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第三章「レゼンタック」

第十四話「共作」

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 壁に寄りかかりながら座って待っていると、ノアは両手に色々な物を抱えて建物から出てきた。

「アレン!ちょっと鞘を貸してみろ!」

 俺は短剣を抜き、鞘をノアに投げ渡す。


 ノアは鞘を持って武器庫に入ったかと思えば、大小さまざまな三種類の武器を持って出てきた。

 俺は短剣を左手で振る練習をしながらノアを観察する。


「うーーん……」
「アレン、ちょっと手を貸せ!」

「なに?」

 俺がノアの近くに寄ると、ノアは俺の右手をグイっと引っ張った。
 そして、ノアは俺の右手に三種類の武器を何度かあてがう。

 ノアが持ってきた武器は、どれも持ち手にナックルガードが付いた物だった。


「よし、もういいぞ!」

 ノアは俺の手を離すと、小型のサーベルのような武器を除いて遠くにはじいた。


 バキンッ!!

 何が起こるのか気になってノアの手元を見ていると、ノアが突然サーベルのナックルガードを捩じって分解した。
 どうやら接着部分は二つの輪っかで固定されていたようだ。

 というか、そこってそんな簡単に外れちゃダメだろ……


 ノアは次に、鞘に輪ゴム?を何本か付けると、ナックルガードを鞘に当てながら、二つの輪っかが当たる部分に位置を調整する。

 なんか、説明も無しに淡々と事が進んで少し怖い。


「おい、アレン!」
「鞘を構えてみろ!」

 俺はノアに鞘を渡されると、弧の内側を腕にくっつけるように、逆手でそれっぽく構えてみる。

「違う!」
「逆だよ!逆!」

 ノアは短剣の周りを人差し指で一周回した。

「う、うん……」

 俺は戸惑いながらも弧の外側を腕にくっつけるように、鞘を回転させて構え直した。


「うん、大丈夫そうだな」
「返せ!」

 ノアは俺から鞘を力ずくで奪い取った。


「今からここに新しい持ち手をつけるが良いか?」

 ノアはそう言いながら、鞘にナックルガードのような曲線を指で描く。

 ここまで来て、やっと説明が入った。

 ……どうなるか分からないが物は試しだ。

「うん、いいよ」

 俺が返事をすると、ノアはナックルガードの二つの輪っかに鞘をぐりぐりと押し込み、ゴムをはめた位置まで動かす。

「ふんっ……」

 ギュギュギュリギュチギュチチチ……ギュギュギュリギュチギュチチチ……

 ノアは輪っかの部分を持って、圧をかけながら鞘を小刻みにねじり始めた。
 それをある程度すると、同じことをもう一方の輪っかの部分でも行った。

 摩擦で熱されたゴムの匂いが鼻に刺さる。


「ふぅー!ふぅー!ふぅー!」

 ノアは小刻みに捩じる工程を終えると、輪っかの部分に息を吹きかけて冷まし始めた。

 よく見ると接合部分からドロッとした液体が溢れている。


「うーん……」

 ノアは首を傾けながらナックルガードに何度か力を加えて固定されたことを確認すると、輪っかの固定部分を脇に置いてあったテープで補強し始めた。


 固定部分に五周ほどテープを巻くと、次に脇に置いてあった違うテープでナックルガード部分をまんべんなく二周、巻いた。


「よし、出来たぞ!」
「構えてみろ!」

 ノアはそう言うと、俺に改造した鞘を渡した。
 鞘には少し熱が籠っている。

 俺はナックルガードに親指以外の指を通し、鞘の本体を握って構えた。
 グローブを付けているとかなりギチギチだ。

「持つところが違う!」
「新しい持ち手って言っただろ?」

「……あ、そっち」

 俺はナックルガードから指を抜き、四本の指を違う方向から入れ直すと、ナックルガード部分を握るように構えた。

「いいじゃないか!」

 ノアはそう言うと、近くにバラまいた道具を遠くの方にどかして槍を持つ。

 俺はとりあえずホルスターに鞘が収まるか確かめた。


 カチンッ

 うーん……
 なんだか思ってたのと違うけど……まぁいいか。
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