いて庭に出ると、サンダルの内側を使って地面の表面を削り始めた。


「よし……」

 俺は少しこんもり積みあがった土の上に右足をゆっくりと落とす。

「冷たッ」

 うっかりして、かかとを直に土に付けてしまった。
 土にはサンダルの蛇腹模様がくっきりとついている。


 俺は天地を返すように土をかき混ぜると、もう一度こんもりと盛った。

「<猫足>」

 俺はそう小さく呟くと、改めて右足を土の上に落とす。

 足を上げると、足跡はついておらずに山の形のまま土が残っていた。

 <猫足>を発動させたまま右足で土をいじろうとするが、サンダルの側面で触る土は動くが、裏側で触っている部分の土は微動だにしなかった。


「なるほどなぁ……」

 俺はサンダルの側面で適当に土を慣らすと、縁側に戻ってサンダルを脱いだ。

 縁側に腰を掛けると、自分で自分の足の裏を指でなぞってみる。

 ……サラサラな泥の中に指先を入れている感触だ。
 足には触られている感覚があるが、指には足を触っている感覚がない。

「ステイ」

 ちょっと怖いな……


「ねー、アレン」

「うっ……、なに?」

 俺が縁側であぐらをかいてボーっとしていると、ヒナコが俺の肩に両手を置いて寄り掛かってきた。

「……あのスーツかっこいいね!」

「……ありがと」

 それさっきも聞いたけどな……


「……ケ、ケイちゃん大丈夫かな?」

「ただの風邪だと思うよ」
「昨日、かなり雨に打たれたからね」

「だといいね!」

 ……ヒナコが挙動不審だ。
 こういう時は悪いことを考えているか、隠し事をしているか……

 それよりも、肩に体重を預けられているので痛くなってきた。


「なにかあった?」

 俺はそう言いながらヒナコの姿を確認しようと振り返る。

「わっ!」

 俺が振り返った途端、ヒナコは俺に体重を預けていた両手を肩から滑らせて前のめりに転びそうになる。

 俺は慌てて両手を広げ、ヒナコを抱きしめるように受け止めた。

「うっ……、大丈夫?」

 ヒナコが庭に落ちなくてよかった。

「そういうつもりじゃないから!!」

 ヒナコはいきなり俺を突き飛ばして遠くに離れる。

 俺は庭に投げ出されそうになったが、慌ててサンダルの上に手をついて縁側に下半身を残すことが出来た。


 まったく……なんなんだ。


 俺は庭に投げ出された上半身を縁側に戻す。

 ダイニングの方に目を向けると、ヒナコが顔を赤くしながら床で正座をしてこちらを見ていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

処理中です...